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医療法人財団中島記念会 大森山王病院

(東京都 大田区)

伊藤 嘉晃 院長

最終更新日:2023/06/27

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地域ニーズに応じた医療をこまやかに提供

JR京浜東北線の大森駅西口から徒歩約8分。池上通り沿いの商店街にある「大森山王病院」は、病床65床の小規模な病院ながら、その30床が地域包括ケア病棟、残りは医療療養病棟という特徴ある病院だ。内科全般の外来診療に加え、「ご自宅や高齢者施設での生活を基本に、必要なときに地域包括ケア病棟に入院し、退院後に地域にお戻りになるための病院として活用いただきたいと思います」と伊藤嘉晃院長は話す。「急性期や回復期の病院を退院してもご自宅に戻るのが不安なとき、在宅療養中に急に容体が変化したときなどにお引き受けし、ご自宅や施設でまた生活できるように治療やリハビリテーションを提供するのが当院の役割と考えています」。このほか透析治療や訪問診療は、それぞれ専任の医師が診療を担当するなど、地域で必要とされる診療に力を入れる。「当院は、親御さんの介護が必要になったなど、ご自身やご家族の健康問題に関するよろず相談所です」と言う伊藤院長に、同院がめざす地域医療の姿とそこで果たす役割などを詳しく聞いた。(取材日2023年4月26日)

この病院の診療方針や地域での役割をお聞かせください。

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当院の基本理念は「和みの創造」で、「患者さんの痛みを和らげ、人の和を重んじ、いつも和みに包まれた癒しの場の創造」を心がけています。診療では内科全般に加え、腎臓や呼吸器、循環器、消化器、血液腫瘍、膠原病といった分野を専門の医師が診る日も設けるなど、対応の幅を広げました。また、地域の中で最期まで暮らしていただけるよう地域包括ケアシステムの充実を図り、退院後の生活を考えたリハビリテーション、地域ニーズの高い透析治療にも力を入れ、近隣の医療機関とも連携して必要な医療を提供するのも当院の特徴です。病棟では、急性期や回復期の治療ではご自宅や施設での生活に戻れない患者さん、在宅療養の患者さんに加え、地域医療の網の目からこぼれそうな方も含めて受け入れています。これらは「患者さんの痛みを和らげ、人の和を重んじ」という基本理念に沿ったものと考えています。

病床の約半数を地域包括ケア病棟にされていますね。

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ええ、当院の戸金理事長が、医療と介護をシームレスにつなぐ地域包括ケアシステムに当院がどう貢献できるかを検討し、それまで持っていた一般病床30床を、多様なニーズに対応できる地域包括ケア病棟へと転換しました。当院の地域包括ケア病棟では、急性期や回復期の病院からのご紹介に加え、急性期病院では入院が認められない患者さん、例えば軽症でも点滴などの医療処置に中長期の入院が必要な方、ケガは重症ではないがそれまで通りの生活は難しい方、ご自宅での介護が困難になった方なども受け入れています。入院後は治療やリハビリテーションを経てご自宅や施設での療養にお戻りいただくほか、緩和療法の提供、看取りなどを行っています。今後は当院がある大田区に隣接し、地域包括ケア病棟が不足気味する品川区からも患者さんを受け入れ、東京都区南部の医療圏全体で地域包括ケアシステムの充実をめざしたいと思います。

訪問診療にも力を入れていると伺いました。

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地域包括ケア病棟は前述のような患者さんだけでなく、在宅療養の患者さんの容体急変時に入院していただく役割も持ち、在宅療養とは非常に密接な関係にあります。通院が困難、認知症で医師の指導が理解・実行できないなど、外来診療が難しい方も在宅療養の対象となるため、より幅広い対応が必要とされるのです。当院は在宅療養支援病院として、地域の先生方が診ている患者さんを受け入れていますが、それ以外に急性期・回復期の病院からの紹介患者さんが退院された後のフォローも必要なため、院内に在宅診療室を設けて専任の医師と看護師が訪問診療を担当し、併設の訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所と連携して在宅療養をサポートしています。医療用麻薬などを用いた緩和療法も可能ですし、呼吸器のがんや肺機能が低下するCOPDの患者さんには呼吸器疾患が専門の医師も診療に加わり、末期でもなるべく苦しくないよう在宅で処置をすることができます。

透析治療やリハビリテーションについても教えてください。

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当院の透析治療は、創設者の中島先生から受け継いできたもので、治療は1日に20人ほどですが、外来だけでなく入院透析もでき、一般的な血液透析だけでなく腹膜透析に対応しています。透析が必要でも通院が難しくなった患者さんには、長期療養を目的とした療養病棟に入院していただき、場合によっては看取りまで行うこともあります。リハビリテーションは強固な体力を養うというより、退院後にご自宅や施設に戻られたときに転ばない、ある程度食事ができる、トイレは自分でできるなど、生活しやすさを目的としたものです。部屋に手すりをつけたりポータブルトイレを用意していただいたりと、ご自宅の環境を整えることも大切ですから、当院の退院支援ナース、リハビリテーション科とも協力して、患者さんとご家族がなるべくストレスなく過ごせるよう退院に向けて準備することを大切にしています。

最後に地域の方に向けてメッセージをお願いします。

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当院は高齢になっても地域の中で暮らせるよう、一般的な診療のほか、地域包括ケア病棟の患者さんにはご自宅や施設にお戻りいただくためリハビリテーションに力を入れ、在宅療養もサポートしています。入院後は、退院支援を目的に患者さんやご家族と情報共有会を開き、どのような状態まで回復したら退院可能かなども詳しくご説明します。また、今後の治療方針をご本人やご家族と医療者が話し合いを重ねるACP(アドバンス・ケア・プランニング)も重視します。患者さんの治療に対する考え方とご家族の意見をもとに、意識を失ったときの治療法、どんな状態なら在宅で救急車を呼ぶのかなどを、ご家族または高齢者施設のスタッフと医療者とが共有することで、適切な医療を受けるタイミングを逃すことなく、在宅療養に対する患者さんやご家族の満足度も高まると考えています。安心して他の医療機関からのご紹介、在宅からの入院でご利用いただければと思います。

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伊藤 嘉晃 院長

1989年東邦大学医学部卒業後、1992年から東邦大学医学部付属大橋病院(現・同大学医療センター大橋病院)で勤務。1993年に東邦大学医学部付属佐倉病院(現・同大学医療センター佐倉病院)内科学講座助教に就任。2001年から同院糖尿病・内分泌・代謝センター助教。森山リハビリテーション病院(現・森山脳神経センター病院)内科部長、森山記念病院代謝・内分泌科部長を経て、2016年から現職。

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