全国の頼れる病院・総合病院・大学病院を検索
病院・総合病院・大学病院7,983件の情報を掲載(2024年4月20日現在)

  1. TOP
  2. 東京都
  3. 港区
  4. 虎ノ門駅
  5. 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院
  6. 早期の介入・治療開始が重要 認知症、フレイルなどの老年症候群

早期の介入・治療開始が重要
認知症、フレイルなどの老年症候群

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院

(東京都 港区)

最終更新日:2022/11/18

20221019 main20221019 main
  • 保険診療
  • 認知症
  • 嚥下障害(摂食嚥下障害)

国内の生産年齢人口が年々減少し、総人口に占める高齢者の割合が増加し続ける超高齢社会において、日常生活に制限なく暮らせる「健康寿命」の延伸は喫緊の課題となっている。いかに健康に気を使っていても加齢とともに身体機能が衰えていくことは否めない。大病への移行や寝たきりを防ぐため、変化を早期に察知して適切な予防、治療につなげていくことが重要だろう。一方で、高齢者は慢性的な病気を多く抱えており、縦割りの診療では対処しきれないことも多い。そこで、加齢によって起こるさまざまな症状のうち、医師の診療や看護・介護を必要とするものを「老年症候群」と呼び、総合的に診療することの重要性が高まっている。老年症候群、フレイル、認知症などを専門とする廣瀬大輔医長に話を聞いた。(取材日2022年7月27日)

加齢で身体機能や認知機能が低下する老年症候群。患者を総合的に診て社会的支援とのつながりまでサポート

Q老年症候群について教えてください。

A

症例を交え老年症候群について語る、廣瀬大輔医長

老年症候群は、加齢とともに起こり、日常生活に支障を来す多様な症状や兆候の総称です。例えば、食事をしたり飲みものを飲んだりするときにむせて飲み込みに苦労する摂食・嚥下障害、集中力の低下、歩行障害などが挙げられます。認知症の兆候である物忘れなども含まれますが、本人は無意識であることが多く、家族がなんとなくこれまでとの違いを感じて病院に連れてきたり、職場などで仕事のミスが続いて不安になったりして受診するケースが多いですね。これまでとは違う状態や兆候があり、看護・介護が必要であれば老年症候群に含まれていくでしょう。

Qフレイルやサルコペニアも、老年症候群に含まれるのでしょうか。

A

加齢に伴って心身が衰えることを「フレイル」、筋肉量が減少したり低下したりすることを「サルコペニア」といい、いずれも75歳以上の高齢者が要介護状態になる可能性が高い老年症候群の一つです。フレイルは、慢性疾患の影響などが複雑に絡み合って生活機能が低下し、健康にさまざまな影響を及ぼす可能性が高くなった状態ですが、早期に介入すれば状態の改善や進行の予防をめざすことも可能でしょう。また、フレイルやサルコペニアは、認知症につながる可能性が高いことにも注意が必要です。フレイルは運動機能に加えて認知機能も低下しますし、サルコペニアは些細なことでケガをして入院し、認知症を引き起こす場合もあります。

Q老年症候群の疑いがあるとき、どのように調べていくのですか?

A

まずは、「今の状態」を総合的かつ多角的に把握・診断していき、治療の手立てがある疾患については適切な診療科につなげていくことが重要です。歩きにくい、ふらつく、めまいがする、耳鳴りがする、寝られない、といった主訴からは多様な疾患が考えられますから、患者さん自身、およびそのご家族のお話からADLを把握するほか、当部では老年内科、精神科、循環器内科、糖尿病内科、整形外科やリハビリといった異なる強みを持つ医師が患者さんを総合的に診て評価していきます。状態に応じて、血液検査、MRI、心電図、レントゲン、認知症が疑われる場合は、認知症部門とも協力しつつ脳の血流などを調べることもあります。

Q治療法を教えてください。

A

診療科の垣根を越えて連携をし、改善をめざすという

明確な疾患があればその治療を行っていきます。フレイルは院内に対策チームを設け、身体的な虚弱だけでなく認知症やうつといった精神的な部分にも配慮しながら進めていくのが特徴ですね。早めに介入できれば、持病のコントロールをしながら十分な栄養を取り、適度な運動をしていくことで投薬等の治療が不要なケースも多いです。サルコペニアも、病態に応じた対応策を検討し、場合によっては入院による治療をして改善を図ることも。認知症については、治療法のある脳外科疾患などを除き、症状の進行を抑えていくことと周辺症状のケアを認知症の部門と連携して行いながら、元気に過ごせる期間を長く維持できるように生活の仕方を考えていきます。

Q日常生活で意識できる予防法はありますか。

A

一般的にいわれる「良い生活」は、老年症候群の予防にもいいでしょう。生活習慣病になると脳血管障害を含め、認知機能への悪影響が考えられます。フレイル・低栄養な方も多く、医師の特別な指示がなければタンパク質を意識した多めの栄養摂取、適切な運動が重要です。また、趣味でも仕事でも、楽しいと思える何らかの興味の対象を見つけることもとても重要です。何らかの形で、人とつながる場を設けるといいですね。私がいつも患者さんやご家族にお伝えしているのは、「楽しく過ごしてほしい」ということ。年齢とともにできないことが増えていくのは当然ですが、今できること、今やりたいことに積極的に取り組んで日々を楽しんでいきましょう。

Q虎の門病院ならではの特徴はありますか。

A

総合的に診療を行い、個別提案を行うという

総合病院の特性を生かして、診療科や職種の枠を超えたドクターやコメディカルがチームを組み、患者さん全体を診てどうアプローチすべきかを考えていることです。ソーシャルワーカーにも入ってもらうので、身体的な問題だけでなく心理的、社会的な側面にも配慮できる点は当院ならではの強みだと思います。いざというときは、速やかに専門的な医療につなげられるのも良い点ですね。

患者さんへのメッセージ

廣瀬 大輔 高齢者総合診療部医長 兼 老年内科医長

2012年東海大学医学部卒業。2014年東京医科大学高齢総合医学分野入局。東京医科大学八王子医療センター助教、東京医科大学高齢総合医学分野(高齢診療科)助教を経て2022年より現職。高齢者の介護・看護では、家族だけで抱え込むケースが多いことを懸念。「誰かを頼るのは悪いことではない。上手に周りと関わって」と訴える。日本老年医学会老年病専門医。

老年症候群は、高齢者の誰もがなり得るものです。身体や心の調子おかしいと感じたら早めに相談しましょう。また、老年症候群と思われる患者さんや、認知症を発症した患者さんを、家族だけで見ているケースは少なくありません。患者さんの希望だったり、家で診てあげたいというご家族の意思だったりすると思いますが、「人に頼る」「上手に楽する」ことは悪いことではないと知っていただきたいです。家族だけで高齢者の介護をしていくことで、ご家族の生活が犠牲になっていく可能性が高いからです。デイサービスなどを活用しながら、皆で診ていきましょう。社会的なサービスとのつながりも含めて支援していきますので、ぜひご相談ください。

access.png