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地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立精神医療センター

(神奈川県 横浜市港南区)

田口 寿子 所長

最終更新日:2020/09/24

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実績をベースに新たな精神科医療を推進

横浜市港南区芹が谷の緑豊かな丘陵地に、2014年に開設された「神奈川県立精神医療センター」。同院は90年以上も精神科の診療を行ってきた県立芹香病院と、60年近く依存症の治療に取り組んできた県立せりがや病院の統合により誕生し、それぞれの特色を受け継ぎながら、専門性の高い診療により、県内の精神科医療を支える存在となっている。2019年に就任した田口寿子所長は、東京都立松沢病院で約21年、国立精神・神経医療研究センターで約5年、精神科医療に従事。「長年の経験から、当院のような自治体病院は、地域の医療機関と役割分担をしながらも、いざという時には患者さんや地域の医療機関・福祉施設が頼れる病院であることが大切だと考えています」と話す。精神科の三次救急に24時間対応するのもその現れといえる。新たに造られた病院は明るく、安心して受診できそうな雰囲気。病床の約7割は個室で、患者中心のケアをめざして身体拘束はできるだけ行わないなどの試みも進めている。これまで積み重ねてきた実績をベースに、これからの精神科医療をめざす同院の特色を、田口所長に詳しく聞いた。(取材日2020年9月4日)

こちらの病院が行う精神科医療の役割を教えてください。

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県立の精神科専門病院として、県内の精神科医療を幅広く支えると同時に、専門性の高い精神科医療を実践し、ほかの医療機関で治療の難しい患者さんをお引き受けすることが当院の役割と考えています。当院は、県の精神科救急の中核病院として救急専用病床を16床備えており、急性期で症状の激しい患者さんの入院を日々受け入れています。また県の依存症治療拠点機関として、アルコールや薬物、ギャンブルなどの依存症の治療に熱心に取り組んでいます。2019年6月に保険適用される前から、rTMS療法という中等度以上で薬物治療による改善が難しいうつ病の患者さんに実施する反復磁気刺激による治療の臨床研究も行ってきました。こうした専門性の高い医療や救急医療も含め、いざという時に地域の皆さんや医療機関、施設の方々に頼っていただける病院であり続けられるよう、職員一同努力しながら診療に当たっています。

診療面での特色についてお聞かせください。

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一般診療の外来・病棟に加えて、治療の難しい統合失調症、中等症以上のうつ病を中心とする気分障害、依存症、思春期の患者さんのメンタルヘルス問題にそれぞれ対応する専門の外来や病棟があります。近年わが国では病院の機能分化を求める政策が進められており、県の中核病院である当院では、精神科医療のあらゆる要請に応えることではなく、より高度で専門的な治療を必要とする患者さん、症状が活発な急性期の患者さんにできるだけ迅速に医療を提供できるよう努めています。また、精神科の病院はかつてのように患者さんが長期に入院して生活をする場ではなく、病状が悪い時に入院治療をし、症状が安定したらご自宅や施設などに戻って地域生活を送る時代になっています。当院でも退院促進にいっそう力を入れており、一人でも多くの患者さんが社会復帰を果たせるよう、特に退院後数ヵ月間、地域支援者と連携して集中的に支援するようにしています。

依存症の治療はどのように行われていますか?

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専門病棟での依存症治療は、アルコールや薬物のほか、ギャンブル、過食、自傷行為など「行動の依存症」も対象です。依存症は患者さんの心と体の健康を損ねて生活を破綻させ、ご家族や職場など周囲の方にもトラブルを招くなど、その影響は多方面にわたります。これらは治療が必要な病気であり、人と人との関わりの中で、物質や行動に依存せずに生活できるようになるために、当院のような専門性の高い病院での治療が望ましいと考えています。病棟では、せりがや病院時代に開発されたプログラム「SMARPP(スマープ)」など、ワークブックを用いたグループ療法で依存症という病気と回復方法を学ぶほか、多職種が担当する教育講座や患者さん同士の交流会、作業療法で心と体を整えていくなど、多面的な支援によって回復を促します。また中学生・高校生対象の思春期病棟でも、同世代の患者さんだけという環境の中で、必要に応じて依存症治療を行っています。

退院後の社会参加に向けた取り組みなどを教えてください。

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社会生活に戻ることに不安を感じる患者さんには、地域移行支援病棟で準備をしていただくことができます。ここでは退院後の生活のために、日常生活機能を高めるリハビリテーションや困ったときの対処法の習得などの支援を行います。また、2019年に開設した連携サポートセンターは、医師、看護師、ケースワーカーなど多職種で構成され、院内で退院に向けた支援を行うほか、受け入れ先の地域の施設や訪問看護ステーションに行き、患者さんとの接し方などの情報を共有しています。退院後も同センターの職員が患者さんのご自宅や施設を定期的に訪ね、お困りのことなどを聞き取って解決策を一緒に考えるなど、継続してサポートします。万一病状が悪化した場合は当院に入院していただくことも可能です。こうした支援によって、長期間入院していた患者さんが地域で安定した生活を送るお姿を目にすることは、職員にとっても励みになっています。

最後に地域の方へのメッセージをお願いします。

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精神疾患・精神障害と聞くと、ご自分やご家族には関係ないと思う方、患者さんの社会参加は難しいのではないかと感じる方が多いかもしれません。しかし、うつ病、アルコールやギャンブルの依存症など、精神科医療が必要な病気になる可能性は誰にでもありますので、患者さんを支援し、共に生きる社会を作ることはすべての人に関わる重要なことです。そのためにまず必要なのは、精神疾患について正しく知ること(メンタルヘルスリテラシー)で、予防の観点からも、私たち精神医療者は広く社会に対して情報発信をしていかなければならないと考えています。当院でも医療関係者向けの研修だけではなく、一般の方に向けた公開講座やさまざまな現場での講演活動に活発に取り組んでいます。インターネットやゲーム依存、低年齢からの物質使用が問題となる現代では、今後学校保健の中で子どもたちが精神疾患について学ぶ機会をつくる必要があるのではないかと思います。

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田口 寿子 所長

1984年東京大学医学部卒業。東京医科歯科大学大学院博士課程修了。1993年より東京都立松沢病院精神科、2014年より国立精神・神経医療研究センター病院司法精神科に勤務し、2019年から現職。専門は司法精神医学で、刑事精神鑑定、心神喪失者等医療観察法の専門医療などを中心に、幅広く精神科医療に携わる。医学博士、精神保健判定医、日本精神神経学会精神科専門医。

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