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  6. サブタイプとステージの進行度によって異なる 乳がん治療

サブタイプとステージの進行度によって異なる
乳がん治療

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院

(東京都 港区)

最終更新日:2022/08/19

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  • 保険診療
  • 乳がん

今や、国内女性の9人に1人が罹患するといわれるほど、女性の中での罹患率が上がってきている乳がん。治療法についても日進月歩で進化しており、多くの治療が副作用を軽減しながら行えるようになってきた。「治療のトレンドを把握し、その時代になし得る最善の医療を提供できるように」と、乳腺・内分泌外科部長の川端英孝先生。細分化された治療を医療の専門家以外が完璧に把握することは困難だが、自分や家族の病気に関することをできるだけ知っておきたい、詳しく調べたいと考えるのは当然だとして、丁寧な説明を心がけているそうだ。今回は、「サブタイプ」と「ステージ」に基づいて決定する乳がん治療の概要について教えてもらった。(取材日2021年10月1日)

乳がんの性質を示す「サブタイプ」を見極め、進行度と合わせて治療法を検討することが個別最適化の鍵

Q乳がんの治療方針は、何によって決定するのですか。

A

乳がん治療について語る、川端英孝部長

サブタイプと進行度です。サブタイプについて、少し詳しく説明しましょう。乳がんは、ホルモン受容体とHER2(human epidermal growth factor 2)、がん細胞の増殖活性によって、ホルモン受容体陽性・HER2陰性群、HER2陽性群、トリプルネガティブ群に分けられます。同じ乳がんの診断名でも、サブタイプが違えば適した薬物療法が異なるため、サブタイプを確認することから乳がんの治療はスタートします。

Q治療法を決定する上で、サブタイプはとても重要なのですね。

A

例えば同じウイルス性肝炎でも、A型、B型、C型、D型、E型とさまざまな型があって、それぞれウイルスの特徴や進行の仕方、治療方法が異なりますよね。乳がんも同じです。まずは、がんの本質ともいえるサブタイプを見極めなければ、効果のある治療に結びつけるのは難しいです。遠隔転移がないことを前提としてお話しすると、ホルモン受容体陽性の場合はホルモン療法を行い、一部の患者さんには化学療法を実施。HER2陽性の場合は、分子標的薬と化学療法を併用します。トリプルネガティブの場合には、化学療法が選択されることがほとんどです。

Q薬物療法は、なぜ行われるのでしょう。

A

患者に納得してもらえるまで一人ひとりに向き合っていく

薬物療法は、転移や再発を防ぐ目的で行います。手術、放射線治療を行って、10年たって再発するケースを考えてみると、初回の治療時に既に転移が存在していて、それが年月を経て顕在化してきたものと考えられます。転移は、早期に治療できれば一定の割合で薬物療法での完治も見込めるものですが、長い時間がたって遺伝子変異が確立したものは完治が難しくなってしまいます。こうした事態を防ぐために、初回の治療でしっかり薬物療法を行い、隠れたがんを制圧していくことが重要なのです。

Qサブタイプに進行度が加わると、治療法はどのようになりますか。

A

進行度、いわゆるステージは、しこりの大きさや、リンパ節への転移の有無、遠隔臓器への転移の有無などによって0期、I期、II期(A、B)、III期(A、B、C)、IV期に分類されます。こうした進行度の指標と、サブタイプを組み合わせてがんを診ることで、がんはさらに細かく分類され、一人ひとりに合った治療法と治療薬を選択していくことができるようになります。また、将来的な妊娠を希望しているのか、遺伝性乳がん卵巣がん症候群の疑いがあるのか、といった個別の状況によっても、治療の進め方が異なります。

Qがんゲノム医療について教えてください。

A

先進の治療法について語る川端英孝部長

がんゲノム医療は、採取した腫瘍に含まれる多数の遺伝子を同時に調べて、個別に最も効果が見込まれると考えられる薬剤を選択して投与していく治療法です。乳がんに対して具体的な治療薬を提案できる可能性はまだそれほど高くありませんが、これまで臓器別に決定してきた薬物療法が、遺伝子の変異から検討できる点には注目すべきでしょう。他の治療を既に試して効果が見られない方などに有用な治療方法が見つかることも期待されます。

患者さんへのメッセージ

川端 英孝 乳腺・内分泌外科部長

1988年東京大学卒業。東京大学医学部附属病院第2外科助手、JR東京総合病院外科医長などを経て2006年虎の門病院乳腺・内分泌外科部長として赴任し、現在に至る。2011年~2018年東京大学医学部非常勤講師、2019年より埼玉医科大学国際医療センター乳腺腫瘍科非常勤講師を兼任。これまでに多くの乳がん患者の手術を担当。日本外科学会外科専門医、日本乳癌学会乳腺専門医。

乳がんは術後の経過観察が長い病気ですから、治療中も、治療を乗り越えた後も患者さんが希望をもって生活していけるよう、納得いくまでお話しして治療方針や治療方法を選んでいくことが大切です。当科では、患者さんがどのような乳がんのタイプであり、どのような治療法が適しているのかを丁寧にお話しし、患者さんが大切にしたいことを伺いながら治療法を検討してまいります。将来妊娠を希望する患者には、産婦人科と連携して妊孕性温存治療を行っていくことも可能ですので、まずはどんなことでもご相談ください。

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