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手術後の機能温存と根治をめざす
前立腺がんのロボット支援手術

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院

(東京都 港区)

最終更新日:2022/08/16

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  • 保険診療
  • 前立腺がん
  • 尿失禁
  • 膀胱がん

泌尿器科の手術領域は極めて狭く、排尿や性機能に関わる重要な神経や血管が数多く通る繊細な場所だ。「虎の門病院」の泌尿器ロボットセンターでは、前立腺がんをはじめ腎臓がん、膀胱がんなどに対して、手術支援ロボットを用いた低侵襲な手術を積極的に行っている。中でも、高齢化や食生活の変化で急増する前立腺がんについては、前立腺全摘除出術のほぼすべてをロボット支援手術で施行。これにより、従来の開腹手術において大きな課題とされてきた、術後の機能温存と根治の両立がめざせるようになった。ロボット支援下で行う前立腺がん手術とはどのようなものなのか、なぜ多くのメリットが期待できるのか、気になる疑問を泌尿器ロボットセンター部長の浦上慎司先生に聞いた。(取材日2021年9月24日)

ほぼすべての前立腺全摘除出術にロボット支援手術を施行。患者の人生観に沿った、納得感のある治療をめざす

Q前立腺がんに対する治療法には、どのようなものがありますか。

A

前立腺がんの治療法について語る、浦上慎司先生

前立腺がんは生存率が非常に高いがんとされ、早期発見、早期治療で完治をめざすことも可能です。悪性度が低く腫瘍が小さい場合は、経過を見守る監視療法の選択もあるでしょう。積極的な治療を行う場合、がんが限局的なら手術療法や放射線療法、転移があれば薬物治療に手術治療や放射線治療を組み合わせて根治に近づけます。手術療法を選択する場合、前立腺と精嚢を切除し残った尿道と膀胱をつなぐ前立腺全摘出手術が基本で、手法は3つあります。1つ目は従来の開腹手術。2つ目は腹部に数ヵ所の小さな穴を開けてカメラや器具を入れ、モニターを見ながら行う腹腔鏡下手術。3つ目がロボットを用いて腹腔鏡下手術を行うロボット支援下手術です。

Qロボット支援手術の対象となるのは、どういった場合ですか。

A

当センターでは、前立腺がんの手術治療のほぼ全例をロボット支援手術で行っています。局所で進行したがんでもロボット支援手術を行い、術後に放射線治療や薬物治療をして再発や転移のリスク低減を図るなど、他科との協力による集学的な治療を行えるのも当院の強みの一つ。最近では前立腺から離れた臓器に転移が見つかった際も、その場所や転移の数によってはホルモン療法や化学療法と組み合わせて手術や放射線治療を行い、より再発を遅らせて根治に近づけることがめざせるようになりました。

Qロボット支援手術のメリットを教えてください。

A

手術では根治性と機能温存の両立を図り、患者の負担を軽減する

前立腺の手術領域は極めて狭いため、手術中に尿道括約筋や勃起神経が傷つき、術後に尿失禁や性機能障害といった合併症が出る可能性が高いことが大きな課題でした。根治をめざしつついかに侵襲を抑え、機能を温存するかが問われる中で、登場したのがロボット支援手術です。ロボット支援手術は、人間の手の代わりにロボットアームが自在に動いて、狭い空間でもしっかりがんを取り切るよう働きます。医師は3Dカメラの鮮明な画像を拡大して見ながらロボットアームを動かすことができるので、手ぶれも少なくなり、神経や筋肉を傷つけるリスクが大きく減りました。根治性と機能温存の両立が期待できるのが最大のメリットだといえるでしょう。

Qこちらのロボット支援手術には、どのような強みがありますか。

A

複数の部門で迅速に協力して治療を行うことが強みだ

第一に、腹腔鏡手術を黎明期から多く手がけてきたノウハウと経験があることです。腹腔鏡手術の利点をそのままに、さらに進化したロボット支援手術においても、蓄積した知見は大きく役立っています。第二に、各診療部門が垣根なく協力し合って、一人の患者さんを診る風土が院内に醸成されていることです。例えば、前立腺がんが進行して直腸に達した場合、下部消化器外科をはじめとした各診療部門の協力が欠かせません。こうした場合、関連する診療部門に一声かけるだけですぐに協力が得られ、患者さんの負担を減らすために同時に手術を行うなどの柔軟な対応が可能です。

Qロボット支援手術において心がけていることを教えてください。

A

「取るべきものは確実に取り、残すべきものはしっかり残す」ということですね。尿失禁も性機能障害も、QOLはもちろん患者さん自身の尊厳に関わる重大な合併症です。特に性機能障害は、機能を実際に活用するか否かに関わらず、患者さん自身が「残したい」と強く希望されることが少なくありません。年齢などで画一的に判断するのではなく、患者さんの意思に寄り添った手術ができるよう努めています。

患者さんへのメッセージ

浦上 慎司 泌尿器ロボットセンター部長

1994年島根医科大学医学部医学科卒業。同大大学院卒業後、同大泌尿器科学教室助手・講師。「去勢抵抗性前立腺がんの発生機序の解明とその治療法の開発」に取り組み、日本における去勢抵抗性前立腺がんに対するタキサン系抗がん剤の導入に尽力した。カリフォルニア大学サンフランシスコ校への留学を経て、同大医学部講師、がん研有明病院泌尿器科医長。2014年より虎の門病院勤務。2020年より現職。

高齢化や食生活の変化などを背景に、前立腺がんは近年著しく増加しています。当センターでは、根治性を追求した、性機能や排尿機能も温存しやすいロボット支援手術で、術後のQOLにもこだわった治療を行っています。高齢であることや、他の疾患があることを理由に他院で手術が困難と言われた方でも、各領域のプロフェッショナルがそろっている当院であれば手術できる場合がありますので、諦めずにぜひご相談ください。どんなときも患者さんを中心に、その人生観、宗教観、社会的立場などに配慮した個別最善の医療を提供すべく力を尽くしてまいります。

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