社会福祉法人浴風会 浴風会病院
(東京都 杉並区)
雨宮 志門 院長
最終更新日:2026/03/26


医療と福祉を横断する、老年医療の拠点
東京ドームの約1.3倍に及ぶ広さの敷地に立つ「浴風会病院」。周囲には系列の介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、養護老人ホームがあり、一人ひとりの希望や状況に応じて人生の締めくくりをサポートする施設が複合的に整備されている。生活困窮者や高齢者の支援を存在意義として設立された法人に属し、「法人内の施設における医務室」から「地域に広く開かれた病院」へとその役割を広げてきた。外来も充実しており、入院患者や施設入居者はもちろん、地域住民も気軽に受診できる。2025年に就任した雨宮志門院長は、「地域の皆さんのための病院であることを、もっと多くの方に知ってほしい」と話し、訪問診療や認知症初期集中支援事業を通じたアウトリーチでの啓発にも力を入れているそうだ。同院の特徴や、その背景にある成り立ち、認知症疾患医療センターとしての取り組みなどについて、雨宮院長に詳しく聞いた。(取材日 2026年2月17日)
まずは、御院の成り立ちについてお聞かせください。

当病院が属する社会福祉法人浴風会は、関東大震災で自活できなくなった生活困窮者、特に高齢者を支援する目的で、皇室からの下賜金と一般義捐金を財源として設立された法人です。当院は、法人が支援する方々の医療的需要に対応する「施設の医務室」としてスタートし、時代とともに地域の皆さんに広く門戸を開くようになりました。現在は、地域包括ケア病棟100床、回復期リハビリテーション病棟50床、医療療養病棟49床の合計199床を有し、多彩な診療科がそろう外来と力を合わせて地域の皆さんの健康を支えています。系列の介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、グループホームなどの施設が同じ敷地内にあり、高齢の方々の事情や希望に応じた暮らしを提供できるのも当法人の特徴ですね。都心とは思えないほど緑豊かな環境も、患者さんや入居者の方、付き添いのご家族の皆さんに好評です。
外来は、どのような診療科があるのですか?

内科を中心に、精神科、整形外科、リハビリテーション科のほか、耳鼻咽喉科、眼科、歯科、皮膚科、泌尿器科などにも対応しています。また、循環器内科、呼吸器内科、代謝内科、神経内科も設置。初めて当院にいらした方は初診外来を受診後、適切な診療科につなぎます。紹介状を持たずに受診された場合でも、選定療養費は不要で高度かつ専門的な医療を提供できますから、「もう少し詳しく検査してほしい」「最適な治療を受けたい」という方は一度ご相談ください。町のクリニックを訪れるような感覚で、ふらっと受診する方が多いんですよ。一方、当院の設立背景もあってか、当院に初めて来られた患者さんに「浴風会病院では、施設の人以外も診てもらえるんですね」と言われることも少なくありません。この点については、まだまだ周知が必要ですね。
認知症疾患医療センターにも指定されていますね。

認知症疾患医療センターには、人材育成、啓発、診療の3つの機能があると考えています。人材育成は、認知症の早期診断・早期治療に向け、地域の医療・介護・福祉機関の初期対応の質を上げることが目的です。認知症医療の新しい知見と当院での実践知を共有し、地域全体の認知症への対応力を高めていきたいと思います。同様に、地域に住む皆さんやご家族に対しても、正しい知識を広めて気づきや理解を促していかなければなりません。これが啓発ですね。最後に診療は、近隣のかかりつけ医の皆さんからの診断目的でのご紹介、医療や生活支援につながりにくい難症例の患者さんのご紹介などへの対応が中心です。難症例については、できるだけこれまでと同じような生活ができるよう、認知症初期集中支援チームによる本人・家族の状態把握、受診勧奨、ケアマネジャーへの引き継ぎ、サービス利用のサポートなどを行います。
環境面や、スタッフさんの人柄も魅力の一つだと感じました。

都心とは思えないほど緑豊かな環境で、連れ立って歩く入居者や、家族と一緒に木々を見上げる患者さんの姿をよく見かけます。設立時に竣工した本館と礼拝堂は歴史的な価値が高く、散歩がてら訪れる一般の方も多いんですよ。地域社会と一体化した環境で、孤独を感じることなく療養していただけるのではないでしょうか。また、少子高齢化という社会課題と向き合い、高齢者医療に使命感とやりがいを持って取り組んでいる医師やスタッフが多いことは、当院の大きな強みですね。私も、月に1度は院内に向けて現状の課題やめざすべき方向性を発信し、より志の高い組織の構築に努めています。
最後に今後の展望をお聞かせください。

「患者さんの一生を支える地域の病院」として定着することが最大の目標です。外来診療や健康診断、物忘れ相談など、さまざまな入り口から当院とつながりを持っていただき、年齢とともに訪れる変化を豊富な医療資源で支えながら、住み慣れた地域での暮らしを守るお手伝いをしていきます。もちろん、通院が難しくなってからは訪問診療や訪問看護、デイケアなどでご自宅での生活を支え、必要に応じて法人内の施設におつなぎすることも可能です。法人内での医療部門を担いつつ、高齢期に必要な支援をシームレスに提供するためのハブの役割も果たしたいですね。また、「認知症なら、取りあえず浴風会病院へ」と思ってもらえるよう、認知症医療をより強化していくことも喫緊の課題です。認知症に関わることでお困りの際は、どんなことでもお気軽にご相談ください。

雨宮 志門 院長
1995年日本医科大学医学部卒業。2005年同大学大学院医学研究科神経・腎臓・膠原病リウマチ学博士課程修了。同大学付属第一病院内科を経て東京都立多摩老人医療センター(現・多摩北部医療センター)、日本医科大学付属病院神経内科、日本医科大学千葉北総病院内科などで勤務。2010年より浴風会病院に着任し、内科医長、内科診療部長、副院長を歴任した。2025年より現職。専門は臨床神経内科、認知症疾患。





