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膝や股関節の痛み
後遺症や合併症リスク低減をめざす人工関節手術

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院

(東京都 港区)

最終更新日:2022/08/19

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  • 保険診療
  • 脱臼

加齢とともに起こりやすくなる膝や股関節の痛み。年齢のせいだと我慢をして過ごしていると、やがては歩くことが困難になるなど日常生活に支障が出ることもあるため、早い段階で整形外科を受診することが望ましいとされている。膝関節や股関節の痛みに対する治療は、薬によるものから運動療法、そして、壊れてしまった関節を人工物に置き換える人工関節手術など幅広く、患者の年齢や症状、ライフスタイルによって適した治療は変わってくる。「虎の門病院」の整形外科では、痛みの原因は何かを探り患者と相談しながら治療法を決定。患者の痛み解消とともに生活の質の改善をめざしている。そこで、副院長で整形外科部長を兼任する山本精三先生と整形外科部長の中村正樹先生に膝や股関節の痛みに対する治療の詳細を聞いた。(取材日2021年9月30日)

関節に痛みや痺れ、歩きにくさを感じたら整形外科の受診を。加齢による関節の痛みには人工関節手術が選択肢

Q整形外科の受診の目安となる症状にはどんなものがありますか?

A

膝や股関節の治療について話す、中村正樹部長

【中村正樹部長】膝や関節の痛みや痺れ、その痛みをかばうことで他の部分に支障が出ることが一つのサインになります。なんとなく重い、漠然と何か歩きにくい、歩けなくなったなど、体幹部の痛みや痺れで動きが悪くなり日常生活の動きに制約が出てきた場合は、整形外科の治療の対象となる疾患が隠れていることがあります。整形外科の領域である腰痛や脊椎の病気や、膝や関節の痛みは女性に多いのが特徴です。腰や背骨は体重を支えながら動いているため筋肉と脂肪のバランスが重要になります。そのため、同じ体重でも筋肉が比較的に大きい男性のほうが痛みが起きにくく、背骨や関節の老化が進みにくいとされています。

Q治療するとなれば、どのような選択肢があるのでしょうか?

A

【中村部長】大きく分けると手術をするかしないかになります。手術以外の方法の一つである薬による治療は、短期的なケガによる痛みや炎症を抑える目的に適してますが、加齢による関節の変形などは薬で元どおりにするのは限界があります。それらを踏まえて副作用とのバランスを見ながら、原因を解決する適切な手段を選択していきます。もう一つはリハビリテーションを含めた日常生活指導や運動療法です。どんな運動が適切かを具体的に指導しながら改善を試みていきます。ベストな治療は、患者さんが困っていること、年齢、ライフスタイル、合併症などによって変わってきます。それらすべてを総合的に考慮し、ご提案またはご相談をしていきます。

Q手術になった場合はどのように治療法を選んでいきますか?

A

治療前のカンファレンスも欠かせない

【中村部長】関節の疾患の場合、ケガと変性疾患では状況が変わってきます。ケガや急性期の変化に対応するものについてはなるべく体への負担が少なく、できるだけ早く社会復帰できるように入院やリハビリの期間を短くすることが一つのポイントとなります。特に若い人はそこから先の人生が長いので、患者さんのその後の人生においてより良いと思われる治療法を選択していきます。年齢的な変化による病気については、患者さんごとのライフスタイルや合併症によるところが大きいですが、基本的にはこちらもなるべく体への負担が少なく、早く家に帰れる、元どおりに歩けるようになるということを重視して選択していきます。

Q人工関節手術とはどのような治療なのですか?

A

【中村部長】人工関節の治療は整形外科の中で非常によく行われる手術です。変形性関節症、加齢による膝関節や股間節の痛みに用いられ、外出がままならないほどの状態の人にも行うことができます。入院期間は一般的に、膝関節は約3週間、股関節はもう少し早くて2週間ほど必要と考えられます。ただし個人差があり、もともと筋力がありある程度はつえなしで歩けていた人が想定よりも早く退院できることもあれば、もう少し時間のかかる人もいます。手術が終わってじっと寝ていたら歩けるようになるわけではないので、当院では合併症を防ぐためにも機能をより早く回復させるためにも術後早期からのリハビリを進めています。

Q先生が手術をするにあたり大切にしていることはありますか?

