医療法人財団 きよせ旭が丘記念病院
(東京都 清瀬市)
藤木 達雄 院長
最終更新日:2024/09/02


地域が「今」求める医療の提供に尽力
新型コロナウイルス感染症の流行に落ち着きが見え始めた2022年11月、新病院・新名称でスタートを切った「きよせ旭が丘記念病院」。70余年にわたり、高齢の住民が多くを占める清瀬市のニーズに応えてきた病院だ。入り口には、車いすで受診する人や足の不自由な人への温かな配慮を感じる緩やかなスロープが設けられている。施設を一新すると同時に、「今、求められている医療」についても見直しを図ったと話すのは、病院経営と並行して外来でも第一線に立つ藤木達雄院長。できるだけ多くの患者が地域で治療を完結できるよう、外来枠を増やしたほか、年齢とともに増加する疾患に対応すべく循環器内科、脳神経外科、整形外科の医師を増強。慢性疾患を抱える患者を支える病院として、街のクリニックと高度医療をつなぐ役割にも力を注いでいる。同院の現状と今後の展望について、藤木院長に聞いた。(取材日2024年8月1日)
長く地域とともに歩んできた病院だと聞いています。

1952年設立ですから、開院から今年で72周年になります。長く「織本病院」の名前で診療を行ってきましたが、2022年に新病院がスタートするのと同時に名称を「きよせ旭が丘記念病院」としました。院名に地名を入れたのは、施設が一新されてもこれまでと変わらず地域に根差した診療を行っていくという私たちの意思表明のようなものです。旧病院名に親しんでくれていた皆さんにも少しずつ新しい院名が浸透しているようで、うれしいですね。建物は旧病院よりコンパクトになりましたが、その分機能性が増して患者さんの利便性は高まっていると思います。コロナ禍を境に院内でイベントを開くことはなくなりましたが、旧病院のホールで活躍したグランドピアノは今もエントランスホールの一角で存在感を示しています。
新病院の方針をお聞かせください。

地域のかかりつけ医として、患者さんが地域で暮らし続けるために必要なサポートをすることが大きな使命です。外来では、清瀬市を出て遠方まで通院する患者さんを少しでも減らせるよう、外来診療室を増やし、医師も増強しました。また、一般病棟34床に対して医療療養型病棟を44床とし、急性期治療を終えてある程度病状が安定し、社会復帰までにもう少し医療的ケアが必要な方を受け入れて地域にお返しすることにも注力しています。医療療養型病棟では、年齢を重ねて通院が困難になった透析患者さんの受け入れも行っているんですよ。新病院になって窓からの見晴らしが良くなり、入院施設がある4階からは遠方まで清瀬の町並みを眺められるようになりましたから、入院患者さんにも気持ち良く過ごしていただけるかと思います。
外来は、診療の範囲も広がったのですか。

糖尿病、透析を含めた腎疾患などに強みがあることは以前から変わっていません。糖尿病や腎疾患は全身の血管や心臓など、循環器にも悪影響を与えるため、私の専門分野である循環器疾患を加えた3つを「病態の三角形」として注力してきました。現在、循環器内科は医師が増え、保存的治療や循環器との因果関係が深い睡眠時無呼吸症候群の検査などにも力を入れています。また、地域住民の多くを占める高齢の方に疾患が多い脳神経外科、整形外科を専門とする医師も増えました。特に整形外科は、近隣に専門のクリニックが少ないこともあり、外来はもちろん入院中の方の症状にも対応しています。
食事の指導にも力を入れているそうですね。

旧病院時代から院内に調理実習室を設けており、そこで患者さんに調理指導を行っています。というのも、腎疾患の方にはたんぱく質と塩分を控えてもらう必要があるのですが、たんぱく質は人間が生きていく上で重要な栄養素の一つですから、他の栄養素と併せて体に必要な量はしっかり取らなければなりません。この加減が難しいので、適切な分量の栄養素が取れるよう治療用特殊食品を利用していただきます。ただ、治療用特殊食品は調理にコツがあり、上手に料理しないとおいしく食べるのが難しいんです。そこで、調理実習室を使って調理の実践をし、ご自宅でも再現できるようトレーニングしているんです。食事は継続が肝心ですから、無理なくおいしい食事を作れるようになっていただきたいと思っています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。

慢性疾患をお持ちの方を支える病院として存在感を発揮しつつ、地域の医療機関のハブとして住み慣れた地域で暮らし続けるお手伝いをしていきたいと思います。街のクリニックや高度医療機関には、継続的に発行している広報誌「きよあさ通信」を通じて情報を発信し、当院の強みや思いをお伝えしています。今後もより連携を深めて、地域で一体となって患者さんの健康と暮らしを守っていきたいですね。一方、コロナ禍の健診控えの影響は最大の懸念事項です。がんが進行した状態で見つかる方が増えていると聞くので、先ほどお話しした広報誌や外来診療を通じてこれまで以上に健診を推奨していくつもりです。「きよせ旭が丘記念病院にいくと癒やされる」と言っていただけるように、まずはスタッフ同士が癒やし合い、真心のこもった温かな接遇で患者さんをお迎えできるよう努めてまいります。

藤木 達雄 院長
1990年杏林大学医学部卒業。杏林大学医学部付属病院の心臓血管外科に入局。専門は心臓血管外科。1999年より「織本病院」の非常勤医師となり、2009年4月より副院長、2016年7月、同院院長に就任。趣味は旅行・キャンプなど。