医療法人財団順和会 山王病院
(東京都 港区)
藤井 知行 病院長
最終更新日:2021/03/16
患者主体の温かで良質な医療とサービスを
1937年の創設以来、「お産の山王病院」として80年以上の長きにわたり親しまれてきた「山王病院」。思いやりに配慮したプライベートホスピタルとして地域医療に貢献する一方で、産婦人科を筆頭に、総合病院として、消化器センター、呼吸器センター、国際医療福祉大学東京ボイスセンターなど幅広く診療を行う体制を整えている。2021年1月に病院長に就任した藤井知行先生は、「病院の役割は病に苦しんでいる人を救い笑顔を取り戻すお手伝いをすること、体の病気を治すことはもちろん、病気によって損なってしまった心の健康も治すことが医療の役割」だと語る。その想いは長く同院に根づいてきた医療への想いと通じており、良質な医療とともに、患者主体のサービス、ホスピタリティーで笑顔を取り戻していくための温かな医療を展開している。「ここでお産をしてよかった」と思ってもらえる病院をめざす藤井病院長に、同院の特徴について聞いた。(取材日2021年2月19日)
「お産の山王」とも呼ばれる貴院の取り組みを教えてください。
現在、在籍する産婦人科の医師の数は都内でもかなり多いほうだと思いますし、周産期、リプロダクション、腫瘍、女性医学の各分野で最先端の医療提供をめざしています。ここでは、私が東京大学医学部附属病院に勤務していた時に、できたらいいなと思っていたいくつかのことが既に行われているのですが、そのうちの1つがマタニティーリハビリテーションです。妊婦さんは一般的に、腰や骨盤、恥骨が痛くなることが多いため、当院では妊娠中を快適に過ごせるよう、リハビリテーションセンターとの連携で理学療法士が中心になって妊婦さんのつらい症状の緩和に取り組んでいます。今、お産には安全は当然として、同時に高い満足度が求められています。満足度の高いお産をかなえていくため、妊婦さんとのコミュニケーションや24時間対応の無痛分娩など、これまでのノウハウを生かして細かなニーズに応えることで、満足度の高いお産の提供につなげていきたいですね。
満足度の高いお産の実現のために行っていることはありますか?
2021年4月から無痛分娩を24時間体制で行えるよう体制を整えています。無痛分娩は一定のリスクがあるため原則として計画分娩になりますが、お産がいきなり始まってしまうこともあるため、夜間でも硬膜外麻酔ができるように人員を確保しました。無痛分娩の良さの1つは、出産に伴う疲れが少ないこと。自然分娩を終えた後はフルマラソンを走りきったくらいの疲労感があるといわれていますが、無痛分娩は回復が比較的早いのが特徴です。ただ完璧に痛みを取り除いてしまうといきむタイミングがわからなくなりお産がうまく進まなくなってしまうため、陣痛を微妙に調節していくことが必要です。その他、妊娠中は精神的に不安定になりますので、妊娠中および産後のメンタルケアにも力を入れています。妊婦さんのメンタルケアを系統立てて行っている産婦人科は少ないですが、当院では妊娠・出産期専門の心理カウンセラーが心のケアに努めています。
産婦人科以外の診療科についてはいかがですか?
各診療科でセンター化して取り組む中、特に呼吸器センターと消化器センターは内科と外科が一緒に取り組むことで、幅広く医療を提供しています。アイセンター(眼科)での屈折矯正手術における眼内レンズの治療も当院の得意とするところです。また、当院のグループ組織である国際医療福祉大学と協同で院内に開設した国際医療福祉大学東京ボイスセンターでは、声が出ない、声が震える、詰まってしまうといった症状を中心に音声障害にも力を入れて取り組んでいます。そして、意外と知られていないのがリハビリテーションセンターです。国際医療福祉大学は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などを多数輩出している大学であり、当院では多くの常勤スタッフが在籍し、各診療科の医師との協力のもと、脳卒中後や、整形外科的な疾患のリハビリなど一人ひとりに合わせてリハビリテーションを行っているほか、専門の職員による訪問リハビリも行っています。
病院長としてドクターとして、大切にしていることはありますか?
病院は医師や看護師だけではなく、事務職員、薬剤師、技師、厨房の人、清掃の人などいろいろな職種によって運営されています。どの職種も等しく病院にとって大切な人材で、一人でも欠けると病院は成り立たないという気持ちで病院運営をしています。温かく、職員も働いていて良かったと思える病院にしていきたいですね。私は不育症をライフワークとしていますが、最初は暗い表情をしていても、お子さんができると別人のような笑顔になる方が多いですよね。写真つきの年賀状や、お子さんからお手紙を頂くこともありますし、「私もお母さんや赤ちゃんを助けるお医者さんになりたい」とお子さんから言ってもらえたり、お子さんの名前に私の名前から1文字使っていただいたりと、人を笑顔にしたり幸せにしたりするのが医師の仕事であり、醍醐味だと思います。「ありがとうございました」と笑顔で言われることが一番の報酬ですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
当院は港区にあるため患者さんは港区在住の方が多いですが、都内全域および近隣地域の人にも当院をご利用いただきたいと思います。長く「お産の山王」と呼ばれ産婦人科のイメージが大きいですが、当院は総合的に皆さんの健康と幸せに貢献していく病院です。総合病院としてすべての方に対して満足度の高い医療を提供していきたいと考えています。医療安全、個人情報保護、感染対策といった基本的なサービスやリスクマネジメントにもより一層取り組んでまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
藤井 知行 病院長
1982年東京大学医学部医学科卒業、2012年東京大学医学部産婦人科学教室教授、2013年同教室主任教授。2021年より現職。東京大学医学部附属病院では主に周産期医療に従事。総合周産期母子医療センター長としてハイリスクを含む多くの妊娠・分娩管理に関わってきたほか、30年以上にわたって不育症治療を専門とし治療指針を作成。国際医療福祉大学大学院教授。