医療法人社団慈誠会 慈誠会記念病院
(東京都 板橋区)
安藤 稔 院長
最終更新日:2020/11/25
3つの“No”を礎に質の高い医療を志す
閑静な住宅街が広がり、板橋区全体を俯瞰できる西台地区に立つ「医療法人社団慈誠会 慈誠会記念病院」。ここは地域住民がいつでも気軽に受診できる一般外来診療の提供と在宅医療が医学的、社会的に困難になった高齢者が長期に入院できる病院(療養型病院)として、板橋区の地域医療の一翼を担っている。2018年から同病院を率いているのが安藤稔院長だ。3年ほど前、安藤院長の母親がこの病院に入院したことがきっかけで縁がつながり院長に就任したとのこと。その当時は、週末ごとに母親を見舞うことで、患者家族と医療者の複眼で同病院を観察していたのだという。現在は院長としての視点から、3つの“No”がそろった安心・安全を担保できる長期療養型の病院をめざしていると話す。その3つの“No”とは何なのか、病院の特徴とともに話を聞いた。(取材日2019年2月25日)
病院運営にはどんな思いを注いでおられますか?
当院運営でめざすものは、良質な診療による患者の満足度、安定した経営による職員の満足度、この2つの満足度を高めることで、地域の方々に良質な医療、看護、介護を提供することです。具体的には、No In-Hospital Infection(院内感染なし)、No Medical Accident(医療事故なし)、No Elderly Abuse(高齢者虐待なし)の3つの“No”がそろった安心、安全を担保できる長期療養型病院をめざしています。院内感染、医療事故の発生は入院患者さまの生命予後にかかわる重大なものであり、職員一同徹底的に防止対策を講じています。また、ご高齢者の介護の現場では、職員が無意識に行っていること、例えば親しみから患者さまを愛称で呼ぶことなども実は虐待の芽になる場合があります。これら3つの“No”がそろっていることは慈誠会記念病院の療養病院としての矜持の一つと考えています。
こちらの病院の特色について教えてください。
まず、良質な透析医療が提供できる療養型病院であることです。通院や在宅が困難になられた透析患者さまに治療を受けながら快適な入院生活を送っていただくため、全個室で個人用透析コンソールを使用したオンライン血液ろ過療法を主体とした治療を行っています。日本透析医学会透析専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本内科学会総合内科専門医を有する医師が主治医となり、専従の臨床工学士や専任看護師なども充実させて、患者さまにとって適切な透析療法を提供しています。次に、歯科・口腔ケアを重視している点です。高齢者に頻発する誤嚥性肺炎を予防するため、歯科医師と歯科衛生士が毎週入院患者さまの口腔ケアを行っています。口腔リハビリへの取り組みも開始しており、言語聴覚士が歯科と協働して咀嚼機能を評価した上で経口摂取が回復できるように努めています。最後に、充実したリハビリ施設と優秀なスタッフを擁していることも当院の自慢の一つです。
外来診療も行っていると伺いました。
ここは高齢者の入院する病院というイメージが強いようですが、一般のクリニックや診療所と同じように、地域にお住まいの方が予約なし、紹介状なしで受診できる外来診療を行っています。練達な医師が午前、午後ともに診療していますので気軽に受診していただけます。診療は腎臓内科、循環器内科、脳神経内科などの内科が主体ですが、曜日によって呼吸器科、整形外科、リハビリ科、眼科、皮膚科、泌尿器科の診療も可能です。一般クリニックと異なり、血液・尿検査、レントゲン・CT検査、心電図、超音波検査など少しお待ちいただければ、その当日に検査結果を出して診断に結びつけ、迅速に治療を始めることも可能です。また、板橋区の健康診査、そしてワクチン接種も月曜から土曜まで午前・午後で対応しています。さらに、入院・介護相談、お困りのことなどは、電話やメールでご連絡いただければ、当院の医療相談員が親切に対応させていただきます。
地域での役割や医療連携について教えてください。
日本は2025年から2040年に高齢多死社会のピークを迎えると言われています。高齢者の病状や家族構成、経済力などが多様化していく中、一つの病院だけで完結する医療には限界があります。地域の施設がそれぞれの機能に応じて連携しあう地域完結型医療が求められるでしょう。当院はこれまで培ってきた医療、介護リテラシーに基づいて、時代の要請に即して病院の最適化を図ってきました。現在は、近隣の急性期病院、例えば日本大学医学部附属板橋病院、東京都健康長寿医療センター、都立医療公社豊島病院、板橋中央総合病院などとしっかりとした連携を組み、医療的・社会的に在宅治療が難しい高齢者を長期的に受け入れて、安心して快適な療養入院生活を過ごしていただけるようにするのが当院の役割です。今後は、在宅医療を担う医師、診療所、介護老人保健施設との直接連携も視野に入れ、救いを求める方々の受け入れに幅を広げていくことも検討しています。
最後に今後の展望についてお願いいたします。
ご紹介いただいた病院から信頼されるよう、また入院されている患者さまやご家族の方に満足していただけるよう、洗練されたワンランク上の長期療養病院となるように努めていきます。地域住民の方には、一般クリニックと同じように当院の外来を気軽にご利用いただけるように、広報活動を強化していきます。7月にホームページのリニューアルが完成しますので一度ご覧いただければ当院の概要、特色などがよくわかっていただけると思います。当院は、地域環境にも注力する方針であり、東京都受動喫煙防止条例が制定される前から「病院敷地内全面禁煙」としています。さらに、慈誠会グループ全体では、一般急性期病院、リハビリテーション病院、療養型病院、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどを有していますので、患者さまに適切な施設を迅速にご紹介できます。何かお困りのことがございましたら、ぜひご相談ください。
安藤 稔 院長
千葉大学医学部を卒業し東京女子医科大学腎臓内科に入局。医学博士号を取得後、1993年から3年間スウェーデンのカロリンスカ研究所に研究留学。東京都立老人医療センター(現・東京都健康長寿医療センター)腎臓内科医長、東京都立駒込病院腎臓内科部長、東京都立府中療育センター副院長を歴任。2018年4月より現職。日本内科学会総合内科専門医、日本透析医学会透析専門医、日本腎臓学会腎臓専門医。