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白血病やリンパ腫など血液がんを治療
臍帯血の移植を積極的に導入

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院

(東京都 港区)

最終更新日:2022/08/16

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  • 保険診療
  • 悪性リンパ腫
  • 白血病

通常の抗がん剤治療や放射線治療では完治が難しいとされる白血病や悪性リンパ腫など、血液がんに対する治療の一つである造血幹細胞移植は、白血球や赤血球、血小板を作り出す造血幹細胞を移植することで健康な血液を作り出すことができるようにするための治療法だ。造血幹細胞は骨髄や臍帯血、末梢血に豊富に含まれており、これらを用いた移植をそれぞれ「骨髄移植」「臍帯血移植」「末梢血幹細胞移植」という。移植はさまざまな治療で効果が期待できない人に希望を与える医療である一方、合併症や長期にわたる副作用もあり、簡単な治療ではない。そこで、造血幹細胞移植に注力する病院として移植の相談から治療、その後のフォローまで総合的に取り組む、血液内科部長の内田直之先生に、治療の詳細を聞いた。(取材日2021年9月27日)

難治性血液がんに対して有用な治療法。適切なタイミングでの移植と長期フォローで患者を支援

Q造血幹細胞移植とはどんな治療ですか?

A

造血幹細胞移植について語る、内田直之部長

白血病やリンパ腫など血液がんは基本的には抗がん剤による治療になりますが、薬の治療では治癒が望めない患者さんに対し、健康な血液を作れるようにする目的で行うのが造血幹細胞移植です。私たちは他の方法では治らなかった人たちに希望を与えるという思いで、1990年の初め頃から移植を開始し、2003年に谷口修一先生が赴任されて以来件数は年々増加、他院で治療が難しいと言われた人も多く受け入れています。移植は長期にわたる治療で、入院期間は3ヵ月ほどですが、退院後は外来通院の必要があるほか、半年または1年単位で入退院を繰り返すこともあるため、当院では移植からその後の長期的なフォローまで総合的に対応しています。

Q移植をすれば白血病などの血液のがんは治せるのでしょうか?

A

移植をすれば簡単に治癒が見込めるというものではありません。移植の合併症で亡くなってしまう人もいるほか、移植後再発する人もいるため、治すことばかりを考えてできる治療ではないのです。だからこそ患者さんが治療をきちんと理解した上で、移植するかどうかを選んでいただくことが非常に重要になります。患者さんが移植をしたらどうなるかやってみるまでわからない中で、とにかくすべての情報を与えて「あとはあなたが選んでください」というのは結局、できないことを相手に押しつけるようなもの。移植を選ぶのも選ばないのも大きな決断になるので、その決断に私たちは共感し、納得して選んでいただけるようにすることを心がけています。

Q血液内科の診療で大切にしていることは何ですか?

A

内田部長と谷口修一副院長。患者にとって適切な治療を行うという

谷口先生の作った「生きたいに応える責任」という言葉、これが根本です。この人は高齢だから、腎臓の機能が悪いからと頭から移植を勧めない病院も多いと思いますが、私たちはある程度の生活ができるようにサポートした上で、病気が悪化し移植をしたほうが患者さんにとってメリットがあると思えば、移植をご提案しています。治すことばかりを考えていると移植は少しでも早いほうがいいということになりますが、いたずらに移植を行うと合併症で不必要に生きる期間を奪ってしまうことも。患者さんが本当に知りたいのは、過去のデータではなくそれをどう自分に当てはめ医学的にどうすればよいかということ。それに応えるのが私たちの使命です。

Qこちらでは臍帯血移植を多く行っていると伺いました。

A

血液移植には、大きく分けて骨髄移植、臍帯血移植、末梢血幹細胞移植の3種類があります。当院の移植トータル件数は134件で(2020年1月〜2020年12月)、アメリカや中国の施設と比べるとそれほど多くありませんが、そのうち約7割が臍帯血移植になります。骨髄移植や末梢血幹細胞移植は生きたドナーにお願いをして日程調整をした上で移植日を決めるため、どうしても時間がかかってしまいますが、臍帯血移植に使用する臍帯血は凍結保存してあるため通常は1ヵ月弱で手に入ります。移植が必要と思ったところから準備を始めても間に合うことから、当院では臍帯血移植を積極的に導入しています。

Q臍帯血移植のメリット・デメリットを教えてください。

A

メリットは、骨髄バンクからの移植の場合は半年間病気が落ち着いていることが条件ですが、臍帯血移植はどんな人でも可能なことです。また骨髄移植はHLAという白血球の型を検査し8個あるうち8〜7個が適合する必要がありますが、臍帯血は少し違っていても移植できます。それから、人の白血球が体内に入るのでなじむまで拒絶反応を起こし肝臓や消化管が悪くなることがありますが、臍帯血の場合は赤ちゃんからもらうものなので大人のものより早くなじみ、反応が起こりにくいといわれています。デメリットは、移植された細胞が白血球を作るまで約3週間かかってしまうことです。その間、白血球はゼロの状態なので感染症を起こしやすくなります。

Q退院後のサポート体制についても知りたいです。

A

チーム医療で、治療から移植後まで長期間にわたりサポートする

白血病は病気が治った後も長い期間拒絶反応が起こるため、皮膚が硬くなる、関節が曲げにくくなる、口の中が乾くといった症状のほか、女性の場合は性交痛がひどくなったり、生理がなくなるなど、表立っては言いにくい悩み事や困り事が起こります。そこで当院では、造血幹細胞移植推進拠点病院として移植後長期フォローアップのための外来を開設し、専門の医師や、看護師、移植コーディネーターや管理栄養士などが移植後の合併症に対する薬やケアのアドバイスをしています。主治医は病気が再発しないようにフォローをしていきますが、それにプラスして今後の生活の質が向上するように10年以上前から取り組んでいます。

患者さんへのメッセージ

谷口 修一 前副院長 兼 血液内科特任部長

1984年九州大学医学部卒業。2年の研修後、同大学血液グループに配属。1993年米国テネシー州バンダービルト大学留学中も含めて、一貫して造血幹細胞移植の研究に従事。1987年頃、九州大学病院で骨髄移植を開始。2003年虎の門病院血液内科に赴任し、臍帯血移植の研究を進める。日本血液学会血液専門医。2003年より血液内科部長、2018年より副院長を務め、2022年より現職。

内田 直之 院長補佐 兼 血液内科部長

1993年九州大学医学部卒業。1995年同大学血液グループ配属、造血幹細胞の生物学的特性の研究に従事する。1999年カナダへ留学。帰国後は愛媛大学でさらに研究を重ね、2005年から虎の門病院勤務。2017年から血液内科部長に就任し、2022年より院長補佐を兼担。日本内科学会総合内科専門医、日本血液学会血液専門医。

【谷口修一副院長、内田直之血液内科部長】移植をするかどうかなど何かお悩みがある方はぜひご相談ください。当院では月〜金曜日の毎日血液内科の医師による外来診療を行っています。セカンドオピニオンであれば時間をかけて外来よりももう少し詳しいお話もでき、病気への理解も深められると思います。私たちは目の前の患者さんにとって最も良い治療を提供したいと考えていますが、決してこちらから一方的に押しつけることはしません。一緒に模索しながら、良いところに落ち着けるように、一緒になって医療をつくっていくというスタイルでの診療を行っています。

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