医療法人社団 守成会 広瀬病院
(神奈川県 相模原市緑区)
広瀬 憲一 理事長
最終更新日:2021/11/29
地域ニーズを探り頼れるかかりつけの病院に
相模原市緑区にある「広瀬病院」は、1977年に開設された歴史ある病院。現在理事長職を担う広瀬憲一先生は、開設者である広瀬幹男先生と広瀬康子先生の息子にあたり、2012年に同院を継承以来、一貫して地域における小規模病院のあり方について模索しているのだそう。基幹病院やクリニックといった地域の医療リソースも活用しながら、外来診療、入院、そして在宅医療まで「24時間頼れるかかりつけ」となるべく医療を提供していく。病院理念として「敬愛を、かたちに」を掲げており、「私にとっての『敬愛』とは、当院を地域に愛される形で残すこと。地域のニーズに寄り添い柔軟に形を変えながら、次世代に向けても頼られる病院として役割を果たしていきたい」と広瀬理事長は語る。人生のさまざまなステージにある患者の見守りを通して、地域での健やかで安らかな暮らしを支え続ける同院について、詳しく話を聞いた。(取材日2021年10月29日)
お父さまが開設された病院を継承されたのですね。
当院は1977年に父母が開設したもの。私が生まれたのが1976年ですから、この病院とともに育ってきたとも言えます。開設した当時は地域に大きな病院はなく、病床を持つ医療機関としての大きな役割がありました。その後、時代の流れとともに地域の医療体制も充実していくのと同時に、高齢化を受けて医療ニーズも変化。父の逝去を受けて私が当院に戻ったときには、病院として地域のニーズに十分お応えできているとは言い難い状況もあったんです。そこで、小規模病院として地域の中でどのような役割を担うべきかを再考し、基幹病院で受け入れの難しい患者さんの受け皿として、がんなどの終末期にある方や認知症などご家庭での療養が難しい方などを積極的に受け入れてきました。2020年から院長職は長く当院とお付き合いいただいていた信頼関係のある河野悟先生にお任せし、私自身は理事長として病院全体の方針決定や基幹病院との調整役を担っています。
訪問診療も幅広く実践していらっしゃるとか。
10年ほど前に在宅医療を始め、診療を続ける中で、入退院を繰り返す方はそもそも通院が難しい方であることが多いと気づきました。日常的に適切な医療を受けられないままに、症状が急変して救急搬送されるというケースが多くありました。その前段階で必要な医療につなげることこそ必要と実感し、在宅医療への対応をさらに拡充させました。当時院内の100床に加え100人の在宅患者を診療することで、実質的な地域病床を増やす「広瀬病院200床計画」と題する計画を策定。自宅でも病院と変わらない医療を受けられるように体制を整えたのです。現在も多くの方に在宅のまま医療サービスを受けられるように訪問診療に注力しています。体制さえ整っていれば「病院より家にいたい」という方は多いもの。そうした方に安心感を提供し、住み慣れた自宅でより良い療養生活を送っていただければと思っています。
眼科での白内障手術や、人工透析部門も強みだそうですね。
母が中心となって長く注力してきた眼科は、「最期までよく見られる目を」をモットーに白内障手術を強みとして、患者さんの「見える」をサポートしています。また、人工透析についても、地域内で最期まで安心して治療を継続することを意識しており、特に高齢者や合併症をもっている方への透析治療に注力し、心不全や肺炎などの合併症に対しても、迅速で適切なフォローをしていくように取り組んでいます。生活の質を保ちながら、地域で安心して暮らしていただくために、透析は必要な医療であると考えています。
外来診療や訪問診療で心がけていることはありますか?
しっかりとお話を伺うこと、そしてわかりやすくお話しすることです。症状についてはもちろん、生活環境や抱えていらっしゃる思いなどについても、お話を聞くことでできる限りの情報を引き出すようにしています。また、私は診療時に結論をわかりやすくお伝えすることに加え、自分の考えをできるだけはっきりとお伝えするようにしています。さまざまな考えがある中で、「私はこう思います」と個人的な意見や思いもお伝えするのです。あとは、自らにない特性は多いに活用し、地域全体を大きな医療機関と考えるようにしています。例えば、当院では枠が限られている内視鏡や設備をもっていないMRIの検査では近隣のクリニックや病院を積極的にご紹介しています。また、高度医療は基幹病院に任せますし、高い専門性を持つ開業医の方にご紹介することも。地域リソースについてはしっかり把握していますので、自信をもってご紹介できるのです。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いできますか。
私自身は循環器を専門としていますので、近年増加傾向にある心不全の診療に力を入れていきたいです。また介護とも連携しながら、地域の終末期医療を拡充したいです。がんの患者さんについては在宅医療やホスピスなどが充実しています。一方、認知症や心不全などは終末期を支える医療リソースが不足していると感じています。介護施設との連携を強め、最期の瞬間まで元気でお過ごしいただき、住み慣れた環境でその人らしく生きることを支える輪を広げたいです。当院のみでできることには限りがあるかもしれませんが、技術を磨き、仲間を増やして地域で診る体制づくりに取り組んでいます。みなさんの地域での安心した暮らしを支えるため、24時間対応できるかかりつけ医として頼っていただければと思います。長くご信頼いただいてきた当院を、さらにお役に立てる病院として存続させていけるよう全力を尽くしますので、お困りの際には気軽にご相談ください。
広瀬 憲一 理事長
2002年浜松医科大学卒業後、東京医科大学循環器内科に入局。同大学病院や戸田中央病院などで臨床や研究を経験する。2012年に広瀬病院を継承。2020年より同院理事長として地域基幹病院との調整などを担う。日本循環器学会循環器専門医。北里大学病院総合診療科非常勤講師、東京医科大学八王子医療センター内科系分野循環器内科兼任助教。趣味は筋トレと美術館めぐり。