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飯沼病院

(東京都 板橋区)

飯沼 久美子 院長

最終更新日:2022/07/25

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地域のニーズに応える都市型の精神科病院

東京都板橋区の幹線道路沿い、東部東上線ときわ台駅からも近い「飯沼病院」は1946年に開院。住宅地の中にある都市型の精神科病院として、時代と地域のニーズに応える医療を行ってきた。現在の診療科は心療内科、精神科、内科で、患者の精神面と身体面を総合的に診られる点が特徴。同院の飯沼久美子院長は、「当院は戦後すぐに内科を専門に診療を開始し、その後、アルコール依存症やうつ病などの社会問題に対応する精神科を開設しました」と話す。「私たちのコンセプトは『人に優しい医療』。さまざまな人がともに生き、ともに在る社会をめざしています。住宅に囲まれた都市部という当院の立地条件も、そうした『共生・共存』の地域づくりには必要なものです。ほかの医療機関との密接な連携も都市部にある優位性の一つでしょう」と言う飯沼院長。そして、人だけでなく動物たちの命も大切にしたいとの思いから、遺棄されたペットの保護活動にも尽力する飯沼院長に、同院の診療の特色や地域連携などを詳しく聞いた。(取材日2022年5月27日)

この病院の成り立ちや診療の特色を教えてください。

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当院は終戦の翌年、1946年に私の父・飯沼昌夫が現在の場所に開院した病院です。父の専門は結核で、当時は内科として幅広く診療しながら、患者さんも多かった結核の治療に力を注いでいたようです。やがて結核は下火になり、アルコール依存症やうつ病といった“心の病気”が増え始めました。精神科を専門とする私が院長に就任したのはそんなタイミングです。その後は精神科と内科を総合的に診られる病院として発展し、さらに心と体の両面を診る心療内科を加え、現在は3つの診療科を標榜しています。精神疾患の患者さんは生活習慣病や循環器の病気も多く、心と体の両方に症状がある身体合併症への対応は重要です、その点、日常的な病気や生活習慣病まで診療できるのは当院の特色の一つでしょう。循環器の専門的な治療はほかの医療機関へのご紹介になりますが、そうした密接な連携ができるのも都市部にある精神科病院のメリットといえます。

どのような方針で診療されていますか?

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当院のコンセプトは「人に優しい医療」です。つらい思いをしている方がいれば、まず寄り添い、支えることが大切で、それには心身両面を診る診療科も必要と考えています。また、私の夫はアメリカ出身の医師で、「sympathy(シンパシー)」と「empathy(エンパシー)」という言葉をよく使います。sympathyは同情や共感などを意味し、一方のempathyは当事者の心に同調し、寄り添う、相手の心に入り込むイメージと私は捉えています。当院では後者のempathyをもとにした医療を心がけ、患者さんのつらさ、苦しみに少しでも寄り添えるよう、例えば診察室に入室される時の歩き方や表情、話し方などからも心の動きを感じ取るように努めています。さらに精神疾患の方をはじめ多様な人が「共生・共存」できる地域づくりのため、患者さんのご家族や地域と連携し、ご本人がまた社会で暮らせるよう回復を支援する治療を行っています。

受診する方はどんな症状が多いのでしょうか?

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外来では、心療内科で30〜40代を中心にしたうつ病のご相談、入院の場合は精神科で認知症の患者さんが多くなっています。うつ病やそのほかの精神疾患の患者さんは、すでに多くの薬を服用され、高血圧や糖尿病などの生活習慣病でも薬を飲まれていることがよくあります。当院では、一人ひとりの心身の状態と薬の種類・量を十分に検討しながら減薬に取り組み、必要ならデイケアも併用するなど、薬だけに頼らない治療を心がけています。認知症の方は、ご家族のご相談から入院に至るケース、ほかの医療機関からご紹介いただくケースなどさまざまです。また、板橋区の保健福祉機関が保護した徘徊中の認知症の患者さんで身元が不明な方、虐待の疑いがある方などの一時保護としての入院も受け入れています。このほか、外来の心療内科では小児の思春期に関する相談もお受けしています。

デイケアの目的や内容をご紹介ください。

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当院の外来で行うデイケアは、うつ病や精神疾患の患者さんが社会生活に慣れ、ご自宅や施設に戻れるよう支援する場です。特に、軽い運動やレクリエーションなどを通じて、自分らしい暮らしへと戻るお手伝いをする作業療法に力を入れ、例えば合気道、ピラティスなどは外部の専門家に指導をお願いしています。先日は芸術鑑賞の一つとして、プロの歌い手によるフラメンコのカンテ(歌)をリモートで楽しんでいただきました。その道の専門家が伝える感動を患者さんに経験していただき、その方の感性に何か良い影響が残せればと考えています。さらに、当院の職員も日常的に芸術に触れることで、患者さんの気持ちに寄り添う感性が磨けるのではと期待しています。当院が都市部にあるからこそ、こうした本物志向のデイケアが実現しやすいといえます。また、前述のようにご家族のご相談、ほかの医療機関からのご紹介が容易なのも都市型の特徴だと思います。

こちらでは保護犬も引き取られていると伺いました。

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私が遺棄されたペットの保護活動をしていたのがきっかけで、患者さんやご家族が動物たちと自然に触れあう機会がつくれたらと考え、当院の中庭で数匹の犬が暮らすようになりました。もとが保護犬ですから、人間につらい思いをさせられた子もいます。一方で患者さんやご家族は内面に深い悩みを抱えておられます。そうした動物と人とが共存する中で、何かが通じ合い、少しでも幸せな生き方ができるようになるといいですね。私が常に意識しているのは、医療者側が何かしてあげるといった上からの立場で考えず、謙虚に患者さんや周囲のスタッフと接して学ぶ姿勢が大切ということ。例えば患者さんが現実では実現が難しいことを話されても、耳を傾けて同調し、そこからご本人らしい生き方に結びつけていればと思っています。社会の大きな変化でストレスを感じる方はさらに増えるかもしれません。そうした方が気軽に相談いただける窓口を当院はめざしています。

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飯沼 久美子 院長

大学の哲学科を卒業した後、社会経験の中で医師の道を志し、東海大学医学部に入学。卒業後、医療現場を経て、現職に就任する。板橋区に密着した都市型の精神科病院として、患者や家族が幸せになれる病院づくりをめざす。日本精神神経学会精神科専門医。趣味はフラメンコ。娯楽小説からノンフィクション作品まで多様な人間像を描いた日本人作家の愛好家。遺棄されたペットの保護活動にも尽力し、ライフワークとしている。

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