医療法人社団健育会 竹川病院
(東京都 板橋区)
原田 俊一 院長
最終更新日:2024/03/11
自分を取り戻すためのリハビリテーション
2023年に開院70周年を迎えた「竹川病院」。時代のニーズに対応しつつ、「目の前で救いを求めている患者さんの役に立ちたい」という開院時の原点はそのままに、今や板橋区を中心に東京都北西部のリハビリテーションを担うリハビリテーション病院だ。2007年に東武東上線・上板橋駅より徒歩10分の立地に新築移転。自然豊かな新病棟は、1階が内科・整形外科・脳神経外科・皮膚科の外来、2~5階が回復期リハビリテーション病棟となっており、脳血管疾患や大腿骨頸部骨折などの患者の寝たきり防止と自宅復帰を目的とするリハビリテーションを集中的に行っている。2023年4月に院長に就任した原田俊一先生によれば、先端技術を応用した高度なリハビリテーションを支えるのは、さまざまな職種のスペシャリストによるチーム医療と、食事や心のケアまで配慮したきめ細かなサポート体制。若い頃は脳神経外科で患者の命を救うことに尽力し、今は一命を取り留めた患者が機能を回復し、再び人間らしく生きるための回復期リハビリテーションに注力する原田院長に、同院ならではのリハビリテーションの取り組みをじっくり聞いた。(取材日2024年1月16日)
まずは回復期・慢性期医療への思いをお聞かせください。
私自身、若い頃は脳神経外科を専門としており、急性期医療の現場でそれこそ生きるか死ぬかという医療に携わっていました。ところがなんとか一命を取り留めた患者さんが、別の疾患で入院したり、生活習慣病の合併症をはじめとする加齢に伴う医療や看護、介護の介入を余儀なくされたりしている姿をお見かけするたびに、慢性期医療の重要性を実感するようになりました。慢性期医療においては、単に医療を提供するだけでなく、人生観や死生観、あるいは精神面で哲学的なサポートも必要です。また、当院は回復期病棟161床を有するリハビリテーションを専門とする病院です。リハビリテーションによって疾病や外傷などによって損なわれた機能を回復することはもちろん、さらに心の通うケアで生活を育み、人間としての尊厳や誇りを取り戻すことをめざしています。
こちらの病院ならではのリハビリテーションとは?
まず、さまざまな職種のスペシャリストによるチーム医療だということです。当院のリハビリテーション部には、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などさまざまな専門資格を持つスタッフが在籍しています。患者さんの入院時には、医師や看護師、薬剤師の他にこれらのスタッフが集まり、患者さんに関する情報や治療の目標を共有します。脳血管疾患や運動器疾患のある患者さんに対し、電気刺激療法やリハビリテーション支援ロボットを用いた歩行訓練などを早期から実施。嚥下障害の患者さんには、嚥下に必要な筋肉に微弱な電流を流し感覚神経、運動神経を刺激する他、衰えた筋肉を回復するため、タンパク質を強化した食事や栄養補給にも積極的に取り組んでいます。また、スタッフよりご家族による食事介助のほうがスムーズな場合は、ご家族にも協力していただくなど、一人ひとりの患者さんに合わせた、家族の絆を大切にした心の通うケアで自宅復帰をめざします。
地域の病院との連携について教えてください。
日本大学医学部附属板橋病院や帝京大学医学部附属病院、豊島病院、東京都健康長寿医療センター、東京都立大塚病院と連携しており、会合にも積極的に参加しています。私自身がもともとは脳神経外科にいたこともあり、急性期医療とのネットワークや現場のニーズがよくわかるので、他院との地域連携においてもその知識や経験が生かせていますね。回復期の患者さんを受け入れるだけでなく、当院に入院中の患者さんの持病が悪化した場合なども、高度な医療体制の整った大きな病院への受け入れがスムーズな点も密な連携のメリットといえるでしょう。また、退院後に地元のかかりつけ医に安心して受診できるよう、患者さんへの十分な情報提供やフォローも心がけています。退院前にはスタッフがご自宅を訪問し、入院中に病院で練習してきた動作を、実際にご自宅でも安全に行えるか確認し、退院後も不自由なくお過ごしいただけるようサポートをしています。
リハビリテーション病院へのニーズは今後さらに高まりそうです。
リハビリテーションというと、脳卒中や心筋梗塞など重症患者さんのためのものというイメージがあるかもしれませんが、実際は風邪をひいて1~2日寝込んだだけでも私たちの体は衰え、運動機能が低下します。そう考えると、あらゆる疾病や外傷の治療の仕上げにはリハビリテーションが大切ということになりますし、高齢になって衰えた機能を回復するという意味においても欠かせないものと考えられるでしょう。そして失われた機能の回復とともに自信や尊厳を取り戻すことは、その後の人生を前向きに生きることにつながります。時には、失った右手の機能を左手の機能で補わなくてはならないかもしれません。失われた機能の回復、またはその代わりとなる機能の習得を図り、ADLの向上をめざすとともに、より豊かで幸せな人生を歩むための選択肢の一つがリハビリテーションと思っていただけたらうれしいですね。
最後に、地域の方々にメッセージをお願いします。
当院ではスタッフに3つの「I」、Imagination(想像力)・Instinct(直観)・Insight(洞察力)を大事にする「I(私)」が主語となる医療を実践せよと常々話しています。そうすることで観念にとらわれない、人の琴線に触れるやり取りができるからです。また、「リハビリテーション」の語源はラテン語の「Re(再び)」「habilis(できる、人間らしい)」で、「再びできるようにする」「 再び人間らしく生きる」という意味があるそうです。ひいては元の自分を取り戻す、ということになります。当院は四季を感じられる庭や富士山の見える屋上庭園、自然光の降り注ぐ明るく清潔な環境のもと、ぬくもりを感じられる心の通う全人的アプローチと、専門チームによるリハビリテーションで、ゆっくりでも着実に進歩・改善が見られる治療をめざしています。老いに対するきめ細かな対応も可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
原田 俊一 院長
1982年慶應義塾大学医学部卒業。同大学医学部で脳神経外科を研鑽。国際医療福祉大学熱海病院、飯能市東吾野医療介護センター、飯能靖和病院などを経て、2023年4月より現職。専門分野は脳神経外科、救急医学、人間ドック。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医、日本救急医学会救急科専門医。リハビリテーションにも造詣が深く、院長としてスタッフに医学指導しながら、心の通う全人的リハビリテーション医療に取り組む。