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東京かつしか赤十字母子医療センター

(東京都 葛飾区)

三石 知左子 院長

最終更新日:2020/11/25

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長年の歴史と実績が区民の成長をサポート

葛飾区役所の正面にある「葛飾赤十字産院」は、産婦人科・小児科の専門病院。60年以上にもわたって多くの命の誕生を見守り、「葛飾区民の4人に1人はここ生まれ」と言われるほど。院長を務めるのは、全国に存在する赤十字病院において、現在、唯一の女性院長である三石知左子院長。小児科を専門とする医師でありながら産科中心の病院を支え、女性ならではの視点で数々の改革を行ってきた実力者だ。「出産、育児を経験すると、女性は強く優しくなれると思うのです。自分の子を産んでみて初めてわかったこともありますし、産科、小児科は女性の立場からの発言が有益であることも多い分野ですね」と語る三石院長の視線は、どこまでも穏やかで優しい。大規模病院を担い、より良い運営をめざす三石院長に、お産を取り巻く現状や、今後の展望などを聞いた。(取材日2016年4月7日)

院長に就任した経緯を教えてください。

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前院長と出張病院で一緒に勤務した経験があり、「副院長として病院の立て直しを手伝って欲しい」と声をかけていただいたのがきっかけでした。立て直し前は患者数が減少の一途をたどっており運営も厳しい状態でしたが、前院長の働きかけのおかげで分娩数は増加。そして、前院長のご退任に伴いご指名をいただいたのです。私の専門は小児科ですし、女性ということもあり「小児科の女医が産科メインの病院の院長を?」と初めは戸惑いました。しかし、愛育病院の山口規容子現名誉院長など、尊敬するロールモデルも身近にあったことから、思い切ってお引き受けしたのです。病院というものは、各診療科にそれぞれエキスパートがいてギルドを形成しています。そうした専門職の集団を束ねるのが院長の務めだと思うのです。幸い、当院では各科に信頼してお任せできる先生方がいらっしゃいますから、特に困難を感じることはないですね。

就任後、数々の院内改革に取り組んだとうかがいました。

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職員の職場環境整備には力を入れました。特に看護スタッフについて、妊娠、出産でキャリア継続が難しく、いつまでも新人スタッフを補充し続けないといけないという状況がありました。経験を積んだベテランスタッフをいかに定着させるかを課題として、院内保育室などを検討するほか、実際に院内で子育て中の職員にヒアリングをしたのです。結果、「院内保育では近隣在住のスタッフしか恩恵が受けられない」「子どもというものは地域の中で育っていくものだ」という意見があがりました。そこで、職員の子どもたちが地域に溶け込みながら育つことを支援するためには、保育料の一部負担という形がベストという結論に落ち着きました。現在、男性女性を問わず、共働きで保育園に通う子どもがいる家庭には、上限を決めて保育料の半額負担を行っています。おかげさまで現在では、それぞれのできる範囲で頑張って勤務を続けてくれています。

医療界における女性スタッフの活躍についていかがお考えですか。

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産婦人科・小児科領域で、教科書には書いていない痛みや不安といったことを理解、共感し、医療に生かすことができるのは、女性スタッフならではのメリットですね。私自身、出産を経験して初めて分かった思いもあります。お母さんにとって「大変よね、自分も大切にしてね」のひと言がどれだけありがたいかということも。現在、国家試験に合格する医学部生の3人に1人は女性ですし、若手小児科医の半数近くが女性医師だというデータもあります。女性医師の進出は医療全体にとって急務ですが、特に産婦人科・小児科では危機感を持って取り組むべき課題だと思います。私自身、赤十字病院グループで唯一の女性院長として、初めのうちは居心地の悪さを感じることもありました。しかし、女性医師の地位向上や女性医師のキャリア育成をめざすのであれば自分の立場も十分に活用していくべきだと考え、グループ内における女性医師の職域環境調査などを実施しています。

こちらでのお産について教えていただけますか。

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「分娩台で産むだけがお産ではない」というスタンスのもと、母体が一番楽な体勢で、家族のサポートも受けながらのお産を提案しています。新設備として畳貼りの分娩室をご用意するほか、お母さんの痛みや不調に寄り添うための「マタニティー鍼灸ルーム」を導入。妊娠中に薬が飲めない、または薬の服用を嫌う方や産後6~8週間までの出産直後の方が対象で、産科知識を持った女性の鍼灸師によるケアが受けられます。病院での鍼灸治療は安心感につながりますし、患者の情報を共有できる点は医師・スタッフにも大きなメリットですね。治療や院内設備に関しての相談はお気軽にどうぞ。出産年齢については、どうしても高齢化とともにリスクは増加します。満足の行くお産をめざすなら、それなりの体づくりは必須ですね。不妊治療では、妊娠自体が目的になってしまうような治療は、あまりお勧めしていません。出産はその後続く育児の出発地点にしか過ぎないのですから。

今後の展望がありましたら。

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前院長からいただいた「新病院建設」という課題の達成が急務ですね。古かった建物の表面をきれいに整え、スタッフの意識も良い方向に導くことはできましたが、やはり建物自体は古いまま。規模にも不満が残ります。まだ検討段階ですが、将来的に金町近くの図書センター跡地に新しい病院を建設したいと考えています。用地確保に難航していましたが、葛飾区長から当院が「葛飾の宝」であるとのお言葉と、移転新設へのサポートをいただくことができました。新病院については職員の意見を取り入れたいという思いから、アンケートを実施。「心療内科を新設して死産などで悲しみに接した方のグリーフケアを行いたい」「映画館や体育館が欲しい」など、たくさんの要望が集まりました。もちろん、すべてが実現できる訳ではありませんが、職員一同一体感を持って取り組んでいきたいです。東京オリンピックの頃までに何かしらの形にできたらうれしいですね。

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三石 知左子 院長

札幌医科大学卒業後、東京女子医科大学小児科入局。東京女子医科大学母子総合医療センター小児保健部門講師を経て、現職に就任。東京女子医科大学非常勤講師。切迫早産や妊娠高血圧症候群などのハイリスクの妊婦、ハイリスク児を数多く診療。仕事の醍醐味を「NICUを卒業した子に会う時」「担当した患者と将来一緒に働く可能性があること」と語る。育児雑誌やインターネットを通して育児に関する悩みに応えることも多い。

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