医療法人社団晃山会 松江病院
(東京都 江戸川区)
山田 徹 院長
最終更新日:2024/07/05
救急医療からレスパイト入院まで幅広く対応
江戸川区松江を通る今井街道から少し入った閑静な住宅街にあるのが、「松江病院」だ。50年ほど前に開院して以来、人々の健康を支え、地域に寄り添ってきた同院。現在は、内科や外科、脳神経外科、整形外科を中心とするプライマリケアと、東京都指定二次救急医療機関として救急医療にも力を入れることで、地域の守り神と呼ばれるような病院になることをめざしている。そんな同院の理事長と院長を務め、「病気を治すのではなく、人を治すことを大切にしています」と気さくに話す山田徹先生に、同院の特徴や現在建設を進めている新病院のことなどについて聞いた。(取材日2023年4月12日/情報更新日2024年5月16日)
最初に病院の概要を紹介していただけますか?
当院は、従来からこの地域で救急病院として皆さまに認識されてきました。現在でも、数多くの救急搬送を受け入れています。江戸川区は縦長の形をしていて、その真ん中辺りに当院はありますが、その地域の人たちが、何かあったら松江病院と、そんなふうに考えてもらっている病院です。救急は、病院によっては整形外科だけ、あるいは循環器疾患だけというところもありますが、当院では、それこそ高齢者の転倒による骨折などのけがから、脳卒中などの脳神経疾患、心筋梗塞などの循環器疾患などまで、守備範囲も広く受け入れることをめざしています。そのため、直接の救急を担当しているのは当院の常勤医師ではなく、救急を専門とする医師に大学病院から来てもらっています。そして、入院した後には常勤の医師が引き継いで診て、また高度医療が必要な場合には大学病院などに紹介をしています。
力を入れていることは何ですか?
まずはリハビリテーションです。江戸川区内では、リハビリテーションに対応できる医療機関の数が少ないのです。地域の皆さんは、急性期の高度医療は大学病院で受けていることが少なくないですが、それが落ち着いてリハビリテーションの段階になったら、できれば自宅の近くでするべきであるというのが私の考えです。そうすれば、友人やご家族も気軽に患者さんの顔を見に来ることができますし、それによって患者さんも元気になって、早く治して自宅に帰りたいというモチベーションにつながるのだと考えています。加えて、現在当院にある113床のうちの半分程度が地域包括ケア病棟ですが、「急性期の治療が終わっても自宅に帰るのは難しい。でも、専門的なリハビリテーションは必要ない」という場合には、自宅や施設に帰るまでの退院準備という位置づけでそちらに入院してもらって、退院してからもちゃんと安心して暮らせるようにすることにも力を入れています。
ほかに特徴はありますか?
一般外来においては、脳神経外科や外科、内科、整形外科、形成外科、呼吸器疾患、糖尿病、皮膚科とさまざまな診療に対応しています。当院の外来診療は、ほとんどが大学病院の教授や助教授、講師を務める医師が担当しています。つまり、当院の外来で大学病院レベルの診察が受けられるということで、それを希望して来ている患者さんも少なくありません。また、当院では訪問診療にも、主にこれまで当院で診察を受けていた患者さんを中心に対応しています。加えて、当院は在宅医療を行っている地域の開業医や訪問看護師、ケアマネジャーたちのよき相談相手になりたいと考えています。やはり、いろいろな事情で在宅では対応しきれないときがあると思います。そのような場合には、どのような患者さんでも当院で受け入れたい。そういう意味での守り神的な存在となることをめざしているのです。ですから、レスパイト入院についても受け入れています。
新病院を建設中だと伺いました。
はい。現在、最新の医療水準に合わせた医療の提供を可能とするため、老朽化した病棟の新築建替工事を実施しています。新病院では、これまでの特徴をさらに生かせるようにしていくことに加え、新たに回復期リハビリテーション病棟が60床と緩和ケア病棟の28床を増床し、現在の113床と合わせて199床になる予定です。先ほど、リハビリテーションに対応可能な医療機関が区内に足りていないと話しましたが、同様にがん末期の緩和ケアを提供できる病院も都内で足りていなくて、都外の病院に行っている患者さんもいます。がん末期の患者さんは、会いたい人もいるでしょう。会いたい人に容易に会える環境を新病院で作りたいのです。現在、第1期の工事が2024年3月に完成し、旧病院の機能をそちらに移しました。今後は、それまで使用していた建物を解体して新たに病棟を作り、最終的に2026年2月には新病院完成を予定しています。
病院の理念や展望、読者へのメッセージをお願いします。
当院のモットーは、「医療・介護を通じて地域に貢献する」ことです。その中で私は、病気を治すのではなく、人を治すことを心がけています。たとえ同じ病気だとしても、その人の生活や家族などの背景は違いますし、それぞれに合った治し方があると思います。もし治療方針に迷うことがあったら、自分がしたいほうではなく、患者さんにとって良いほうを選択するようにしています。そして、新病院がオープンしたら、回復期リハビリテーションや緩和ケアなど、新しいことにも取り組んでいきます。基本的な方針や役割などはこれまでと変わらずに、さらに充実して確固たるものにしていくことが、自分のすべきことだと考えています。これからも今までどおり、健康のことで何かあったら松江、どうしようもなくなっても最後には松江があるという存在感を守り続けていきますし、患者さんにとってさらに便利で、気兼ねなく来ることができる病院をめざしていきます。
山田 徹 院長
東北大学卒業。1992年広島県三原市に山田脳神経外科を開院。医療法人社団明清会山田記念病院院長・理事長などを経て2012年より医療法人社団晃山会松江病院理事長。2019年より院長を兼務。専門は脳神経外科。三原市では、自ら立ち上げた社会福祉法人の理事長を務め、高齢者福祉・介護事業や保育・児童福祉事業に取り組んでいた。