医療法人社団隆靖会 墨田中央病院
(東京都 墨田区)
小嶋 邦昭 院長
最終更新日:2020/11/25
最後まで地域で安心して暮らせるサポートを
小村井駅から徒歩5分。中居堀交差点から少しだけ入った下町の風情が残る街並みの一角にあるのが「墨田中央病院」だ。1941年の開院から約80年にわたって人々に親しまれ、地域とともに歩んできた同院は現在、外科と整形外科、内科をはじめとする11の診療科と97の病床を備えることで幅広く病気やけがに対応。さらに、24時間体制の救急や在宅医療にも積極的に取り組むことで、人々の健康を支えている。そんな同院の3代目院長を務め、「住み慣れた場所で、最後まで元気に安心して暮らすことができるようにサポートしたい」と優しい笑顔で語る小嶋邦昭先生に、同院のことや、地域医療における役割などを聞いた。
(取材日2019年1月29日)
こちらの病院についてお教えいただけますか?
もう80年近くも、下町であるこの地域に根差してきた病院です。そもそも家内の祖父がここで医院を開業して、地域の人から大変親しまれまして、ぜひここに病院を作ってほしいと言われて開設した歴史がありますので、これからも地域に根差した病院であり続けたいと思っています。診療としては、何か特徴のあることをしているのではなく、地域にたくさんある病気にできるだけ幅広く応えられるように外科や内科、整形外科をはじめとする11の診療科と97のベッドを備えて、急性期の病気から慢性期、そして在宅療養になっても、すべてを当院で支えられるように取り組んでいます。とにかく地域の人たちが、安心して暮らせるための病院でありたいということで80年間、祖父や先代が努力してきましたので、私もそれを引き継いで、地域の人たちが病気になっても、私たちが支えるから安心して暮らしましょうと言える、頼ってもらえる病院でありたいと思っています。
特徴はどんなところでしょうか?
できるだけ幅広い病気に応えられるようにしているのが特徴です。脳神経外科や形成外科などの診療もしていますが、特にその中でも地域の人たちが多くかかる外科、整形外科、内科などの病気については、入院や手術も行いながら、できるだけ当院の中で完結することをめざしています。患者さんは、内科なら高血圧をはじめとした生活習慣病や最近では慢性心不全が増えていますので、それで入院している患者さんも多いですね。私の専門である消化器外科では、がんや胆石、ヘルニア、加えて食道や膵臓も含めほとんどの病気に対処できますし、腹腔鏡や内視鏡を使った手術も行っています。整形外科では高齢者の骨折や、膝や股関節の人工関節手術なども行っています。特徴的なものでは、血管外科があります。高齢になると、足の血管が詰まってしまうことが多いので、抹消血管にステントを入れたり、バイパスを作ったりする手術を行っています。
在宅医療にも取り組まれていると伺いました。
当院では、約30年前から訪問看護ステーションを運営するなど、在宅医療にも力を入れて取り組んでいます。現在は訪問看護ステーションで約250人、訪問診療で約150人を受け持っています。私自身も週に1日は訪問診療をしていますが、病院で待っているのではなく実際に家に伺うと、こういう環境の中でこんな生活をしているんだと、いろいろなことに気づかされますし、入院していた患者さんが自宅へ帰られると、本当に顔つきが良くなるのをたくさん見てきました。在宅医療は大変ですがやりがいのある仕事です。そして、大切な役割の一つとして看取りがあります。がんの末期の方などが自宅で安心して最期を迎えられるように取り組んできましたが、非常に大切な事だと考えています。昔は、具合が悪くなると入院するのが一般的でしたが、最近では、「私たちが最後まで支えますよ」とお話しすると、それなら自宅で過ごされたいという方も増えてきていますね。
病院を運営する上で心がけていることを教えてください。
広い意味でのかかりつけ医、いつでも入院できる設備を持ったかかりつけ医だという気持ちを持っていて、地域の人たちに何かあったら、いつでも引き受けられるということを大切にしています。そして病院というのは、建物でもなければ機械でもなく、やっぱり人の気持ちが大切です。ですから、建物は多少古いかもしれませんが、そこにいる人間はみんな温かい病院であることを心がけています。患者さんもそれをすごく感じてくれていて、ここはいつ来ても温かいねとか、スタッフがみんな優しいねなど言ってもらえます。院長として、それはずっと大切にしてきたことで、そう言ってもらえるのは誇りです。そういう意味ではスタッフがとても大切で、当院には約160人のスタッフがいますが、全員の顔が見えますし、ベッドも97床なので患者さんも全員わかるんです。その中でスタッフが、お互いによく連携してやってくれていますので非常に助かっています。
最後にメッセージをお願いします。
当院は、地域に育てられてきた病院ですから、地域に恩返しをしなくてはいけません。そして、今は地域で暮らしていても、最後になると残念ながら、地域から出て行かざるを得ないケースも少なくありません。それは非常に悲しいことです。最近は、地域包括ケアという言葉もありますが、われわれもできる限り皆さまが、例えば具合が悪くなっても当院があることで、時々は入院するかもしれないけど、必ず住み慣れた場所へ帰ることができる。通院ができなくなったら、私たちが自宅へ行くことで患者さんやご家族を支える。地域の中で完結する医療で私たちが支えることで、皆さまが住み慣れたこの地で頑張って、最後まで安心して元気に暮らしていくことができるよう、お手伝いをして行きたいと思っています。幅広い病気に対応できますので、健康のことで何かありましたら気軽に当院をご利用いただければと思います。
小嶋 邦昭 院長
東京大学医学部第3外科を経て、1984年より同院。その後、3代目の院長として現職。患者に喜んでもらえる医療をめざし、技術だけでなく真心をもって診療にあたることを大切にし、地域のかかりつけ病院としての役割を守っている。趣味はアウトドアで船の免許も持っており、自ら運転をして出かけることもあるそう。日本外科学会認定外科専門医。