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医療法人社団杏順会 越川病院

(東京都 杉並区)

越川 貴史 病院長

最終更新日:2022/10/07

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緩和ケアを治療初期から終末期まで提供する

ここ10年ほどで、「緩和ケアはがん治療の初期から、身体的・精神的な苦痛を和らげるために行う」という理解も深まってきたと話す「越川病院」の越川貴史院長。「国が緩和ケア病棟に期待する役割も次第に変わり、現在は必要なときに入院し、退院後は在宅療養にお戻りいただくなど、緊急対応・在宅支援の機能も求められています」。しかも、在宅からの緊急入院には急性期医療の対応も重視されるなど、緩和ケアの守備範囲は広がっている。同院はそうした社会の動きを先取りするように、50年近く続いた産婦人科単科の病院を、緩和ケア医療を中心とした病院に転換。越川院長が思い描く緩和ケアの理想をめざして2015年には病院を新築移転し、病床ごとに広いスペースを設けるなど、ゆとりある診療を実現する環境を整えた。同院の理念は「地域医療への貢献と緩和医療の積極的提供」。「終末期でもその方が必要とするなら、よりよい人生を送るための医療をご提供したい」と語る越川院長に、同院の緩和ケアのめざす姿、それを支える診療体制などを詳しく聞いた。(取材日2022年8月30日)

緩和ケア医療中心の病院にされた理由をお聞かせください。

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私が医学部を卒業して初期研修を受けていたとき、「大学病院やがん専門病院では、がんの患者さんを最期まで診る仕組みがない」という実態を知り、こうした「がん難民」ともいえる方の受け皿をめざしたことが始まりです。私の父は杉並区で産婦人科単科の病院を開院しており、事業継承を早くから考え当院で診療に携わっていました。ただ、私自身は消化器内科が専門でしたが同時に国立がんセンター病院で緩和ケアの研修も受けました。そして、がん末期の患者さんを地域で引き受けられる緩和ケアの病院が必要と考え、当院を緩和ケアを専門とする体制に転換していきました。2001年に医療法人化し、診療科も緩和ケア内科、内科などを追加し徐々に体制を変更。その後、2015年に現在の場所に移転しました。また、当院から在宅にお戻りになる際に迅速に行え、スムーズな連携が出来るよう訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所も開設しています。

どのような緩和ケアをめざされていますか?

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当院の理念は「地域医療への貢献と緩和医療の積極的提供」で、患者さんやご家族のご希望、病状によりその方にあった方針を検討します。一般的ながん治療は標準治療が基本となりますが、緩和ケアにおける対応は、その方、家族の希望によっても異なります。当院はご本人やご家族と「どんな医療を受け、どう生きるのか」を話し合い、その理想に近づく医療をご提供していきます。入院される方は大学病院やがん専門病院からのご紹介のほか、当院やほかの医療機関で訪問診療を受けている患者さんや当院外来からとなります。当院の場合、緊急入院が占める割合は入院中患者全体の約25%で、これは在宅の患者さんがほとんど。このような場合は詳しい病状が分からないことも多く、まず一般病床で受け入れて診断し、病状に対する評価を行います。

退院して自宅に戻られるケースも多いのでしょうか?

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緩和ケア病棟ではお看取りになる方は多いですが、ご自宅に戻られる方も3割弱おられます。緩和ケア病棟は「症状がコントロールできれば退院する」など看取りではない目的の入院にも利用可能なことも知っていただきたいです。このほか、終末期で症状が落ち着いたので「少しでも自宅に戻りたい」というご希望もあります。しかし、すぐに再入院される可能性もあり、地域の訪問看護ステーションでは短期の対応が難しいかもしれません。当院の医師が訪問診療を行い、訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所も併設しているのは、そうしたニーズにも応えるためです。また、訪問診療・訪問看護で診ている患者さんは普段の病状が分かり、緊急入院の際もより適切に迅速に対応できるメリットがあります。訪問診療では、病院および訪問の看護師、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどの多職種連携のため、独自の「退院支援シート」で情報共有を図っています。

緩和ケアを中心とした医療面での特徴を教えてください。

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外来、在宅、入院と各局面で、緩和ケアが必要な患者さんをサポートできることです。入院中や在宅療養中に急に容体が悪化されても一般病床で緊急対応できますし、そのために一般病床には緊急対応用に空床をつくるよう調整しています。最近は大学病院やがん専門病院で治療を受けつつ、痛みや苦しさのコントロールのため当院の外来を併診されるケースも増え、外来での緩和ケアも重要になってきました。病気が進んで通院が難しくなれば、主治医と相談いただいた上で、当院での入院や在宅療養に移行も可能です。当院には常勤の医師が9人在籍しており、患者さんが外来、入院、訪問診療と状況が変わっても、すべて同じ医師が診られるシームレスな診療体制なのも特徴。さらに日本看護協会がん看護専門看護師、日本看護協会がん性疼痛看護認定看護師、日本看護協会緩和ケア認定看護師など、専門性を持つ看護師もおり、適切な緩和ケアがご提供できると考えています。

地域の皆さんに緩和ケア医療についてメッセージをお願いします。

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緩和ケアは、穏やかに過ごせるようにと終末期医療のみと考えがちですが、がん治療と並行して症状マネジメントを行う役割も持っています。ただ、がん治療が高度化する中で、大学病院やがん専門病院は治療に特化し、緩和ケアは地域の医療機関で受けることも増えました。がん治療と患者さんのQOL(生活の質)の向上の両立には、医療機関の使いわけが大切です。当院には、一般病床もあり、医師が必要と判断した際は、連携をとり分子標的薬などのがん治療を継続する事も可能です。また、がんの専門病院から当院に転院されても安心していただけるよう、緊急対応にも注力しています。患者さんが治療されている病院と密接に連携し、適切なタイミングでの緩和ケアを心がけています。痛みや苦しみ、メンタル面でのつらさなどがある方は、主治医の先生にご相談ください。当院も医療機関向けの講演などを通じ、緩和ケアを地域に根づかせる活動を続けたいと考えています。

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越川 貴史 病院長

1995年日本大学医学部卒業。同大学医学部第三内科学教室入局。父の前院長が開業した産婦人科単科の越川医院(1976年より越川病院)の承継に備え、同院で診療を続けながら国立がんセンター中央病院で研修を受け、緩和ケアの重要性に着目。2001年に越川病院の法人化・診療科を変更し、地域に「がん難民」を作らないような体制作りを本格化。同院で医学生の実習を受け入れ、東京医科歯科大学緩和医療科臨床教授も務める。

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