A

チーム医療で患者の健康を守る

【中村部長】術前計画を立てる際には、膝関節や股関節といった局所ではなく、背骨や立ち姿、歩行のバランスを考慮するようにしています。私自身が関節の手術を行うようになったのは以前からリウマチを専門にしていたからでした。10年以上前まではリウマチは良い治療法がなく関節がどんどん壊れて苦しんでいる人が多く、適切なタイミングで手術をすることの重要性を実感していました。ベストなタイミングでの治療の提供には、専門知識を持つ医療従事者としての経験が非常に生きてきます。痛いなら即手術ではなく、患者さんとよくお話しをして治療方針を決めることが大切だと思っています。

Q痛みを予防したり進行を抑えることはできますか?

A

【中村部長】患者さんの背景によってアドバイスは変わってきますが、膝関節や股関節など体重がかかる関節については、体格あたりの体重がオーバーしていると下肢の関節や腰、背骨にも負担がかかってしまうため、体重のコントロールが大切になります。標準体重をめざして少しでも体重を減らしていけるように運動療法などに取り組むのがいいでしょう。体幹や四肢についても筋肉のバランスは非常に重要です。相対的にAの筋力に対してBの筋力が弱くバランスを崩すことで痛みを生じたり、関節に負担をかけてしまうことで病気を進行させている可能性があったりする場合は、ストレッチや筋トレも適しています。

Q人工関節手術の「前方アプローチ」について教えてください。

A

人工関節手術のアプローチの違いについて語る、山本精三副院長

【山本精三副院長】従来の人工関節手術は「後方アプローチ」いって、股関節の後ろから筋肉を切開して行う手法が主流でした。対して、「前方アプローチ」は股関節前面を切開し、筋組織を切らずに行う手法です。股関節後方の筋肉も温存できるので、後方アプローチで引き起こしやすい脱臼の可能性を低減できるようになりました。当院では2012年から前方アプローチを取り入れ、近年では、両側同時に行う症例も増えてきました。侵襲が少ないため、術後のリハビリがスムーズなのもメリットです。意欲にもよりますが、手術後に見違えるような成果につながる患者さんも少なくありません。

患者さんへのメッセージ

山本 精三 院長補佐 兼 整形外科特任部長

1982年東京大学医学部卒業。同大附属病院整形外科医局長などを経て、2008年から虎の門病院整形外科部長、2018年から副院長、2022年より整形外科特任部長と院長補佐を兼担。ライフワークは、前方アプローチの人工関節置換術。現在までに多くの症例を手がけ、両側同時症例も増加。外来では食習慣や運動習慣をまとめた「山本5原則」を患者に説き、できる限り自己関節を使い続けられるよう導いている。

中村 正樹 整形外科部長

1997年東京大学医学部卒業。2008年東京大学大学院医学系研究科外科学専攻卒業。東京大学医学部附属病院、茨城県立中央病院、NTT関東病院、湯河原厚生年金病院、国立国際医療センター、東京都立広尾病院での勤務、横浜労災病院人工関節センター副センター長、帝京大学医学部附属病院整形外科准教授および股関節診チーフを経て、2019年虎の門病院に勤務、現職。専門は関節疾患の診断と治療。

【山本副院長、中村部長】困っていることや痛みがあれば遠慮なく受診してください。治療は決して手術が前提ではありません。手術も薬も必要なければ、日常生活の中で症状を改善につなげられることもあるので、ご相談いただくことが治療の第一歩になると思います。当院では人工関節のほかに脊椎分野での内視鏡手術や骨粗しょう症の診断・治療にも力を入れています。内分泌内科の骨代謝の専門家との協力で、ホルモンバランスの乱れから起こる骨粗しょう症など治療の難しいものにも対応しています。また、がんの骨転移も手術をすることで、骨折や寝たきりの予防や麻痺の改善を図ることも期待できます。そういったことにも幅広く治療を行っています。

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