医療法人社団善仁会 横浜第一病院
(神奈川県 横浜市西区)
吉村 吾志夫 院長
最終更新日:2025/05/16


総合的な健康管理と透析に注力する総合病院
1982年、腎疾患治療に力を入れる医療法人社団善仁会の「フラッグシップ病院」として開院した「横浜第一病院」。専門性の高さが強みの腎疾患治療だけでなく、内科、泌尿器科、糖尿病内科、循環器内科、消化器内科、整形外科などの診療科とともに、充実した設備と優れた医師をそろえ、先進の治療を速やかに提供できるよう努めている。慢性腎臓病治療で知られる昭和医科大学藤が丘病院腎臓内科で3代目教授を務めた後に横浜第一病院に赴任した吉村吾志夫院長は、保存期腎不全管理に精通しており、豊富な臨床・研究の経験を生かした食事指導を行う。同院の強みや、「かかりやすい病院」に向けた取り組みなどについて詳しく聞いた。(取材日2024年12月25日)
まずは、病院の成り立ちからお聞かせください。

善仁会グループとしてのスタートは、1974年に新丸子駅前に開院した「丸子クリニック」という小さなクリニックだったと聞いています。当院はそれから6年後の1982年、病床数42 床、ベッドサイドコンソール38台を備えた病院として開院しました。開院時から、慢性腎臓病の初期から末期までを担い、診断から保存的治療、各種血液浄化療法、さらには合併症の治療まで、総合的に腎疾患を診ることを目的としていました。現在もそれは変わりませんが、腎臓内科、泌尿器科に加えて一般内科、糖尿病内科、循環器内科、消化器内科、整形外科といった各診療科に専門性の高い医師がおり、「透析にならないための治療」をめざしています。
外来にも力を入れているのですね。

そのとおりです。横浜駅から徒歩5分と非常にアクセスの良い好立地にあるので、患者さんからは「通いやすい」というお声をいただいています。土曜日に診療している診療科もあり、仕事を持っている方にも喜ばれているようですね。外来では、透析患者さんの合併症の治療はもちろん、生活習慣病の予防や治療、慢性疾患の治療に注力し、専門的なアプローチで治療、透析療法を遅らせたり、回避したりすることができるよう努めています。慢性腎臓病は、糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病が原因で発症することが多く、食事の改善や適度な運動による肥満の解消が非常に重要です。進行してからでないと自覚症状が出ない病気でもあるので、「健診で再検査になった」「生活習慣病が心配」といった段階から気軽に受診してもらいたいですね。
先生は、保存期腎不全管理のエキスパートだと伺いました。

2008年に、慢性腎臓病治療で知られる昭和医科大学藤が丘病院腎臓内科の教授に就任し、先代の出浦照國教授が提唱されていた慢性腎臓病の食事療法を継承しました。以来、多くの慢性腎臓病の患者さんの治療にあたるとともに、適切な食事療法の啓発を続けています。並行して、糸球体腎炎の発症や進展に関する実験的研究、妊娠高血圧症候群などの研究にも取り組んできました。腎臓病になると好きなものが食べられなくなって楽しみが減ると落ち込む方が多いのですが、食事療法は続けなければ意味がありません。もちろん、塩分やたんぱく質などの量に気を配り、血圧を管理することは大切ですが、厳しくすれば良いというものではないのです。私のモットーは「強要しないこと」。まずは24時間蓄尿と生活状況のヒアリングを行い、食事療法が必要かどうかを判断した上で、好みを優先して「続けられる食事療法」を提案しています。
透析の施設についてもお伺いできますか。

大規模な人工透析内科、深夜透析可能な個室透析室、さらにはシャントの増設やトラブルに対応するバスキュラーアクセス部門を備えています。また、すべての透析用監視装置において、心臓や血圧、腎臓への影響が少ないオンラインHDFに対応。透析とは長い付き合いになりますから、できるだけ体に負担が少なく行えるよう配慮しています。仕事と治療を両立する透析患者のため、夜間透析も実施。透析中の時間を有効活用できるよう、無線LANを完備しているほか、周囲を気にせず透析の時間を過ごしたい人向けに個室透析も用意して多様なニーズにお応えしています。通院回数が少なく、生活の自由度が高い腹膜透析にも力を入れており、今後は通院が困難になった高齢の患者さんにも積極的に適用していきたいと思っています。
最後に、患者さんへのメッセージをお願いいたします。

健診やかかりつけ医などで数値の異常が見つかったり、腎機能の低下を指摘された場合、できる限り速やかに高度医療を行う医療機関を受診して検査をすることが望ましいです。腎疾患は症状が出にくい病気だからこそ、不安要素を見逃さないでほしいですね。といっても、病院を受診するとなると、「紹介状がないと診てもらえないのでは」「軽い症状では診てもらえないのでは」と気後れする方が多いでしょう。当院では、原則紹介状がなくても患者さんを受け入れていますから、他の医療機関を受診中の方を含めて気軽にご相談ください。状態が安定できたら、かかりつけ医の先生方と連携して継続的に治療をする2人主治医制を基本としています。患者さんが住み慣れた場所で生活を続けていけるよう、地域の先生方と連携しながら支えていきますので、前向きに治療に取り組んでいきましょう。

吉村 吾志夫 院長
1976年信州大学医学部卒業。2008年、慢性腎臓病治療で知られる昭和医科大学藤が丘病院腎臓内科3代目教授に就任。前教授が提唱した慢性腎臓病の食事療法を継承しつつ、さまざまな臨床・研究に従事した。2016年から新横浜第一クリニックで院長を務め、多くの慢性腎臓病患者の治療を担当。2023年より現職。モットーは「強要しないこと」。