一般財団法人博慈会 博慈会記念総合病院
(東京都 足立区)
岡田 憲明 病院長
最終更新日:2025/05/26


地域の人々の健康に寄り添う急性期総合病院
埼玉県川口市と東京都北区の間に位置する東京都足立区鹿浜で、地域密接型の急性期基幹病院として住民の健康と福祉の増進に貢献してきたのが、「博慈会記念総合病院」だ。306床の急性期総合病院で、東京都災害拠点病院ならびに基幹型臨床研修病院にも指定されている同院では、それぞれの分野に精通した医師が多数在籍し、専門性の高い診療体制を整備。救急医療にも力を入れるなど、地域の多様な医療ニーズに対応することをめざしている。地域の信頼に応えるべく、接遇の向上やICT化の推進にも注力する同院の病院長で、「患者さんにとっての満足と安心を第一に考えています」と話す岡田憲明先生に、診療内容や地域医療にかける思いなどを聞いた。(取材日2025年3月25日)
最初に病院を紹介していただけますか?

当院は、開設以来60年という歴史があり、特に足立区および川口周辺地域の中心的な医療機関として、地域の皆さまとともに歩んできました。特徴の一つは、小児科が救急を含む24時間365日体制で診療を行っており、循環器内科や脳卒中も同様に24時間体制を整えるなど、地域の医療ニーズに対応しています。また、総合病院として心臓血管外科、呼吸器外科、産婦人科、精神科を除くほぼすべての診療科目をそろえており、地域の基幹病院としての役割を担っています。ほかに、災害拠点病院や基幹型臨床研修病院の指定も受けています。足立区は医療面での課題も多い地域ですが、当院はその中で災害対応と教育の両面で貢献しています。日本医科大学との強力な提携も特徴で、多くの医師が同大学出身であり、内科を中心に医師の派遣を受けながら、継続的な関係を築いています。小児科に関しては帝京大学からの派遣を受けるなど、人材確保に努めています。
力を入れている分野はありますか?

当院の最大の特徴は、診療科ごとの専門性の高さにあります。特に内科領域では、それぞれが専門分野として診療しています。呼吸器内科は常勤の医師が4人、消化器内科と循環器内科にはそれぞれ5人、糖尿病内科と腎臓内科も各2人の体制で診療を行っています。また、創設者の専門が放射線科だった背景もあり放射線領域にも充実した設備を備えており、CTは2台、MRIも2台、血管造影装置2台、RI(核医学)検査機器、透視装置など、診断に必要な機器がそろっているほか、がんなどに対する放射線治療にも対応しています。外科系の診療科も充実しており、整形外科では、膝、脊椎、外傷の各分野に専門の医師がおり、脳神経外科では血管内治療のスペシャリストが対応。泌尿器科には、女性泌尿器を専門とする医師もいます。ほかに、眼科、耳鼻咽喉科、形成外科などにもそれぞれに専門の医師が在籍し、幅広い診療に対応しています。
ほかの診療科の取り組みについても教えてください。

循環器内科ではカテーテル検査・治療に24時間365日体制で対応しています。糖尿病診療では教育入院の受け入れやケトアシドーシスなど、緊急性の高いケースにも対応しています。糖尿病が専門の医師が極めて少ない足立区において、これは非常に大きな強みです。さらに、当院には透析施設もあり、感染症に対応可能な個室も含め6床を備え、腎臓内科が専門の医師と連携して質の高い透析医療の提供に努めています。意外と見落とされがちな特徴の一つが、歯科口腔外科です。近年、がんの手術前や化学療法中の口腔ケアの重要性が広まり、大学病院でも歯科口腔外科の設置が進んでいます。当院では、以前より歯科大学からの歯科医師の派遣も受けながら診療してきました。救急での顔面外傷などにも対応が可能です。さらには、病棟の看護体制も入院基本料7対1を維持し、夜間も各病棟に看護師を3人配置するなど、入院患者さんに対する手厚い看護体制を整えています。
病院を運営する上で大切にしていることは何ですか?

最も大切にしているのは、患者さんに「来て良かった」と感じていただける医療の提供です。医療技術の高さはもちろん重要ですが、それ以前に、患者さんに対する「接遇」こそが、医療の出発点であると私たちは考えています。診察室の中だけでなく、受付や検査、看護の現場など、病院内のあらゆる場面において、人と人との関係性を丁寧に築くこと。それが、信頼される病院であり続けるための基本です。具体的には、あいさつや言葉遣いといった小さな行動から始まり、患者さんの氏名や生年月日の確認など、医療安全を守る基本動作の徹底も欠かせません。その上で、医師やスタッフが十分なインフォームドコンセントを行い、患者さんが納得して治療を受けられるように努めています。近年は医療現場もIT化・機械化が進んでいますが、それでもなお、人の手、人の言葉、人の気持ちが介在する「心ある医療」を守ることが何より大切だと考えています。
最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

医療の質を維持、向上させるためには、安定した経営基盤が欠かせません。そのためには、より多くの患者さんに当院を選んでいただけるよう、さまざまな取り組みを進めていく必要があります。具体的には、「救急車の受け入れを断らない」ことに努めるなど、地域の急性期医療を支える体制の強化。加えて、各診療科の医師が地域の医療機関に直接足を運び、当院の特徴や診療体制を丁寧に紹介するなど、顔の見える関係づくりを重視しています。また、交通アクセスの不便さという課題に対しては、送迎バスの運行などを通じて患者さんの負担軽減を図る努力も重ねていきたいと考えています。そして、当院は「患者さんにとっての満足と安心」を第一に考える総合病院です。これからも、地域の皆さまに信頼していただける病院であり続けられるよう職員一同努力してまいります。どうぞ、これからも変わらぬご支援、ご理解をよろしくお願い申し上げます。

岡田 憲明 病院長
1985年日本医科大学卒業。1997年博慈会記念総合病院消化器糖尿病内科部長、2010年より現職。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医。博慈会医療連携患者支援センターセンター長。元日本医科大学消化器・肝臓病内科客員教授。