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公益財団法人 榊原記念財団 附属 榊原記念病院

(東京都 府中市)

磯部 光章 院長

最終更新日:2023/10/19

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先進的で包括的な心臓病診療の提供をめざす

府中市の国道20号線沿いで、専門性の高い循環器診療に取り組んでいるのが、「榊原記念病院」だ。循環器に関係する14の標榜診療科と307の病床、充実した医療設備を備え、先進的で高度な治療の提供をめざしている同院。同時に、心臓リハビリテーションによる2次予防、母体や胎児の心臓に問題がある場合の出産などにも取り組むなど、さまざまな心臓血管病を持つ胎児から高齢者までを、包括的にサポートすることに努めている。そんな同院の院長を2017年より務めている磯部光章先生は、心臓移植や心不全などをはじめとする心臓病の研究や教育、臨床に携わってきた循環器医療のスペシャリスト。同院でも、新しい治療も積極的に取り入れることに加え、患者支援や地域医療連携にも注力することで、心臓病の予防や心臓病になった人でも生き生きと生活できる社会の実現に尽力している。そんな磯部院長に、同院の取り組みについて詳しく話を聞いた。(取材日2023年8月7日)

最近の心臓病治療について、教えていただけますか?

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まず、高齢化して心臓病患者さんの数が増えてきていることがあります。そして、以前は80歳を超えると手術は行わず、治療も薬物療法が中心でした。今は、高齢でも元気な人が多く、90代でも手術を行う時代になりました。ですが、高齢者は開胸したり、長時間の全身麻酔をしたりするような手術は負担が大きいので、弁を変えるにも胸骨の正中を開胸するのではなく、7センチ程度の小さな傷で行う低侵襲手術が主流となっています。この低侵襲化は高齢者だけでなく、あらゆる世代に関係しています。例えば、赤ちゃんの手術で開胸すると一生傷が残り、男の子でもプールに入れないなど審美上も問題があります。現在は、1歳くらいになれば脇の下から手術ができて、傷が目立ちません。カテーテルによる心臓弁膜症の治療も一般に行われるようになりました。このように治療の低侵襲化が進んでいるのが、近年の心臓病治療の流れです。

ほかに特徴的な取り組みはありますか?

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当院の特徴の一つに、心臓リハビリテーションがあります。心不全では薬物療法に限界がありリハビリテーションは患者さんにとって非常に有用だと考えています。私たちが取り組んでいるのは単に運動療法だけでなく、包括的心臓リハビリテーションとしてそれぞれの専門職による運動と栄養、薬の管理を行っています。薬などによる治療はもちろん大切ですが、それは医師から処方してもらって飲むということで患者さんにとっては受け身です。でも、運動と食事は自分で能動的に行うので意欲が違ってきます。そういう意味で食事と運動、薬の飲み方というのは非常に重要ですから、さらに力を入れて取り組んでいます。「榊原記念病院の心臓を守る健康生活」というキャッチコピーのもと、院外での運動教室や料理教室、お薬教室などによる心臓病の一次予防の啓発活動にも力を入れています。また心臓についての啓発活動として「心臓を守る親子教室」も開催しています。

産婦人科にも力を入れていると伺いました。

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当院では、心臓病の小児だけでなく、胎児期から心臓病の診断・管理を行っています。妊娠や周産期の管理が大切になってきます。また、場合によっては生まれたその日に赤ちゃんの手術を行える体制も整えています。胎児の心臓病を早く、適切に診てあげたいという思いがあります。加えて、赤ちゃんのうちに心臓の手術をした人が、その後成人して、妊娠をする可能性もあります。その場合、心臓疾患を持つ母親が、安全に妊娠や出産をするための管理も重要になります。当院では、この2つのことを目的に産婦人科診療を始めています。また、当院は心臓の専門病院であると同時に地域医療支援病院でもありますから、正常妊娠や分娩も積極的に受け入れています。現在は、全分娩数のうち、半分くらいが胎児心疾患やお母さんが心臓疾患をお持ちの方で、残りの半分が正常分娩です。

患者満足度の向上にも努めているそうですね。

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病気に治療を施しても治せないことはありますし、治療をしないことも含むいろいろな選択肢があり、どう亡くなっていくかということも大切だと考える時代になりました。私は心臓病であっても患者さんが幸せで、医療や生活に満足すれば良い、それが医療の目標だと思っています。そういう意味で、患者満足度は大事な指標です。患者さんが医療に対して抱く不満の根幹は受けている医療にあるのですから、良い医療を提供することに加えて、それを患者さんに理解してもらうこと、つまり、対話やコミュニケーションが大切です。その2つが合わさって、初めて患者さんは満足してくれると私は考えています。当院では、医師や看護師、事務員などと患者さんとの対話も非常に大切にしており、日本医療機能評価機構のシステムを利用して患者満足度調査も行っています。

心臓病総合支援センターについても教えていただけますか?

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2018年に「脳卒中・循環器病対策基本法」が公布されて、その施策の一つとして、「脳卒中・心臓病等総合支援センター」を各都道府県に一つずつ設置するという国のモデル事業が始まりました。当院では脳卒中の診療は行っていませんが、心臓病に対して同等の支援機能を持たせた「心臓病総合支援センター」を2022年4月に立ち上げました。主に心臓病に関する患者さんや医療機関などからの相談を受けつけており、近隣の病院やクリニックだけでなく、福祉機関や老人施設、地域包括支援センターからも相談をいただいています。加えて、講演会やセミナー、運動教室や料理教室、お薬教室などの啓発活動を行っています。当院は2023年に東京都心不全サポート事業の多摩地区担当病院となり、その機能も同センターで担っています。当院は心臓病の専門病院として、地域密着型の医療機関としてのこれらの取り組みにも、力を入れていきたいと考えています。

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磯部 光章 院長

1978年東京大学卒業。三井記念病院勤務、東京大学医学部第三内科助手を経て、ハーバード大学マサチューセッツ総合病院心臓内科へ留学。心臓移植の基礎研究に従事し、心臓移植の拒絶反応に関する研究成果を発表。帰国後は、信州大学医学部第一内科助教授、東京医科歯科大学循環制御内科学教授、同大学特命教授、同大学名誉教授などを経て、2017年より現職。

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