社会医療法人社団 順江会 江東病院
(東京都 江東区)
梶原 一 院長
最終更新日:2024/05/14
地域に根差し、専門性の高い医療を提供
1955年の創立以来、地域医療の中核的な役割を担い続ける江東区大島の「江東病院」。内科、外科、整形外科をはじめとした多くの診療科を備えて幅広い世代の患者を受け入れ、2次救急医療に尽力する病院として、とりわけ区東部医療圏では数少ないとされる小児救急にも対応し、「いつでも安心して頼れる地域の病院」をめざしている。2010年に新病棟を開設し、臓器別に特化した診療体制を整えるなど、時代とともに進化を遂げ、特に整形外科、循環器、消化器の3分野で患者数が増えているそうだ。院長を務めるのは、同院の整形外科で25年以上にわたってキャリアを積んだ梶原一先生。股関節を専門とし、現在も院長職の傍ら、週2回外来診療もこなすエネルギッシュなドクターだ。梶原院長にインタビューし、同院の成り立ちや診療面での強み、病診連携の取り組み、今後の展望などについてじっくり話を聞いた。(取材日2024年1月19日)
江東病院のこれまでの歩みについてお聞かせください。
当院は長い歴史のある病院で、1955年に三菱製鋼診療所を母体として、順天堂大学の全面支援のもとでスタートを切りました。2010年には新病棟が完成し、286床を有する地域の中核的な病院として地域密着型の医療を提供してきました。主要な診療科に加え、血液浄化部門、がん患者のための緩和ケアチームなども備え、地域にお住まいの皆さんの幅広いニーズにお応えしています。全286床のうち、30床を回復期リハビリテーション病床にあてているほか、訪問看護ステーションや介護老人保健施設、在宅診療所の運営なども行っており、外来、入院治療にとどまらず、高齢期の患者さんに対するシームレスなサポート体制を構築しています。
こちらの病院の強みはどういったところにありますか?
基本的には地域の病院ですから、ジェネラルな疾患すべてに対応しています。その上で、消化器内科、呼吸器内科、腎臓内科など臓器別に専門的な診療を行っていますので、「おなかが痛い」「胸が苦しい」といった訴えにも適切なトリアージのもとで専門の医師の診療につなげるスピーディーな対応が可能です。当院の中でも柱となっている診療科は、整形外科と循環器内科、消化器内科の3つで、特に整形外科は脊椎外科と関節外科を得意とし、専門の医師が毎日の当直に入っていますから、外傷患者にも常時対応が可能です。脊椎に関しては、順天堂大学の脊椎外科部門のチーフドクターが加わったことで、より専門性の高い診療が可能になりました。循環器についても心臓カテーテル治療をはじめ、不整脈・呼吸困難などさまざまな症状に対応しています。とりわけ近年は低侵襲のカテーテルアブレーション治療を数多く手がけていることもあり、患者数が増え続けています。
救急医療にも注力されていますね。
はい。2次救急医療にも対応する病院として、内科、外科の救急患者を幅広く受け入れているほか、小児救急についても積極的に受け入れており、近隣のお子さんの急な病気やケガなどの対応でお役に立てている場面が多いと思います。夜間休日の診療体制としては、内科、外科、小児科の医師だけでなく、整形外科の医師も常駐していますので、ご高齢の方の転倒による骨折、夜間の外傷などにも地域の中で対応可能です。今後は高齢者救急のニーズが増え続けることが確実ですが、ご高齢の方の場合、1つの疾患や外傷で搬送されても、さまざまな持病を抱えているケースが多く、病気治療を優先すべきケースがあったりと、一元的な対応が難しくなります。そうした場面にも対応できるマンパワー、体制を整えていくことが今後の課題ですね。
医療連携の取り組みについてもお聞かせいただけますか?
当院は長く診療を続けている病院ということもあり、地域の開業医の先生方とは長い歴史の中で非常に深い関係性を築いてこられていると自負しています。以前は開業医の先生方を対象に、当院の医師が登壇してセミナーを開催する交流の機会を年に1、2回ほど設けていたのですが、こうしたイベントも新型コロナウイルス感染症の流行で4年ほどストップしている状態です。その間も、医療連携室の担当者が地域の開業医の先生方との情報交換は続けていましたから、今年はこうした交流イベントも再開しつつ、新たに開業された先生方とのつながりも育んでいければと考えています。また、より高次の医療が必要となる脳血管疾患など、当院でカバーできないような診療の連携先として、近隣の病院との協力もより強固にし、互いの得意分野を生かした病病連携で地域の皆さんを確実にお支えできるような医療体制をつくりたいですね。
最後に、地域の皆さんや読者に向けてメッセージをお願いします。
江東区の人口は増え続けており、高齢者の増加はもちろん、ファミリー層の転入で年少人口も増えているという、全国的に見ても特異な状況にあります。つまり幅広い世代に偏りなく対応していく診療体制を維持していくことが不可欠です。私は1998年からこの病院に勤務していますが、当時は医師の数も現在の半数以下で手術件数もそれほど多くありませんでした。その後、内科領域では臓器別に分けて専門的に診療できるようにしたり、消化器内科と消化器外科が連携しやすくなるよう消化器センター化したことなどで、診療面でも着実にレベルアップしてきていることを実感しています。また近年は初期研修医の受け入れを行っており、若い意欲的なドクターたちに指導する側のスタッフも刺激をもらい、現場が活性化しています。これからも高齢者医療の提供や災害対応など、地域の中核的な病院として時代の変化に応じた役割をしっかりと果たしていきたいと思います。
梶原 一 院長
1982年順天堂大学医学部卒業。専門分野は股関節外科、脊髄生理学。大学病院などでの勤務を経て、1998年から同院整形外科に在籍し、股関節疾患を中心に人工関節手術などを数多く手がけた。整形外科部長を経て2021年6月から現職。日本整形外科学会整形外科専門医。順天堂大学整形外科客員准教授。