医療法人社団福寿会 赤羽岩渕病院
(東京都 北区)
久米 雄一郎 院長
最終更新日:2024/12/27


地域すべての人が安心して暮らせるよう尽力
足立区を中心とした城北エリアで、急性期病院から介護施設まで、幅広いサービスを提供している医療法人社団福寿会グループに所属し、地域医療に貢献している「赤羽岩渕病院」。内科、消化器内科、循環器内科、呼吸器内科、腎臓内科、整形外科、皮膚科などの診療科を掲げ、生活習慣病の管理・専門性の高い疾患の安定期の管理・がんの早期発見のための内視鏡検査・各種ワクチン接種・各種健診などを実施している。福寿会の「必要なときに、必要な人へ、必要なだけ、トータルにサービスを提供していく」という基本姿勢のもと、地域に住む人々が、住み慣れた町で末永く安心して暮らしていくために必要な医療の提供に努めている。外来診療、訪問診療、地域包括ケア病棟での入院診療、通所・訪問リハビリテーションを一体化して提供する「赤羽岩渕モデル」の確立をめざす同院の取り組みについて、久米雄一郎院長に話を聞いた。(取材日2024年3月13日)
病院の基本姿勢を教えてください。

当院は、住み慣れた町、住み慣れた場で、患者さんが安心して暮らしていけるよう、「必要なときに、必要な人へ、必要なだけ、トータルにサービスを提供していく」という、福寿会グループの基本理念の体現をめざしています。患者さんやご家族ごとに、安心して生活するために必要なサービスは異なります。私たち医療者側のみの判断で、考えや都合を押しつけるものでは決してありません。患者さんはもちろんのこと、ご家族・医師・看護師・介護士・理学療法士・社会福祉士など、関係者が互いにコミュニケーションを取り、本当に必要なものは何かということを一緒に考える必要があるのです。また当院は50床のうち46床が地域包括ケア病床です。高齢化が進みご自宅や施設で過ごす方が多い現在、具合が悪いけれど高度急性期病院へ行くほどではないというときなどに、安心して頼りにできる病院として重要な役割を担いたいと考えています。
いざというときに頼りになる病院は地域でありがたい存在ですね。

注力する訪問診療では、医師と看護師がペアで訪問し、外来診療と遜色ないほどの診療の提供をめざしています。さらに、患者さんやご家族の安心のために、24時間365日いつでも看護師に電話相談ができ、臨時往診も可能な体制を整備していることが特徴です。機能強化型在宅療養支援病院の強みである、訪問診療と地域包括ケア病棟の高度な連携を生かし、必要に応じて早めの入院を調整することで、退院後に再び地域で安心して暮らせるよう、サポートさせていただきます。訪問診療や入院時は、できるだけ同じ顔ぶれで担当できる体制を整えたいと考えています。眼科や皮膚科、耳鼻咽喉科や整形外科など、専門の医師のバックアップがあるのも、当院における訪問診療の強みです。またご高齢の方にとって、誤嚥性肺炎に関わる食事や嚥下の問題はとても重要です。当院では、専門に学んだ医師が嚥下の評価をして、必要に応じて嚥下リハビリテーションを行っています。
良質な医療にはスタッフ間のコミュニケーションが重要だとか。

病院はさまざまな専門性を持つたくさんのスタッフの集合体です。治療・看護・リハビリテーションなど、それぞれが役割に応じて患者さんのために尽力していますが、職種ごとに重要視するものが異なる場合もあり、ケアの方向性に若干のずれが生じることもあります。だからこそコミュニケーションを取ることで方向性を定め、互いに助け合い補完し合うことが、サービスの質の向上につながると考えています。当院には産前産後休暇・育児休業を取得するスタッフや、子育て中のため短時間勤務のスタッフも大勢います。スタッフ同士のコミュニケーションが日頃から取れていれば、急な休みが発生した場合でも「お互いさま」の精神で助け合えると思いますし、気持ち良く仕事ができるでしょう。そうした働きやすい環境は、仕事の質や医療サービスの向上に直結します。その結果、より地域の方々に喜んでいただければ、こんなに良いことはないと思っているんです。
一人ひとりに必要な医療を提供するために取り組んでいることは?

医療・看護・介護・リハビリテーション・退院支援などを、患者さんやご家族の希望に可能な限り沿う形で提供することをめざしています。本人やご家族が望まない侵襲度の高い医療や、延命のみを目的とした医療を可能な限り避けた上で、疾患が軽快する可能性が最も高く見込める医療の提供に努めています。看護とリハビリテーションにおいて大切にしているのは、患者さんの生活能力を損なわないようなサポートです。退院が決まれば、患者さんの状態や実際の生活を踏まえた上で必要なアドバイスを行い、サービス調整やリハビリテーションを提供します。施設に入居される場合は、施設での生活に則したリハビリテーションを実施します。さらに地域包括ケア病棟では、ご自宅での生活が難しくなったときの緊急避難的な入院も受けつけています。住み慣れた地域や環境で安心して暮らせるよう、状況に応じた判断と適切な医療の提供に努め、きめ細かな対応を心がけています。
最後に、地域の方々へのメッセージをお願いします。

当院では多様な専門性を持つ医師による診療のほか、栄養士による外来・訪問での栄養指導、理学療法士による通所・訪問でのリハビリテーションを行っており、近年は在宅でのお看取りにも対応しています。ご高齢の方だけでなく、働き世代やもっと若い世代など、地域に暮らす皆さんの健康を守るため、予防や健康維持のための取り組みとして各種検診や、禁煙専門の外来にも対応しています。また、消化器内視鏡の専門家である私が担当する食道・胃・十二指腸の内視鏡検査では、鼻から挿入する経鼻内視鏡を用いて、負担少なく精度の高い検査を行うよう努めていることが特徴です。がんは早期発見が鍵ですので、ぜひ定期的な検査を受けてほしいです。またご家族の中には、介護で疲弊し苦しんでおられる方も少なくないでしょう。そのような事態に陥る前に、私たちを頼ってほしいです。患者さんもご家族も安心して地域で暮らせるよう、今後も全力でお手伝いいたします。

久米 雄一郎 院長
東京大学農学部卒業後、同大学院に進むも「人の笑顔に直接的に貢献したい」という思いから香川大学医学部へ編入学。がん・感染症センター都立駒込病院や東京医科歯科大学病院にて、食道外科の研鑽を積み、2019年に赤羽岩渕病院に入職。2020年4月に副院長に就任し、2022年10月より現職。専門は消化器外科、消化器内科、一般外科、内科。同院では内視鏡検査も担当。医学博士。経営学修士。プライベートでは4児の父。