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地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立神経病院

(東京都 府中市)

高橋 一司 院長

最終更新日:2020/12/14

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神経難病を包括的に診る専門病院

脳神経疾患の包括的な診療に特化した病院として、専門性の高い医療を提供する「東京都立神経病院」。1980年の開設以来40年にわたって、近年の脳神経疾患の診断、および治療学の進歩をけん引し、神経難病医療における主導的な役割を果たしてきた。日常生活のQOL(生活の質)を著しく低下させ、治療や療養に多大な労力を伴う神経疾患の患者とその家族にとって、多くの専門医師が幅広い診療を担い、内科的・外科的治療を中心にリハビリテーションや在宅医療にも対応してくれる同院の存在は、まさに人生の先導者であり伴走者でもあるだろう。2020年に着任した高橋一司院長は、「あらゆる神経難病、および脳神経疾患とともに生きる患者とその家族に寄り添い、全人的医療を提供すべく力を尽くしたい」と話す。同院の特徴や今後の展望について、高橋院長に聞いた。(取材日2020年11月19日)

まずは、病院設立の背景から教えていただけますか。

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1950年代に、消化器症状に続いて下半身や視覚に神経系の症状が出るスモンという病気が国内の至るところで発生しました。原因不明の難病とされたスモンですが、後にある整腸剤の副作用であることを当院の初代院長であった椿忠雄先生が指摘され、その後の発症を抑えることにつながりました。スモンの患者の皆さまがこの指摘に希望の光を見出し、難病に特化した専門病院の建設を都に陳情したことがきっかけになって、1980年に設立されたのが当院です。こうした背景を踏まえて考えると、都立神経病院は患者の皆さまに建てていただいた病院であるといえるでしょう。開設からの経緯は、「あらゆる脳神経系疾患、特に神経・筋難病に対する高度かつ専門的な脳神経系の総合医療を提供し、研究・教育病院としての性格を併せ持ちながら、医療、予防、福祉に至る過程の中核病院としての使命を果たす」という基本理念にも通じています。

病院の特徴についてお聞かせください。

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当院は、脳神経疾患の包括的な医療に特化した、神経難病の拠点病院です。神経疾患の種類や患者さんの年齢を問わず、慢性進行性の脳神経疾患の発症以後あらゆる病期の患者さんを診ることができる点が一番の強みですね。病院に通えなくなってからも診療を継続できるよう、開設当初から在宅医療に取り組み、人工呼吸器を着けた患者さんのご自宅に伺って診療を行ってきました。当時は当院と患者さんの1対1のパイプだったものが少しずつ広がっていき、現在、当院は地域の在宅医療のハブとして機能していくこともめざしています。引き続き、専門医療機関である当院が担うべき急性増悪時の受け入れ体制、地域療養支援といった機能の強化と並行して、緊密かつ双方向性の連携を推進してまいります。

まさに、患者に寄り添う医療ですね。

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私たちは、「患者中心の医療」を基本理念とし、疾患と生きる患者さんに寄り添う「全人的医療」を実践しています。究極的には、患者さんが最期を迎えるその時まで並走してこそ、全人的医療を全うしたといえるのではないでしょうか。当院では、神経難病を有する患者さんの終末期まで関わるため、早くから緩和ケアチームを導入し、緩和ケアにも積極的に携わっています。一般的に、神経疾患は患者さんの人生の中にあり、必然的に長いお付き合いになるものですが、近年は高齢化に伴って経過の早いケースも目立つようになりました。患者さんとそのご家族がどのような人生の締めくくりを望むか、医療スタッフと一緒に考えるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)も取り入れながら、最期まで心身ともにお任せいただける存在でありたいと思います。

今後は、総合的な難病医療の拠点になることが決まっていますね。

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これまでも、希少な神経難病だけでなく急性脳症、ギラン・バレー症候群、乳児けいれんといった急性神経疾患の診療も重視してきましたが、将来的にはほぼすべての脳・神経系および免疫系の難病に均てん化された、高度専門医療を包括的に提供する病院をめざしています。その第一歩として、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対して多職種が総合的な医療を行うプロジェクトを本格稼働しました。併せて、2014年に開設されたてんかん総合治療センターの充実にも取り組んでいます。てんかんは、幅広い年代に患者さんが存在し、発作の抑制に加えて心理・社会面への影響も考慮した治療が求められるため、複数の診療科と複数の職種が連携するチーム医療が不可欠です。てんかんセンターでは、年1〜2回行っている公開講座を今年、ウェブ配信として、都民への啓発を図るなど、現在の治療のみならず将来を見据えた研究活動も行っています。

最後に、読者にメッセージをお願いいたします。

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神経難病には、進行を抑えるための治療法、根治療法の開発など多くの課題がありますが、近年の脳神経系疾患の診断および治療学が目覚ましい進歩を遂げていることもまた事実です。今後、その重要性は、疾病構造や医療ニーズが激変する社会でますます高まっていくでしょう。先進的な臨床試験と研究、未来の難病治療を支える若手の育成にも、専門病院の使命として取り組んでいきたいですね。もちろん、すべての根底にあるのは患者さんに寄り添う全人的医療、そして最新・最善の医療と考えています。パーキンソン病の患者と家族、医療者が一堂に会する世界パーキンソン病コングレス(WPC)では、患者さんのことをPeople with Parkinson disease、「パーキンソン病とともに生きる一人の人」という意味で「PwP」と呼びますが、私たちもすべての神経難病の患者さんに対して同じ気持ちで接しています。お困りの際はご相談ください。

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高橋 一司 院長

1987年慶應義塾大学医学部卒業。米国ペンシルバニア大学、東京医療センターで脳神経内科・脳循環代謝の領域で研鑽を積み、慶應義塾大学医学部神経内科専任講師、東京都立神経病院脳神経内科部長、埼玉医科大学脳神経内科教授を歴任。専門領域は、パーキンソン病やALSをはじめとする神経変性疾患の診療。2020年4月より現職。

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