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医療法人社団欣助会 吉祥寺病院

(東京都 調布市)

塚本 一 院長

最終更新日:2024/04/02

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統合失調症の患者が地域で暮らせるよう支援

三鷹市を走る東八道路から少し入ったところにあるのが、「吉祥寺病院」だ。開院から約70年にもわたって精神科の診療に専門的に取り組んでいる同院。現在は、統合失調症の診療と精神科救急に力を入れており、薬物治療からデイケアによる就労支援、家族のケアなどまでを提供することで、精神疾患の患者を総合的にサポートすることに努めている。そんな同院の院長で、「統合失調症に日本で一番強い病院になることをめざしています」とハキハキとした口調で気さくに話す塚本一院長に、同院の取り組みについて、詳しく教えてもらった。(取材日2023年12月6日)

最初に病院を紹介していただけますか?

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当院は、1954年に76床を持つ精神科の病院として父が開院し、現在は345床を運用しています。統合失調症と精神科救急を中心に、患者さんの社会復帰を前提に薬物による治療やリハビリテーション、デイケアなどの診療を行っています。また、患者家族会「やすらぎ会」を結成し、患者さんのご家族同士が情報共有できる場所を提供しています。患者さんの社会復帰にご家族の協力は欠かせませんから、このほかに「家族教室」を開いて病気や治療薬、利用できる社会資源など基本的な知識を医師や薬剤師、精神保健福祉士(PSW)から説明。さらに、「ファミリーサポートセミナー」では、患者さんへの適切な接し方やさまざまな問題への対処法などを学ぶ機会を設けています。統合失調症は、誰にでも起こり得る「慢性の脳の病気」であり、治療も可能だと理解してもらうこと。ご家族が悩んだり、自分を責めたりしないようにしてもらうことを大切にしています。

力を入れていることは何ですか?

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現在、最も力を入れて取り組んでいるのは、就労を専門とするデイケアです。統合失調症の患者さんが就職し、継続的な就労ができるようにすることをめざしています。このデイケアでは、就労後に必要となる自分の障害特性を把握し、セルフケアやセルフモニタリングなど、働く上での土台作りをするセミナーを開催しています。このセミナーでは、患者さんにはスーツを着てきてもらい、学習塾のように非常に熱心に指導していきます。もう一つの特徴は、就業先との間に就労支援事業者が入らずに当院が直接、企業と接することで、こちらは患者さんのことをよく知ったうえで、作業環境や仕事内容のすり合わせをすることができます。そして、最初からフルタイムではなく短時間の就労からはじめ、困っていることなどのフォローアップをしていくことで、定着率の向上をめざしています。

ほかに特徴的な取り組みはありますか?

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精神科救急や急性期治療にも力を入れています。スーパー救急病棟とも呼ばれる「精神科救急急性期治療病棟」は、これまで53床だったのを今年の4月から106床に増やしました。24時間365日体制で患者さんを受け入れて、入院加療ができるような体制を整えています。特に、近隣や都内の大学病院などからの紹介患者さんが多いのが特徴です。また、クロザピンという薬による治療にも力を入れています。この薬は難治性統合失調症にも効果が期待できる一方で、顆粒球減少症といった致命的な副作用のリスクがあります。そのため、血液内科などを専門的に診ることができる病院と連携したり、定期的に採血をして検査をしたりするなど条件があり、精神科の病院でも使用しているところは多くありません。

職員教育にも熱心に取り組んでいると伺いました。

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以前から教育委員会を設置して、医師や看護師、精神保健福祉士、作業療法士などの専門職教育に力を入れています。医師には、症例検討会や専門講義シリーズ、指定医などの育成の勉強会など。看護部では、1〜4年目以上までの院内研修プログラムが重層的に行われています。また、院外への勉強会等への参加も積極的に促し、資金的にも援助をしています。今後は、当院を組織的に支える人材育成が必要だと考え、管理職教育にも力を入れています。管理者研修を考える専門チームを多職種で作り、役職者を含む中堅職員を対象に研修に取り組んでいます。現在の医療情勢に対応でき、組織活動の場に適応でき、当院を愛し、一緒に育てていってくれる人材の育成をめざしています。医療の質を上げようと思ったら、人間の質を上げるしかありませんし、この先の医療情勢も激変が予想される中で、職員の質の向上を通して求められるものを作っていくことが大切だと考えています。

最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

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精神的な病気を抱えた人でも、社会の中できちんと暮らすことを支えるのが精神科病院の役割です。そのため、特に救急や急性期の入院の対象は都内全般と考えていますが、地域の医療機関や訪問看護、訪問診療などを通じて、面で地域を支えていく必要があると考えています。また、統合失調症に日本一強い病院をめざし、救急・急性期治療を強化することで、職員にとっても働きがいのある病院になることをめざしています。地域の皆さまには、精神科の患者さんを嫌いにならないでほしいです。髪がボサボサだったり、服装がだらしなかったりなど、どうしても色メガネで見られてしまいますが、心の優しい人が多いんです。小さな子どもがいる親御さんなどが警戒されるお気持ちは理解できます。でも、悪いことをする人なんてまずいませんから、ちょっと変わった人だなというくらいの認識で、距離を持ちながらも一緒に地域で生活をしていってほしいと思っています。

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塚本 一 院長

1984年帝京大学卒業。4年生のときに吉祥寺病院の開設時から院長を務めていた父が死去。いずれ同院を継ぐことを念頭に大学病院で初期研修を受けた後、社会保険中央総合病院(現:JCHO東京山手メディカルセンター)で内科診療の経験を積む。その後、大学に戻り精神科を学びながら非常勤として同院に勤務し、1999年より現職。日本精神神経学会精神科専門医。杏林大学非常勤講師。

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