医療法人社団聖仁会 栄聖仁会病院
(神奈川県 横浜市栄区)
岩永 明峰 院長
最終更新日:2025/08/06


多職種連携で認知症患者を最期までサポート
住宅が密集するエリアからやや離れた場所にある「栄聖仁会(さかえせいじんかい)病院」は、認知症などによる強い精神症状により、一般的な医療機関や施設で対応が難しい高齢患者の治療・療養を目的とした精神科病院だ。「そうした方を受け入れる最後の砦であると同時に、患者さんが適切なタイミングで退院できるよう多職種連携で支援する役割も担います」と岩永明峰院長。「高齢の患者さんは体の病気も併発されているので、入院中は精神科だけでなく内科的治療も行うほか、認知機能の維持をめざすリハビリテーションにも注力。さらに退院後の社会支援制度の利用も視野に、医学的・心理的・社会的アプローチで退院につなげるのです」。受け入れる家族とも十分に話し合い、患者の居場所が確保されてからの退院が基本と強調する岩永院長。「それでも当院を数ヵ月から半年程度で退院される方は、症状が悪化したら一時入院などでご家族の不安や負担を軽減しつつ、ご自宅や施設で最期まで過ごせるようサポートします」と話す岩永院長に、同院の特徴などを詳しく聞いた。(取材日2024年12月12日)
一般的な精神科の病院とは異なるタイプの病院と伺いました。

当院は精神症状がある高齢の患者さんの治療や療養を目的に、その方の心身ともに診ていく病院です。一般的に精神科の入院は統合失調症やパーソナリティー障害といった病気の若い患者さんが多いのですが、当院に入院されるのはほとんどが後期高齢者で、認知症や脳疾患の後遺症などによる精神症状が強く出ている方が中心。横浜市西部、鎌倉市、横須賀市などにお住まいの方が多いです。病床106床のうち精神一般病棟が46床、認知症治療病棟が60床で、認知症などの興奮症状がある場合はまず精神一般病棟へ。症状が落ち着いたら認知症治療病棟で治療・療養を続け、退院し入院前に暮らしていたご自宅、施設などにお戻りいただくことをめざし、入院中はリハビリテーションにも力を入れています。患者さんは数ヵ月から半年ほどで退院が見込めることもある一方、残念ながら入院中に持病が悪化したり認知症が進行したりして退院が難しくなることもあります。
医療面ではどんな特徴があるのでしょうか?

入院されるのは高齢の患者さんなので、精神症状に加え、さまざまな体の病気を併発されていることがほとんどです。糖尿病や高血圧といった生活習慣病、心臓の病気のほか、脳梗塞・脳出血による高次脳機能障害、神経症状、嚥下障害、症候性てんかんなど非常に幅広いですね。当院の精神科の常勤医師は内科の診療経験も豊富で、内科の非常勤医は日中または夜間の診療を担当して、多様な内科の症状をカバーします。また、食事の量が減らないよう、管理栄養士が味や盛りつけに留意した食事に力を入れています。さらに近隣の急性期病院には胃ろうを造設する場合などに受け入れてもらい、治療後に当院で療養していただく連携にも努め、「認知症かもしれないから診てほしい」といった初診の外来診療も、なるべく1週間以内に予約が取れるよう尽力しています。こうした柔軟な対応も精神症状のある高齢の患者さんを専門に診ていく病院の強みと考えています。
入院中にリハビリテーションを行う目的を教えてください。

ご本人やご家族には「脳のリハビリテーションをしっかり行います」とご説明していますが、精神症状のある高齢の患者さんが退院後も安定して過ごせるよう、特に認知機能の維持または衰えの抑制を優先してリハビリテーションに取り組んでいます。当院には認知症に詳しい作業療法士が在籍し、患者さんの生活の中での困り事やできるようになりたいことなどを確認しながらリハビリテーションを提供します。プログラムに全員が同時に参加するのは難しいですが、作業療法室で集団で行ったり、作業療法士がベッドサイドに行って指導したりと、患者さんの状態に合わせて実施しています。集団での創作活動、塗り絵や計算問題のような個別作業、お化粧などの整容活動のほか、患者さんにとって懐かしい映像や音楽を流し、あるいはみんなで歌ったりゲームをしたりと、その時間を楽しい気持ちで過ごしていただくことも大切にしています。
退院に向けて患者さんやご家族をどうサポートされるのですか?

患者さんの精神症状、体の病気を薬物療法や内科的治療で落ち着かせることをめざすほか、当院に在籍するPSW(精神保健福祉士)と協力して退院後に必要な社会的支援を検討するなど、医師も患者さんが社会に出た後のことを見据えて治療に取り組んでいます。ただし、ご家族の側からすれば精神科病院への入院時に悩まれるのと同じくらい、退院する患者さんの受け入れに不安やためらいを感じるケースは少なくありません。当院ではご家族と十分に相談しながら、受け入れるための経済力や介護の余力、社会支援制度の利用といった準備が整い、患者さんの居場所が確保できてから退院されるように努めています。加えて、退院後に症状が悪くなった場合には一時入院していただく体制などでご家族の不安や負担を少しでも軽減し、患者さんにはできる限り病院ではなく、ご自宅や施設など生活の場で最期まで過ごしていただけることをめざしています。
患者さんのご家族や介護職の方にメッセージをお願いします。

当院が精神症状がある高齢の患者さんを診る病院とご存じない方もおられるかもしれません。そこで最近は地域の介護職との連携を深めるため、「認知症で困ったときの対処」といったテーマで公開講座を行うなど情報発信を強化。患者さんのご家族には広報誌で認知症のケアや高齢者向けの食事などを紹介し、当院の地域での役割を知っていただくよう努めています。さらに当院の医療相談室ではPSWが外来診療や入院の相談に対応し、院内では多職種で検討して患者さんの早期の受け入れを図り、入院後は精神科と内科の診療、認知機能に注力したリハビリテーション、退院後を見据えたサポートなど、医学的・心理的・社会的なアプローチで適切な退院につなげます。当院がめざすのは認知症の患者さんを受け入れる最後の砦、そして患者さんがご自宅や施設で暮らすためのサポート役。患者さんの精神症状のために居場所がなくてお困りのときには、まずご相談ください。

岩永 明峰 院長
2003年鹿児島大学医学部卒業。精神科でも内科診療の知識が必要と考え、鹿児島市内の病院での初期研修を経て、奄美大島の医療機関で内科の医師として3年間勤務。医療資源に乏しい離島で、どんな患者でも診ていく経験を積む。その後、袖ケ浦さつき台病院や千葉県立佐原病院の精神科で専門的な診療に従事し、2016年から現職。これまでの経験から患者への社会的支援の重要性も実感し、同院でその実現に努めている。





