医療法人社団武蔵野会 小平中央リハビリテーション病院
(東京都 小平市)
鳥巣 良一 院長
最終更新日:2023/10/26
リハビリを中心に充実した高齢者医療を提供
武蔵野に位置し、緑豊かな環境に囲まれた「医療法人社団武蔵野会 小平中央リハビリテーション病院」。1977年に開設された「学園西町病院」を前身とする同院は、2004年にリハビリテーション病院としてリニューアルオープンした戸田中央医科グループの病院だ。「愛し愛される病院」をめざし、回復期リハビリテーション病棟と療養病棟合わせて200床。エントリーホールからは、広々としたリハビリテーションルームでリハビリテーションに励む患者とそれを支えるスタッフ、見守る家族の姿を目にすることができる。そんな開放的で明るい雰囲気の院内環境とスタッフを統括するのは、消化器外科を専門とし、同院の立ち上げから運営に携わってきた鳥巣良一院長。外科医師としての経験と技術、そして幅広い知識を生かした高齢者医療を提供している。「リハビリは社会へ帰るための通過点」と語る鳥巣院長は、入院中の生活の質にもこだわり、クリスマス会や夏祭りなど季節ごとのイベントやレクリエーションも積極的に取り入れ、笑顔あふれる病院づくりに取り組む。スタッフとともに、高齢者医療を実践する鳥巣院長に話を聞いた。
(取材日2018年7月23日)
こちらの病院の成り立ちと理念を教えてください。
開院は2004年ですが、その2年前から当院の前身である「学園西町病院」の院長として戸田中央総合病院から赴任し、同時進行で当院の立ち上げに携わっていました。75歳以上の後期高齢者が増えている現状から慢性期病院をつくろう、慢性期医療をやるならリハビリテーションをやらなくては意味がないということで、リハビリテーションをメインにした療養型病院としてリニューアルオープンしました。回復期リハビリテーション病棟と療養期病棟の合わせて200床、約60人のPT・OT・STのスタッフが在籍しています。「小さな真心の実践を積み重ね、愛し愛される病院を目指して」という病院理念のもと、生活の質にもこだわった、その人がその人らしく生き生きとした生活が送れるよう、患者さんを中心としたチーム医療を行っています。私は消化器外科のドクターとして長年急性期医療に携わってきましたが、良質な慢性期医療の重要性を日々実感しています。
入り口から見えるリハビリテーションルームが印象的ですね。
リハビリテーションは、社会へ帰るための通過点という意味で、患者さんはもちろん、ご家族にも、リハビリテーションとはどういうものか、家に帰ってからどう見守っていけばいいのかを知っていただくため、オープンな空間にしています。また、病棟にもさまざまな工夫があり、患者さんが「ここは自分の部屋のある階だ」と忘れないようにするため、フロアごとに色を変えて字を読まなくても認識しやすいようにしています。私は、開院当時から、患者さんを経管栄養にして寝かせておくだけにしたくありませんでした。そのために、もし自分の家族ならどうしてあげたいかを看護師さんたちと話したところ、まずお風呂に入れてきれいにしてあげたいという意見が出ました。それから週3回の入浴にしたところ、最初はなかなか大変でした。それでも、結果を見るとスタッフもそのことが誇らしい気持ちになるんです。今では、週3回のお風呂が当院のモットーになっていますね。
入院中の生活の質を上げる工夫もされているそうですね。
週3回のお風呂もそうですが、歌の会やお話の会などの催し物や毎年クリスマス会や夏祭りも行っています。そういった機会に患者さんに必ず話すのは、「私は皆さんから勇気やパワーをもらっている」ということです。入院患者さんは70~90代の方がほとんどで、戦争を経験し、時代の大変な時期を乗り越えてこられている。「皆さんにはそういうパワーがあるんですよ」とお話をさせていただくと、皆さん誇らしげな表情になります。夏祭りのときには、口から食べられない人でも綿飴をちょっと舐めさせてあげることもあります。そうすると、甘い味がわかる。それが刺激になるんですね。万が一、何かあったら私たちがしっかり対応すればいいのです。病気は自分で治そうという気持ちがないとなかなか治らないと思います。前向きな気持ちを持ってもらう、何らかの精神的な安定感が出てくると回復が違ってきます。これからもそういった空間でありたいと考えています。
以前は外科医師として急性期医療に従事されてたそうですね。
そうなんです。ですので、当院に着任する前は、まだもう少しメスを握っていたいという葛藤はありました。ですが、こちらに来てみると外科の医師は私しかいませんから、治療は私がしなければいけません。当時は、近隣の皮膚科の先生に医療器具を持って来てもらい、一緒に手術したこともありました。外科に関して幅広く経験してきたことは、ここでの診療にも生かせると思いました。それからはもっと内科的な知識も深めていきました。薬の処方を緻密にし、症状のコントロールを図る内科的治療にも、今では外科の時とは違ったやりがいを感じながら医療に向き合っています。また、慢性期医療は急性期を経験した医師がやったほうがいいと考えています。そのほうが患者さんの状態にも幅広く対応でき、院内で対処できれば病院を移って治療するという患者さんの負担を減らすことができますからね。
最後に今後の展望とメッセージをお願いします。
私もスタッフも、自分ならどうしたいかを常に考えています。スタッフから「自分が患者さんやその家族なら、退院後もリハビリを続けたい」という意見から、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の人数が十分になった一昨年から通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションを始めました。「こういうことをやりたい!」と言うと、同じ思いを持つ仲間ができて実現につながっていく、ボトムアップシステムの小平式チーム医療を提供できるようになったことはとてもうれしいことです。また、スタッフ全員で共通して大切にしている気持ちは、患者さんを家族だと思って接すること。そのためには上から目線じゃ駄目です。普段でも上から目線にならないよう、私はしゃがんで同じ目線で話します。医療は患者さんとの信頼関係が大事なんです。これからも患者さんやご家族に「この先生だから任せられる」と思っていただけるように、スタッフと一緒に努めていきたいですね。
鳥巣 良一 院長
1978年帝京大学医学部卒業後、帝京大学医学部附属病院第一外科に入局。1980年、自衛隊中央病院にて、心臓血管外科、麻酔科、整形外科のそれぞれで研鑽を積み、外科に関するすべてを経験。1981年戸田中央総合病院に入局し、外科部長、副院長を経て、2002年学園西町病院院長に就任すると同時に、小平中央リハビリテーション病院の開設に携わる。2004年から現職。医学博士、日本消化器外科学会消化器外科専門医。