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QOLを下げることなく
末期腎不全の根治をめざすための腎移植

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院

(東京都 港区)

最終更新日:2022/08/19

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  • 保険診療
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腎臓機能が低下し末期の腎不全となった場合に用いられる血液透析、腹膜透析、腎移植などの腎機能代替療法。中でも腎移植はQOLの高い治療として確立され注目度も高い。腎移植には親族から腎臓を受け取る生体腎移植と、第三者から心停止や脳死後に腎臓を提供してもらう献腎移植の2種類があるが、国内では前者が多く行われており、移植を受ける患者はもとより、ドナーの負担軽減を考えた手術が望まれている。「虎の門病院」では、これまでも多くの腎移植を行ってきた。そこで、同院の腎臓センター外科部長の石井保夫先生に、腎移植の概要について聞いた。(取材日2021年10月5日)

ドナーの善意で成り立つ腎移植。移植を受ける患者だけではなくドナーに負担をかけないことも大切

Q腎移植は誰でも受けられるのでしょうか?

A

血液透析(HD)のスタッフによる強力なサポート

基準として移植を受ける人は70歳までで、70歳以上の人は健康状態を考慮した上での判断になります。ドナーになる人は80歳までとしていますが、これは片方の腎臓を提供することで腎機能が低下し透析になるのを避けるためで、こちらも個々の状態を見極めていくことが重要になります。腎移植は基本的には腎臓以外は元気な人を対象にしていますが、移植を希望する人の中には、心臓が悪く心筋梗塞の治療をした人もいれば糖尿病で目や血管が悪い人もいます。そこで当院では総合病院の強みを生かして、消化器内視鏡検査やがんのスクリーニング、眼科での目の状態の把握、そして最も重要な心機能を評価した上で、移植が可能かを検討していきます。

Q他の腎機能代替療法と比べて腎移植のメリットは何ですか?

A

末期の腎不全になった人の治療の選択肢は透析か移植をするかですが、血液透析を選択すると、週3回各4時間程度の拘束が続くため、生活に大きく影響していきます。食事や水分の制限のほか、旅先でも透析が必要ですので旅行も気軽にできず激しい運動もできません。一方で、腎移植はドナーがいないと成り立たないため、皆が簡単に受けられる方法ではありませんが、術後は生活への時間的な拘束はなく、運動もでき自転車にも乗れるでしょう。免疫抑制剤はずっと飲み続ける必要はありますが、それ以外は健康な人とほとんど同じ生活が送れるのが大きなメリットです。女性であれば移植した後は妊娠・出産を望むことも可能です。

Q移植することのデメリットはあるのでしょうか?

A

腎臓センターを支える透析室

1つは肺炎、尿路感染症、帯状疱疹など感染症のリスクが高まることです。免疫抑制剤を使用しますので、免疫のバランスを保っていくことが重要になりますが、これについては定期的に受診していただき確認することで概ね問題はないでしょう。もう1つは、残念ながらすべての腎臓が30年、40年と持つわけではなく、移植をしても一生ものでないということ。移植した腎臓がまた悪くなったら透析に戻る選択をしなければならないのはデメリットの1つでしょう。しかし免疫抑制剤は次々と開発されていますし、透析の方法も改善されていくなど、腎臓を管理していく条件は進歩してきていますので、移植の長期成績についても今後は期待されるでしょう。

Q移植を決定した後の流れを教えてください。

A

まずは術前検査をして早ければ2~3ヵ月後に手術を予定しますが、手術の時期については患者さんやご家族の都合など個人的な希望もお聞きしながら決めていきます。手術をした後は1ヵ月ほど入院が必要になり、退院後は2週間に一度通院していただきます。社会復帰については職種にもよりますが、最初は免疫抑制剤を飲んでいるため、手術後2ヵ月ほど休んでいただき、それから出勤し始め、負荷の少ない仕事からスタートしていくというのが基本の流れになりますが、それからの生活は手術前とそれほど変わることはないと思います。

Q貴院では腎臓内科と連携して慢性腎不全の治療を行うそうですね。

A

石井先生と緊密な連携を図る腎臓内科の長谷川先生

透析になる前の保存期の患者さんを診ている腎臓内科との連携で、慢性腎不全のトータルコーディネートを行っており、腎臓センターでは、腎移植のほか腹膜透析の患者さんへのカテーテルの挿入手術や、血液透析における内シャント造設術、動脈表在化術、人工血管移植術といったバスキュラーアクセス手術なども行っています。また他院で透析をしている人が移植をするために当院へ紹介されてくるケースもあります。他の医療機関からご紹介されて当院へいらっしゃる場合も、ご本人と会って丁寧に相談をした上で移植をするかどうかを判断していきます。

Q移植をする際、心がけていることはありますか?

A

腎不全の人は腎臓をもらいたいと思い、ドナーは腎臓をあげるという意思があるからこそ移植を検討されるわけですが、移植において一番負担が大きいのはドナーです。そのため私たちは親族がドナーになる場合は、ドナーに過度なプレッシャーをかけないように気をつけています。その人が少しでも迷っていたり、あまり乗り気ではないと感じたときには、コーディネーターや私たちが面接をしたり、第三者である精神科の先生に意思確認をしてもらうなどしてから、最終的には強制や金銭授受がないかなども調べて結論を出していきます。移植には患者さん本人の健康状態が大前提となりますが、私たちはドナーが善意で提供してくれているかも重視しています。

患者さんへのメッセージ

石井 保夫 腎センター外科部長

1993年徳島大学医学部卒業後、東京女子医科大学腎センターに入職。2016年より現職。専門は腎移植、腎不全外科、一般外科、腹腔鏡下手術。日本外科学会外科専門医、日本透析医学会透析専門医。

腎移植については、実際に移植をするかしないかに限らず広くご相談ください。腎臓センターでは移植コーディネーターが窓口となって丁寧に対応していますので、わからないことはまず、聞いていただければと思います。虎の門病院分院からは、多発性嚢胞腎の治療の後に移植を希望される患者さんが当院に紹介されてきますので、手術を受けられる方もいらっしゃいます。このように慢性腎不全をはじめ専門性の高い腎臓の病気に取り組んでいますので、近隣の方だけではなく、ぜひ遠方の方にも頼りにしていだきたいです。

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