社会福祉法人 勝楽堂病院
(東京都 足立区)
清水 忠夫 院長
最終更新日:2021/03/01
家庭的な雰囲気を大切にした地域密着の病院
1936年に前理事長の父がこの地に開業した芦田医院を前身に、1950年に設立された「勝楽堂病院」。1952年に現在の社会福祉法人に組織変更し産科や結核医療などに従事。その後も地域医療のニーズに応える形で進化し続け、現在は一般病棟、療養病棟、地域包括ケア病床を有する地域密着の病院として足立区民の健康を支えている。高齢の患者が増える中、2017年に清水忠夫院長が就任してからは、内科や整形外科を中心とした診療を展開し、東京女子医科大学東医療センターをはじめとする近隣の病院と連携し、幅広い疾患に対応している。また足立区のがん検診に対応しており、病気の早期発見・治療に努めている。長い歴史の中で受け継がれてきた家庭的で明るい雰囲気を大切に地域医療に取り組む同院について、清水院長に話を聞いた。(取材日2020年11月30日)
力を入れている診療科はありますか?
当院はもともと、産婦人科と小児科に強い病院でしたが、少子化と高齢化の影響もあり現在は内科と整形外科を中心に診療しています。呼吸器内科専門の医師も一昨年から在籍しており、基本的な疾患の早期発見に努めています。外科については手術室が2部屋あり簡単な処置は院内で行っていますが、大きな手術については近隣の大規模な病院と連携することで対応しています。そしてもう一つ力を入れているのが各種検診です。泌尿器科の前立腺がんや消化器系の大腸がんをはじめとする、さまざまな行政のがん検診を実施しています。また、乳がん検診と子宮頸がん検診の両方を行っている医療機関は少ないと思いますが、当院ではどちらも受診できます。同様に後期高齢者の特定健診にも力を入れるなど、地域のニーズに合った検診をそろえています。
先生の専門である乳腺外科についてはいかがでしょうか?
僕が3年前にこの病院に来た時に決めていたのは、乳がん検診の受診率を上げ早く病気を見つけることに徹するということでした。乳がん患者さんの数は徐々に増えてきており、足立区の乳がん検診などをきっかけに来院される患者さんを定期的に診察することで、早期の発見を心がけています。治療については、大きな病院へ紹介し治療後はまたこちらで診療していくという連携体制を整えていますが、私は現在も東京女子医大東医療センターで週に一度診療を行っていますので、大学の後輩の医師とともに当院の患者さんの治療を行うこともあります。また、妊娠中の患者さんの乳がんなど珍しいケースについても、これまでの経験を生かしてご相談に応じています。乳がんは、手術はもちろん薬物療法がどんどん進化していて、1、2年で新しい薬が出てくるので、新しい知識を逃すことなく診療していきたいですね。
患者への対応で気をつけていることはありますか?
院内に投書箱を設置しているのですが、患者さんへの対応についてお叱りを受けることもあるので、特に接し方には気をつけています。下町気質の義理と人情のような感じでの対応を受け入れていただける場合とそうでない場合があるので、フレンドリーな気持ちは忘れず匙加減を間違えないようにしていきたいです。長く地域に根づいた病院ならではの和気あいあいとした家庭的な雰囲気は当院の良さで、患者さんも慣れ親しんでいるからこそ率直な意見も出るのでしょう。この病院で生まれたという人もたくさんいらっしゃいますから、身内のような感覚でいろいろなご意見をいただけるのだと思っています。また、高齢の患者さんが多いですが、付き添いの方は基本的に若い人です。若い人はご自身でいろいろなことを調べて来られるので高齢者と同じ対応というわけにはいきません。世代に応じた対応をすることで、どんな人も満足できるような診療を心がけています。
院長として、また医師として大切にしていることはありますか?
2025年問題をはじめさまざまな課題を抱える中、20年前の医療をやっていては病院は沈没してしまいます。病院の方向性を定め間違いなく舵取りをすることで、職員が生き生きと働ける職場づくりをしていきたいと考えています。入職して3年がたち、各部署で業務改善の案が出るなど院内が少しずつ変わってきているので、病院全体が良い方向へ向かえるように新しいことにも取り組んでいきたいです。私は、64歳まで東京女子医大にいて、研修医や学生の指導をしてきました。そこでいつも思うのは、どんな人にでも対応できるようなスキルを身につけてほしいということでした。患者さんの性格や背景は個々に違っていて、同じ乳がんでもすべてが同じではないので、きめ細かく診ていく必要があります。特に、乳腺外科の私の患者さんは皆女性ですからね。どんな人も包み込むように接する、それが僕の医師としての考え方です。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
より地域に密着した医療を展開するため地域連携室を充実させ、病病連携や病診連携を今まで以上に円滑に進められるようにするほか、患者さんが退院される際には、移転先の施設についてなど相談の幅も広げていきたいですね。また、縮小傾向にある小児科や産婦人科にかわって、例えば認知症や在宅医療など、地域のニーズに応える形でほかの分野に積極的に取り組めたらと思います。個人的には、将来的に一つの地域への貢献として二次救急も視野に入れていきたいですね。当院が新しいことに取り組むことで、地域の病院全体が活性化するきっかけになればうれしいです。当院がめざすのは、患者さんが幸せになれる優しく良質な診療をしていくことに尽きます。近隣の病院との連携を深め、迷うことなく患者さんのための医療を行っていきたいです。
清水 忠夫 院長
1979年新潟大学医学部卒業。1986年医学博士取得。1986年東京女子医科大学附属第二病院(現・東医療センター)外科助教、1996年同病院講師、2003年同病院外科准教授、2007年東京女子医科大学八千代医療センター乳腺内分泌外科科長兼務。2011年東京女子医科大学東医療センター乳腺診療部部長臨床教授、2017年より現職。2018年から足立区医師会の理事を務める。