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独立行政法人国立病院機構 東京病院

(東京都 清瀬市)

松井 弘稔 院長

最終更新日:2022/06/24

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地域に必要とされる多様な機能を持つ病院へ

西武池袋線・清瀬駅からバスで10分足らず。医療機関、教育機関、福祉施設などが点在するエリアにある「東京病院」は、呼吸器疾患の専門的な治療で知られ、首都圏全域から患者が訪れる。同院の松井弘稔院長は「加えて、多くの方がかかるような一般的な病気への対応も当院の目標の一つです」と話す。そのほか、回復期リハビリテーション病棟を備え、神経難病の治療、緩和ケアも行うなど、地域に不足する医療機能を補完し、地域に広く貢献する病院をめざしたいという。「当院は広くて緑の多い敷地に囲まれ、長く勤務する方もいるせいか、院内もゆったりした雰囲気だと思います。そうした部分に安心される患者さんも多いのではないでしょうか」。松井院長は「みんなと意見を出し合いながら、病院をより良くしていきたい」との考えで、就任した2022年4月から職員との個別の話し合いを重ねている。そうした中で見えてきた同院の特色、今後の方向性などを詳しく聞いた。(取材日2022年5月18日)

この病院の地域での役割をお聞かせください。

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かつての結核療養所を母体とする当院では、呼吸器の病気に対する医療が強みの一つです。結核・非結核性抗酸菌症、気管・肺からの出血である喀血、肺がん、肺炎などの感染症、喘息、間質性肺炎、COPDなど多様ですが、おのおのの領域に熟練している呼吸器内科の医師が在籍し、専門的かつ幅広く対応できるのが特色です。呼吸器外科では肺がん、肺アスペルギルス症、肺抗酸菌症などの治療を行います。呼吸器分野に加え、地域の皆さんに日常的にご利用いただける病院をめざし、内科・外科の多様な病気を診療する地域医療にも注力しています。またリハビリテーション病棟を40年以上前に開設し、急性期治療を終えた患者さんを他院から受け入れる回復期リハビリテーション病棟として2013年から稼働。パーキンソン病などの神経難病の患者さんの入院治療、がんやHIVの患者さんを中心に精神的・肉体的苦痛や不快感を和らげるための緩和ケアも提供しています。

呼吸器の治療はどのような体制で行われますか?

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呼吸器センター、肺循環・喀血センターの2部門が主に対応します。呼吸器センターは呼吸器内科、呼吸器外科、リハビリテーション科が協力し、症状に応じてアレルギー科、放射線科、緩和ケア内科などが連携する体制です。当院には呼吸器リハビリテーションの専門知識と経験が豊富な理学療法士も多く在籍し、治療後に呼吸法の訓練や運動療法を提供し、生活に必要な肺機能の回復をめざしています。十分に回復して退院した患者さんは呼吸器の病気を再発する可能性も低いとされています。肺循環・喀血センターでは、どの診療科で診るのかがわかりにくい喀血の症状に対し、呼吸器内科と循環器内科の医師が一緒になって、原疾患に対する内科治療やカテーテルによる止血術を行い、外科手術が適している場合には呼吸器外科医とも連携。さらに症例数が少なく、一般的な医療機関では治療が困難な場合もある肺高血圧症について、当院では専門家が対応できるのも利点です。

肺がんや消化器がんなどの治療について教えてください。

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がん治療では、がん専門病院を検討される方も多いかもしれません。しかし、がんかどうかの見極め、違う病気だったときの柔軟な対応、がん以外に病気がある患者さんの総合的な治療、緩和ケアなどは、当院のように身近で幅広い診療が可能な病院が向く場合もあります。ご希望があれば在宅医療を行う医療機関もご紹介し、症状が悪化したら当院への一時入院にも対応できます。特に当院は肺分野のがん診療で豊富な経験を持ち、肺がんの専門的な治療を行う力は十分あると自負しております。また、各種の消化器がんは、消化器内科と消化器外科が連携する消化器センターが診療し、内視鏡による検査および早期がんの治療、手術、抗がん剤や放射線による治療を総合的に行う体制を整えています。泌尿器科は前立腺がん、腎がんなどへの標準治療を主体とし、手術が必要なときも患者さんの体への負担が少ない手術を可能な限り選択するようにしています。

そのほかの診療分野ではどんな特色がありますか?

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当院は地域医療支援病院でもあり、近隣の医療機関からのご紹介患者さんも多いのが特色です。紹介状をお持ちいただくほうが診療の流れはスムーズですが、急なときは所定の選定療養費が加算されますが、紹介状なしでも受診は可能です。前述の診療科以外に循環器内科、整形外科、アレルギー科、リウマチ科、眼科、泌尿器科、耳鼻咽喉科などを開設し、感染症内科では呼吸器の感染症の診療に加え、当院の感染制御チームと協力し院内の感染症対策を担います。さらに脳神経内科はパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経難病の診療・療養相談を行うなど、地域に必要な医療に幅広く対応しています。また、回復期リハビリテーション病棟では、リハビリテーション専門の医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士をはじめ多職種によるチーム医療による、365日実施する切れ目のないリハビリテーションで、脳卒中の患者さんの回復を支援します。

地域の皆さんに伝えたいことなどメッセージをお願いします。

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当院は国立病院機構の一員である一方、当清瀬市のほか北多摩地区の医療の担い手という役割も重視しています。そのため、行政の要望により新型コロナウイルス感染症の患者さんを多く受け入れた時期に、地域の皆さんの受診に大きな影響が出たことはたいへん心苦しく感じています。今後は以前から強みのある呼吸器分野に加え、地域に必要な医療の充実、近隣の医療機関との連携強化を図り、より多くの患者さんに受診いただけるようにしたいと考えています。また、当院の地域医療連携室に在籍する看護師とソーシャルワーカーは、地域の医療機関からのご紹介に迅速に対応し、退院調整・在宅療養支援を通じて、患者さんの入院から退院後までをサポートしています。さらに2022年12月に開設予定の新棟で緩和ケア病棟を20床から30床に増床し、がんやHIVの患者さんのサポートをする機会を増やしますので、ご利用いただければと思います。

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松井 弘稔 院長

1989年東京大学医学部卒業。同大学老年病科呼吸器内科グループに入局。東京逓信病院、東京都立駒込病院を経て、ノースカロライナ大学(アメリカ)留学。2005年に帰国し、東京病院呼吸器内科に勤務。副院長などを経て、2022年4月から現職。日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医。好きな言葉は「早く行きたいなら一人で行きなさい。遠くへ行きたいならみんなと行きなさい」。

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