産後の不安と負担を軽く
ママと赤ちゃんのための「産後ケア」
岩倉病院
(東京都 江戸川区)
最終更新日:2025/01/31
- 保険診療
出産という大仕事を終えたママは、心身ともに疲労困憊(こんぱい)の状態。出産後の約6~8週間の「産褥期」には十分に休養を取る必要があるが、パートナーや親の助けを得られず、疲労が蓄積したまま一人で育児や家事を担うママもいるのではないだろうか。そんな産後ママたちの負担を少しでも軽減するため、各自治体では産後ママの身体的な回復や授乳の指導、育児相談などを行う「産後ケア事業」を展開。「岩倉病院」でも、2023年7月から江戸川区・葛飾区と提携して産後ケアを開始し、ママと赤ちゃんが安心して心と体の休息を取りながら授乳や育児ができるようサポートしている。同院での産後ケアについて、助産師の斉藤恭子さんに話を聞いた。(取材日2024年12月13日)
目次
助産師・看護師が産後ママと赤ちゃんに寄り添い、それぞれのニーズに合ったケアを提供
- Q産後ケアとはどのようなものなのでしょうか?
- A
産後ケアとは出産後のママと赤ちゃんを支援するために自治体が提供するサービスで、提携する病院や助産院などで受けられます。当院では、2024年7月から江戸川区、葛飾区と提携し、健康な母子を対象に休息や授乳・育児相談などの産後ケアを実施。2025年1月からは千葉県市川市とも提携の予定です。サービス形態は母子が数日間宿泊し24時間サポートを受ける宿泊型、日中のみ施設でケアを受ける通所型、助産師や保健師が自宅を訪問する訪問型の3つがあり、当院では宿泊型と通所型を提供しています。利用には自治体への申し込みが必要で、公費助成制度を利用することができますが、条件や費用は自治体によって異なります。
- Q岩倉病院で産後ケアを開始したきっかけを教えてください。
- A
退院指導では「産後3週間は安静に」とお伝えしていますが、実際には退院後すぐに育児や家事に追われ、休む間もない方が多いようです。産後10日目の健診で「全然休めない」と訴えるママも多くいらっしゃいました。そこで、ママたちが心身ともに休息できるサービスの提供を当院で検討したところ、自治体の産後ケア事業に参加することになったのです。初産婦・経産婦を問わず、産後の回復には時間がかかることがあり、身体的・精神的ケアが重要です。また、看護師や助産師から授乳や沐浴などのアドバイスを受けることで、育児に自信を持てるのではないでしょうか。一人で頑張ろうとせず、ぜひ産後ケアの利用を検討していただきたいと思います。
- Qどのような方が利用していますか?
- A
パパの仕事が忙しく育児を一人で担っている方、体調不良や疲労を感じて休息を必要とする方、育児や授乳に不安を抱えている方などがご利用されています。当院では妊婦健診や両親学級で産後ケアのご案内をしており、事前に利用を申請され、出産後に退院日を延長するかたちで宿泊型のケアを利用することも可能です。「ただ疲れているだけなのに利用してもいいのかな」と思う方もいるかもしれませんが、産後ケアはママの休息とサポートを目的とした事業です。江戸川区にお住まいの方は妊娠28週から申請可能で、出産後に申し込むこともできます。「少し休みたい」「育児の悩みを相談したい」と感じたときは遠慮なくご利用ください。
- Q具体的にはどのようなケアを受けられるのですか?
- A
自治体や施設によって内容は異なりますが、一般的にはママと赤ちゃんの健康チェック、授乳や育児に関する相談、ママが休息を取れるよう赤ちゃんを一時的にお預かりすることなどが含まれます。当院では、事前に問診票をご記入いただき、産後ケアに対するご要望をお伺いして、「とにかくゆっくり休みたい」「沐浴の練習をしたい」「母乳の出を確認してほしい」など、一人ひとりのニーズに合わせて対応しています。特に多いのは、「とにかく休みたい」という休息型でのご利用です。赤ちゃんをお預かりし、ママが安心して休息できる環境を提供することも私たちの大切な役割だと思っています。
- Q産後ケアの中で、気をつけていることはありますか?
- A
まずはお話をしっかり聞くことです。以前、赤ちゃんの首や関節の内側に湿疹が見られたためお話を伺うと、ご自身の体調不良から沐浴をご主人に任せていたとのこと。「私がきちんとお世話しなかったから」と自分を責めておられました。そういった場合、ママに安心していただけるように「どの赤ちゃんも皮膚が重なる部分には湿疹ができやすいので、心配ありませんよ」とお伝えし、ケアや予防方法をアドバイスします。産後は気分が落ち込みやすく、育児に追われて心身ともに疲弊しがちです。そんなママたちのお話に耳を傾け、不安を和らげることが寄り添うケアにつながると感じています。