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手術後の後遺症低減をめざす
腹腔鏡手術による直腸がん治療

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院

(東京都 港区)

最終更新日:2022/08/16

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  • 保険診療
  • 大腸がん

肛門に近い場所にある直腸のがんは、開腹手術が主流だった時代には大きく肛門ごと切り取られ、患者は永久的に人工肛門をつけて生活することを余儀なくされていた。腹腔鏡手術の普及が進んでいる今、直腸がん治療の大きな目標は肛門温存と自律神経の温存だ。「虎の門病院」の消化器外科では、直腸がんをはじめ大腸がんのほとんどの症例で腹腔鏡手術およびロボット支援手術を実施。がん治療における根治性と機能性の相反する2つの両立をめざした医療を実践しているという。そこで、大腸がん手術のリーダーである副院長の黒柳洋弥先生に、先端の直腸がん手術についての詳細を聞いた。(取材日2021年9月14日)

早期であれば内視鏡治療も可能。進行がんでは術前化学放射線療法を導入し肛門温存と局所再発防止をめざす

Q直腸がんとはどのようながんなのでしょうか?

A

進行直腸がんの内視鏡写真

直腸は大腸の一部分で肛門から約15cmの所になります。他の大腸は水を吸収し便を作る働きをしますが、直腸は肛門括約筋とともに便をためるという働きをしています。直腸がんの主な原因は大腸がんと同じく食事の欧米化だといわれていますが、大腸がんにない症状として、肛門に近いため真っ赤な血便が出るということがあります。出血はご本人にもわかりやすい症状の一つですが、それを見逃してしまうと腫瘤がどんどん大きくなっていきます。そうすると人間の体はそれを便だと思ってトイレに行きたくなる、だけど、当然便が出ません。このように何度もトイレに行くという症状があるときは、直腸がんが進行していることを疑います。

Q直腸がんが発見されたらどのような治療をするのでしょうか?

A

同院では98%を低侵襲な鏡視下手術で行っている

がんが粘膜だけにとどまっている早期の段階であれば内視鏡での治療が可能ですが、時間がたち、がんが粘膜下層以下の深部に入り込んでしまったときは手術になります。がんの怖いところは、途中にある血管やリンパ管という通路を通って転移することです。血管に入るとがんは大腸から肝臓や肺に流れ肝転移や肺転移を起こします。ただ、直腸にできたがんが肝臓や肺にたどり着くのは海を渡って外国に行くようなもので簡単ではないため、ごく早期の浅いうちに見つけることができればそれほど転移の確率は高くありません。リンパ管に入ってしまったがんは近くのリンパ節に転移しますが、これは手術でリンパ節転移も一緒に切除することが可能です。

Q手術前に治療は必要ですか? どんなことをするのですか?

A

化学放射線治療の際の内視鏡写真

早期の場合は必要ありませんが、進行がんの場合は術前に化学放射線療法を行います。直腸がんは周囲に骨盤(骨)、血管、神経、膀胱や前立腺があるため広く切除することができません。そのため直腸がんでは、術後にがんが顕微鏡レベルで残ってしまうことで起こる局所再発が問題でした。そこで、局所再発を減らすために術前に化学放射線療法を行い、患部を小さくし手術の際の剥離ラインを内側に持ってこられるようにするのです。実際にこの化学放射線療法を導入することで、それまで残すことの難しかった肛門や神経の温存もめざせるようになりました。

Qこちらの病院での手術の特徴を教えてください。

A

定期的にカンファレンスを開き治療方針のディスカッションを行う

当院では直腸がんをはじめ大腸がんのほぼ全例で、腹腔鏡手術およびロボット支援手術を導入しています。大腸がんは体の浅い所で手術を行うため開腹手術が適している面もありましたが、直腸がんは狭い骨盤内での手術となるため、開腹手術では奥のほうがトンネルのように見えづらく、ある意味手探りで手術をしているようなものでした。それに比べて腹腔鏡手術は狭い所でも明るい視野で拡大されて見えるので、より安全性に配慮した正確な治療をめざせるようになりました。いまや直腸がん手術における腹腔鏡は非常に重要なものとなり、腹腔鏡手術の利点を特に生かせるのは直腸がん手術だと言ってもよいでしょう。

Qこちらの病院が得意とする肛門温存手術とはどんな治療ですか?

A

肛門に近い直腸がんの手術では、がんと肛門を一緒に切除することで永久的な人工肛門が必要になる場合があります。これを極力避けるため、肛門機能の温存を図る治療が括約筋間直腸切除術(ISR)です。肛門括約筋には内肛門括約筋と外肛門括約筋の2種類あり、ISRでは外肛門括約筋は残し内肛門括約筋を部分的に切除することで肛門を残します。一度取ってしまった内肛門括約筋は元に戻らないため、内肛門括約筋をどれくらい残せばがんが治り術後の生活の質も保てるかの判断が重要です。当院ではがんをきれいに取りつつ術後できるだけ元のような生活をしたいという患者さんの希望をかなえるため、がんの根治と機能を残すことに注力しています。

Q直腸がんの手術の合併症にはどんなものがありますか?

A

内視鏡の普及により、合併症は減少傾向にあるという

主な合併症の一つに排尿機能障害が挙げられます。排尿障害が起こるのは、がんを切除する際に自律神経も一緒に取ってしまうことが原因でした。そこで当院では、排尿機能障害を極力抑えるため自律神経温存手術にも積極的に取り組んでいます。手術で神経を犠牲にすると自分で排尿できなくなってしまうため、尿道に管を入れることになります。自律神経を取るべきかどうかの判断は難しいですが、神経は左右両側で一対なので、片方でも温存できれば排尿機能を残すことは可能です。開腹手術が主流だった頃は多い合併症の一つでしたが、内視鏡手術が普及し今は自己導尿になる人は少なくなってきています。

Q直腸がんの治療期間や入院期間を教えてください。

A

当院の場合、大腸がんだと手術をして1週間で退院になりますが、直腸がんは少し長くて10日ほどの入院になります。なぜなら、直腸がん治療では肛門を残せても多くの場合でつなぎ目が治るまで安静にしていただく必要があるため、一時的に人工肛門をつけていただくことがあります。その人工肛門の処置を覚えてもらうための期間が10日ほどになるためです。一時的につけた人工肛門は、3ヵ月から半年で閉鎖になります。

患者さんへのメッセージ

黒柳 洋弥 副院長

1987年京都大学医学部卒業。国立京都病院(現・独立行政法人国立病院機構京都医療センター)、公益財団法人がん研究会有明病院を経て、2010年より虎の門病院消化器外科(下部消化管)部長、2019年より副院長就任。専門は大腸がん腹腔鏡手術で特に直腸がんに対する肛門温存手術をライフワークにする。

直腸がんに限らず大腸がんのほとんどは良性のポリープががん化したものです。ポリープの段階であれば内視鏡手術で治療ができますので、両親や身内に大腸がんを患った人がいる方は、早めに内視鏡検査を受けることをお勧めします。肛門が残せるかどうかの精密な判断は、治療経験が豊富な専門医療機関でないと難しいと思います。手術は失敗できません。だからこそ病院をきちんと選んで治療を受けていただければと思います。直腸がんと診断され、人工肛門が必要だと言われた人も諦めずに当科にご相談ください。直腸がんのエキスパートがお一人お一人に合った治療をご提案していきます。

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