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医療法人社団永生会 南多摩病院

(東京都 八王子市)

益子 邦洋 病院長

最終更新日:2020/11/25

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病院救急車を活用し地域医療に貢献する

JR中央線西八王子駅の南口に出ると、すぐ目の前に「南多摩病院」の建物が見える。院長の益子邦洋先生は、日本のドクターヘリの仕組みをつくった救急のスペシャリストだ。「南多摩病院」は、医療法人社団永生会の中で急性期医療を担う病院として位置づけられ、病院救急車を活用した地域高齢者の救急搬送を行い、増え続けていく消防救急要請の緩和と搬送時間の短縮を図っている。同時に、地域包括ケアシステムの目的である、高齢者が住み慣れた地域で医療と介護を受けられるための、重要な役目を担っている。まさに、益子先生の力が必要とされる事業だ。この取り組みは、全国の医師会でも非常に関心が高く、度々見学者が訪れているという。救急搬送の現状とともに、どのように病院救急車が活用されているのか、益子先生に詳しく話を聞いた。(取材日2017年4月11日)

南多摩病院の歴史についてお聞かせください。

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前身は、東京都国保連合会の直営病院として、1954年4月8日に開院しました。当時は慢性期病院でしたが、2010年に、当院の法人である医療法人社団永生会が引き継ぎ、急性期病院として生まれ変わりました。永生会には、同じ八王子市内に628床を有する「永生病院」がありますが、回復期と慢性期の病院でしたから、南多摩病院が急性期医療を担ってからは、急性期、回復期、慢性期、介護や在宅医療、生活支援など、すべての医療と介護をネットワークする組織となりました。その中で、南多摩病院は170床を有する二次救急病院として、永生会全体のビジョンでもあります街づくり、人づくり、想い出づくりに急性期医療の立場から貢献するということを基本理念にしています。170床のうち小児病棟は10床あり、透析設備も入院、外来ともに対応しています。病気の早期発見をめざす、人間ドックの設備も本館の3階にあります。

救急搬送の現状はどうなっているのでしょうか。

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日本の救急出動件数は右肩上がりで、特に高齢者の搬送や、高齢者施設からの要請が多く、国は3年前に、医療介護総合確保推進法を作り、地域包括ケアシステムを構築しました。ところが、高齢者は病気をいくつも持っていることが多いため、救急車を呼んでも地域内で搬送先がなかなか見つかりません。その結果、救急隊員は地域外の病院を当たるしかなく、病院を退院しても、住み慣れた地域に帰れないという、いわゆる『さまよえる老人問題』が起こっているのです。同時に、救急搬送時間も年々伸びています。119番通報から救急車の病院到着までの全国平均は39.4分ですが、東京都は51.4分という全国ワーストワンの記録です(2016年総務省消防庁公表)。これには、高層マンションなどで、時間が取られる、交通渋滞、昔と違い救急が現場で医療活動を行うなどが要因にあげられますが、最も大きな要因は、受け入れ先である二次救急病院の減少にあります。

どのような取り組みをされたのですか?

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東京都医師会が、病院救急車を利用した地域高齢者救急搬送支援システムの取り組みを始め、葛飾区と町田市、八王子市の3医師会が参加表明しました。対象者は、在宅療養生活を送る人で、かかりつけ医が病院での治療が必要と判断したとき、病院が保有する病院救急車で地域内の病院へ搬送し、地域で医療が完結することを目的としています。八王子市では南多摩病院の救急車が活用され、2014年12月1日に搬送が始まりました。2015年4月からは、都の要望により、高齢者施設入所者からの搬送を、南多摩病院の単独事業として行っています。対象の患者さんには、かかりつけ医や訪問看護師、介護士などの情報が記録されているICカード『まごころネット八王子』を発行し、情報共有ができるようになっています。消防の救急車は、現場で患者の重症度を判断し病院を選定しますが、病院救急車は病院選定のプロセスがないので、搬送時間の短縮につながっています。

実際に活動を行ってみてどうですか?

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病院救急車の搬送先を調べてみると、救急に対応するハードやソフトを持たない慢性期病院への搬送が半数近くに増えています。これはすごいことです。1つ目は、八王子市医師会が、急性期と慢性期の病院連携、医療と介護の連携を推し進めてきたこと、2つ目は、国が地域包括ケアシステムを提唱した3年前から既に、八王子市高齢者救急医療体制広域連絡会という基盤のシステムを作り上げていたこと、3つ目は、かかりつけ医や訪問看護師の存在が大きいこと、4つ目は、急性期病院における患者さんのトリアージ(選別)があります。例えば救急病院に患者さんが運ばれてきた際に、検査で慢性期病院でも大丈夫となれば、慢性期病院も安心して患者を受け入れることができるわけです。この取組の結果、救急車で運ばれた5人のうち4人までが、地域の中でカバーできるようになり、同時に、急性期と慢性期の連携が促進し、消防救急の負担軽減にもつながりました。

今後の展望をお聞かせください。

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病院救急車を運用する二次救急病院は、地域包括ケアシステムの中で、ハブ病院としての役割を担う必要があると考えています。病院救急車を運用すれば、もっと消防救急の負担が軽減でき、救急搬送時間も短くなるはずです。能力のある二次救急病院がどんどん手を挙げてこの事業に参加してくれたら、地域の高齢者にとっては、大きな安心につながると思います。また、南多摩病院では、今後予測される首都圏直下型地震などの大災害に備え、施設・設備を整備し、スタッフを養成しています。実際に災害が起きた場合、災害拠点病院やDMAT(災害派遣医療チーム)だけでは、老人ホームの高齢者や在宅医療の患者さんまで手が回らないはずです。こうした患者さんに医療を提供できるのは、日頃から病院救急車を運用している地域の二次救急病院だと思っていますので、地域のためにもっとお役に立ちたいと思っています。

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益子 邦洋 病院長

日本医科大学を卒業後、同大学第三外科へ入局、同附属病院救命救急センターへ出向。1985年に米国ミネソタ州の病院に勤務した際、100km離れた場所から患者がヘリコプターで運ばれてくるのを見て衝撃を覚え、日本のドクターヘリの制度作りと普及に尽力する。1997年より日本医科大学千葉北総病院の救命救急医療に携わり、2013年同院副院長を経て2014年より現職。

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