医療法人社団花みずき会 保谷厚生病院
(東京都 西東京市)
高原 明 理事長
最終更新日:2023/12/26
多様な診療科のチーム力で地域医療に貢献
かつてあった自治体、保谷市(現・西東京市)にちなんだ病院名を持つ「保谷厚生病院」は、名前のとおり地域に根差した診療を30年以上続けてきた。同院の理事長と院長を兼任する高原明先生は、「当院の理念は『人をまもる』で、患者さんや地域住民、職員も含む当院にゆかりのある方を『見守り』、人となりを『護る』という両方の意味を込めています」と話す。そうした温かみのある診療方針だけでなく、西東京市のみならず練馬区や周辺の地域住民地域が求める医療の実現のためなら変化もいとわないという思い切った対応も印象的だ。「開院当初から続くがん、脳血管疾患、循環器疾患への高度な医療に加え、現在は24時間対応の救急医療、さまざまな合併症を伴う糖尿病の予防や早期発見・早期治療にも力を入れています」。2021年にはリハビリテーションセンターを開設して、治療後のリハビリテーションの環境の大幅な向上を図った。訪問診療も担当の医師を置いて対応するなど、地域のニーズを反映した診療体制を整えてきた同院の特色や診療方針を詳しく聞いた。(取材日2022年6月2日)
こちらの病院の特色などをお聞かせください。
当院は1990年、地域の皆さんと多くの方の支援を受けて誕生した病院です。その後、開院から30年以上を経る中で、時代と地域の医療ニーズをもとに診療科の拡充、設備の充実を図ってきました。当初は消化器などのがん、脳梗塞、心筋梗塞など、高度医療や迅速な治療が必要とされる急性期医療が中心でしたが、現在は東京都指定の二次救急医療機関として救急医療にも力を入れています。また、高齢の患者さんが増えたため、骨折などを診る整形外科へのニーズの高まりにも応えてきました。さらに、患者数の多さから国民病ともいわれる糖尿病については、糖尿病専門の医師を常勤で配置し、糖尿病に起因する透析の予防、フットケアの指導を行っています。そのほか、当院には肝臓専門の医師がおりますので、脂肪肝から慢性肝炎や肝がんになるケースについての精査や加療にも注力しております。
脳血管や循環器の治療について教えてください。
救急車で運ばれる患者さんには、治療に一刻を争う脳梗塞や心筋梗塞なども多く、迅速かつ的確な検査・診断は欠かせません。患者さんの高齢化により、高血圧や、糖尿病を原因とする脳血管や循環器の病気が起きるケースも少なくありません。当院では、そうした生活習慣病と脳血管、循環器などの病気を複数の診療科が協力して診ています。当院にあるCTやMRI、血管の画像検査を行うアンギオ装置などを用い、脳血管の出血の有無などを徹底的に確認、出血がなく脳梗塞であれば注射や薬などによる抗血栓療法を、脳出血やくも膜下出血の場合は開頭手術での治療を選択していきます。循環器領域では心不全、狭心症や心筋梗塞などでの緊急入院が多くなっています。循環器内科医が投薬やカテーテル治療を行い血流の再開などを図っていきます。
リハビリテーションの施設も充実されていると伺いました。
従来の病院の建物とは別にリハビリテーションセンターを新築し、2021年5月から稼働しました。広い窓から光が入るので、気持ちも明るくなると患者さんにも好評です。また、天気の良い日などは建物の周囲を歩くリハビリテーションを楽しみにされる方もおられます。リハビリテーション科には理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)が在籍し、体の動き、日常の動作、発話や嚥下能力など幅広いリハビリテーションが可能です。骨折の治療、脳血管や循環器の治療を終えた患者さんのほか、人工骨頭置換術(BHA)、CHSと呼ばれる骨接合術などの治療を行った患者さんに対するリハビリテーションの早期介入で早期ADLの自立支援、社会復帰を支援します。そのほか、体力や筋力の低下、摂食・嚥下障害の患者さんには、言語聴覚士によるリハビリテーションを提供しています。
糖尿病の治療ではどんな点が重要でしょうか?
糖尿病の予防、早期発見と適切な治療は、当院が重視する診療分野の一つです。糖尿病が進行するとさまざまな合併症を伴うことが多く、高血圧や前述の脳梗塞や心筋梗塞はその代表例といえます。糖尿病を予防し、進行を防ぐことは、命に関わるような病気のリスクを減らすことにつながるのです。当院では通常は外来で患者さんを診療していますが、内科には日本糖尿病学会糖尿病専門医が2名在籍しており、糖尿病に適した食事や運動など生活指導に詳しい看護師、薬剤師、管理栄養士もいるため、チーム力で患者さんを包括的に治療できるのが強みといえます。もちろん、必要な方には糖尿病の教育入院も推奨しています。当院では、人工透析も行っており、すでに透析治療が必要になった方には外来での透析治療を行い、一般的な血液透析で必要な血管の処置やシャントトラブルへの対応なども当院で行うことができます。
最後に地域の方にメッセージをお願いします。
当院は地域の皆さんの期待に応え、地域医療への貢献を心がけてきました。以前は一度に治療する病気は1種類というケースが中心でしたが、最近は複数の病気を合併した患者さんも増え、同時治療が必要な場合もあります。多様な診療科を擁している当院では高いチーム力を発揮できていると実感しています。2021年度には医療安全や診療情報の一元化を図るために長年紙カルテ運用であったものを、電子カルテに変え、画像診断のデジタル化(PACS)も行いました。また、現在は脳血管、循環器、整形外科、糖尿病などが重点分野ですが、在宅医療も地域に必要な医療の一つとして担当の医師が対応し、患者さんの状況に応じて看護師やリハビリテーションスタッフの訪問も行います。「人をまもる」という理念は変えず、時代に必要な医療に合わせて診療分野の重点を変える柔軟な病院として、将来も地域医療を支えていきますので、安心して来院いただければと思います。
高原 明 理事長
1962年大阪大学医学部卒業、翌年の1年間を他病院でのインターンを経て同大学の医局に入局し、大学病院や関連病院などで8年間診療経験を積む。大阪市内で診療所を開設し、病院の開設にも携わる。1990年、旧保谷市の住民の要望を受け保谷厚生病院を開設し、院長に就任。その後西東京市、練馬区、東久留米市地区の地域医療は勿論、救急業務にも注力。現在は理事長も兼任。内科での診療に加え、救急医療全般を担当する。