立正佼成会附属 佼成病院
(東京都 杉並区)
甲能 直幸 病院長
最終更新日:2022/05/24
地域のニーズに応えながら全人的医療を提供
60年以上地域に根差して活動してきた中野区を離れ、2014年に杉並区に移転した「佼成病院」。地域の中核病院として、急性期医療を中心に、27の診療科による幅広い診療を行っている。340床の病床を備え、急性期病棟だけでなく、療養病棟や緩和ケア病棟、地域包括ケア病棟など、患者の状態に合わせた入院設備を完備しているのも特徴の一つ。また、杏林大学の教育関連施設でもある同院は、「安全で質の高い医療を、多くの患者に提供すること」を使命とし、人材や医療体制においても大学と密な連携を図っている。さらに、二次救急医療機関として24時間体制の患者受け入れを行うほか、災害拠点病院としても機能するなど、地域を支える中核病院として存在感を高めている。「杉並区で信頼される病院になることが目標。そして、地域の皆さまとともに、この地域の医療を良くしていきたい」と話す甲能直幸病院長に、同院の特徴や診療方針について話を聞いた。(取材日2017年2月9日)
リニューアルにあたって、どんなことに配慮されたのでしょうか?
病院というと、どことなく「冷たい」印象がつきものですが、移転・新設にあたっては、患者さんが癒やされる空間づくりをめざしました。象徴的なのは、5階の中庭にある屋上庭園です。これは環境に適合した病院ということで、公益財団法人都市緑化機構が実施するコンクールで、「都市緑化機構会長賞」をいただきました。今後も患者さんやご家族が、院内で和やかに過ごせるよう、絵画や写真を展示する空間やオープンカフェなどをつくっていきたいと思っています。「癒やし」という意味では、月に一度、多目的スペースでプロの演奏家によるコンサートも行っています。がん末期で緩和ケア病棟に入院していらっしゃる患者さんも、ベッドで横になったまま鑑賞できるよう配慮しています。先日、患者さんが音楽を聴きながら涙を流していらっしゃる姿を目にし、「癒やし」への思いを新たにした次第です。
佼成病院の特長について教えてください。
当院には、内科、呼吸器内科、整形外科、耳鼻咽喉科をはじめ27の診療科があります。また、杏林大学の教育関連施設であることから、医師の数が比較的多く、杏林大学医学部付属病院とも密な連携体制を築いています。そのため、診療科の枠を超えた組織連携がなされ、全人的な治療を施すことができるのが大きな特長です。また、「時代のニーズに合う診療科を設置し、大学病院と同レベルの治療を提供する」こともめざしています。2016年4月に「もの忘れ専用の外来診療窓口」を設置したのもその一環。高齢化が進む中で、記憶力の低下は切実な問題ですから、地域の声に応えていきたいと思います。診療においては、整形外科での半月板損傷の手術、耳鼻咽喉科での鼻の手術など、内視鏡を使った高度な医療が充実しています。内視鏡検査の確かな技術を持つ医師も多く、内視鏡室も完備されていますので、それぞれの特性を生かした診療を行っていきたいですね。
救急対応や災害医療に関してはどのような取り組みを?
私たちは杉並区で信頼される病院となるべく、安全で質の高い医療をより多くの患者さんに提供したいと考えています。そのため、通常の診療だけでなく、二次救急医療機関として24時間体制で救急の受け入れを行うほか、災害拠点病院としても、院内の設備やシステムなどさまざまな面で、地震などの大規模災害に備えています。また、消防隊とともに救急・災害医療の知識を持つ東京DMAT(災害派遣医療チーム)にも参画しています。2015年には東京都、そして杉並区と合同で大がかりな訓練を行いました。消防署からはしご車が来て、実際に9階まで上げたり、模擬患者へのトリアージを行ったりといった幅広い分野の訓練ができました。こうした地域の安全を守る取り組みにも力を入れながら、地域医療に貢献できるよう努力していきたいと思います。
先生のご専門やプライベートについて教えてください。
私は耳鼻科の医師として、長年臨床に携わってきました。耳鼻科は、人間にとって重要な「感覚器」の診断と幅広い治療を行うデリケートかつダイナミックな診療科目です。一般的な診療に加え、私が専門とするのは主にがん診療を行う頭頸部腫瘍学で、患者さんとのコミュニケーションを大切にしながら多くの手術を行ってきました。ちなみに耳鼻科を志したのは、耳鼻科の医師だった父の影響ですね。今では息子も同じ道に進み、都内の大学病院に勤務しています。私生活では、早寝早起きを心がけ、野菜を意識して取るようにするなど、健康的な生活を送っています。以前はお酒を飲む機会も多かったのですが、今は自分のペースでたしなむようにしていますね。体を動かすことが好きなので、ゴルフをはじめスポーツは何でもやりますよ。先日、学会で行ったハワイで、透明度の高い海でイルカと一緒にシュノーケリングを楽しむ企画に参加し、非常にリフレッシュできました。
今後の展望と地域の方へのメッセージをお願いします。
日本の素晴らしい医療を外国の人たちにも提供するため、医療の国際展開をめざしたいと考えています。そこで、医療国際展開協力フォーラムに加盟し、外国人に対する診療体制やセカンドオピニオンの対応を強化するなど、幅広く国際化を図っています。また、当院は医師の指示のもとで特定の診療行為ができる看護師の育成に努めていますが、二次救急医療機関としてこうしたスタッフを増やし、救急時の対応をさらに充実させていきたいですね。当院は移転して間もないですが、杉並区の医療体制に適応し、地域の先生方との連携システムも構築していきたいと考えています。地域にお住まいの皆さまに信頼していただける病院として、各診療科のさらなるレベルアップを図っていますので、気軽に足を運んでください。患者さんの要望も積極的に取り入れられるよう努力を重ねていきますので、ご意見がありましたら遠慮なくおっしゃっていただければと思います。
甲能 直幸 病院長
1974年慶応義塾大学医学部卒業後、ニューヨーク・マウントサイナイ癌センターに留学。帰国後、都内の大学病院勤務を経て、順天堂大学医学部助教授、防衛医科大学医学部助教授などを務め、2002年より杏林大学医学部付属病院耳鼻咽喉科・頭頸科教授も就任。その後同病院長を経て、2015年より現職。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医、日本気管食道科学会気管食道科顧問。