医療法人財団朔望会 常盤台外科病院
(東京都 板橋区)
望月 龍二 理事長
最終更新日:2020/11/25
日常の不調からリハビリ、在宅、看取りまで
ときわ台駅北口のロータリーから歩いて5分の「常盤台外科病院」は1960年の開業以来、地域住民のニーズに応えてきている。理事長の望月龍二先生が大切にしているのは、患者が不安や気になっていることを言いやすい雰囲気づくり。同時に、地域の中でも健康弱者になりがちな高齢者が安心に暮らしていけるような医療体制を考えて診療科を整え、また、介護・福祉サービスまで途切れることなく診続けていける環境を板橋区においてつくり上げてきた。また自身の専門である脳神経外科で長く脳卒中患者などを診てきたため、入院中や退院後のリハビリテーションや療養生活を安心に過ごしていけるかといったQOL(生活の質)には非常に心を砕いている。99床というサイズの病院が板橋区で占める役割やグループとしての存在意義、今後の展望などを語ってもらった。(取材日2017年4月18日)
病院と朔望会の成り立ちを教えてください。
1960年に、家内の父である先代理事長が外科病院として開設し、私が入職したのは1990年です。その頃から、99床という病院が、どう世の中のニーズに応えていくべきかを考え、医療から介護、福祉までトータルに地域で提供していく方針を決めました。現在では、当院から4km圏内で2つの介護老人保健施設に特別養護老人ホーム、それに訪問介護や訪問看護、訪問・通所リハビリの事業所なども備えています。板橋区から委託を受け、四葉地区で地域包括支援センターも運営しています。医療の面では、当院では急性期治療のための入院施設を持っていますが、退院後に自宅に戻られるか、介護施設に入居されるまでのワンクッションとして必要を感じ、2015年夏に「リハビリテーションエーデルワイス病院」を開設しました。法人名である「朔望」も、月の満ち欠けの新月から満月までを指す言葉で、人生の終末までを見守るという思いが込められているんですよ。
患者さんはどういう方が多いですか?
高齢患者の方がほとんどで、外来で圧倒的に多いのは整形外科ですね。膝や腰、足が痛いといった訴えで、腰部椎間板ヘルニアや変形性脊椎症、脊柱管狭窄症などの疾患がたいへん多いです。院長の沼本ロバート知彦先生がご専門ですから、安心してかかっていただきたいですね。リハビリテーション室は、主に入院患者さんを対象としています。整形外科や脳神経外科以外の、内科的疾患の方であっても寝たきりでいると動きが弱られてしまうものなので、入院されたらリハビリも同時に行っています。ある程度の年齢になれば風邪をこじらせただけでも寝たきりになってしまうこともありますし、それをきっかけに、環境の変化についていけないこともあって、認知機能が落ちてしまうこともあります。「あんなに元気だったおばあちゃんがこんなになっちゃって……」ということにもなりかねませんが、リハビリで動かしていればそうしたことも防げるのです。
板橋区における貴院の立ち位置を教えてください。
大学病院が2つに、豊島病院、板橋中央病院、東京都健康長寿医療センターと高次医療資源に恵まれた地域です。2次救急は、かつては引き受けのできる病院自体が少なかったのですが、今は全体として底上げされています。当院の救急も広く地域に対してはもちろんですが、かかりつけの患者さんや介護施設ご利用者に対する、いざという時のバックアップに注力しています。自宅療養でも施設にご入居されていても、ちょっと体調を崩されたり急変されたりした時に安心な体制が地域には必要でしょう。また、地域の医療機関との連携も活発です。開業医の先生方とは、例えば当院のCTやMRIの検査依頼も積極的にお受けしていますし、医師会の会合にも必ず参加するようにしてきました。病院間においても、相談員を通じて先方の病院では入院の難しい患者さんを当院で可能な限りお受けしていったり、逆に高次医療の必要な患者さんをお送りしたりと密接に連携しています。
高齢者が安心して「居られる」場所づくりにも積極的ですね。
医療・介護・住宅も含め、中学校区くらいのエリア内でトータルに提供され、住み慣れた地域で最期まで生活できるようにという、地域包括ケアという世の中の流れがあります。実際に一戸建てのご自宅を終の棲家とされるのは難しいケースもあるでしょう。老老介護や高齢者のお一人暮らしといった状況ですね。当院でもこの1年くらいで、ご自宅に定期的に診療に伺う訪問診療を、専任スタッフを置いて拡充していますが、そうやって診ていても感じるのはやはり、在宅という意味ではある程度まとまって居ていただいて見守りができる環境が必要だなということです。2014年には当院から徒歩10分くらいの場所にサービス付き高齢者向け住宅を開設しましたが、これは生活していただきながら見守りの目も行き届きますし、希望すれば介護保険サービスも受けられるという、時代のニーズに合った形態の住まいです。そうした施設もさらに拡充をしていきます。
今後の展望はいかがでしょうか。
当院で急性期治療を終えられたら、リハビリテーションエーデルワイス病院でリハビリを行っていただきますが、疾患によって2ヵ月などと入院期間が限られますので、さらに必要があればグループに介護老人保健施設が2つありますから、そちらで在宅復帰をめざしていただきます。それも難しければ特別養護老人ホームもございます。入居待ちの待機が多いともいわれますが、実際には数箇所に同時に申請されるケースが多いので、名寄せするとさほどでもないんですよ。このように、地域で最期まで安心して暮らせる体制には貢献できるようになってきましたから、あとは本体である当院の建て直しを考えたいですね。10年以内には私の仕事の集大成として、設備面もさらに充実させた急性期治療体制をしっかりと整えます。病院経営も難しくて、地域で廃院されている例もありますから、その分も増床するなどして、地域により安心をもたらしていきたいですね。
望月 龍二 理事長
1978年久留米大学医学部卒業後、東京慈恵会医科大学附属病院脳神経外科で研修、勤務。関連病院などを経て、1990年、義父が創設し院長を務めていた常盤台外科病院に入職。1992年院長に就任。2015年より医療法人財団朔望会理事長。