徳留 悟朗 病院長

1953年、東急株式会社の社員・家族の健康管理および沿線住民の健康維持のため設立された「東急病院」。2007年には大岡山駅の上部に新築移転して新たなスタートを切り、2023年7月に開院70周年を迎えた。5診療科と病床数30床でスタートした同院も、現在では20を超える診療科と135床を有する中規模病院として、専門知識と技術を持つ医療チームによる安全で質の高い医療を追求し続けている。2008年から病院運営を担うのは、徳留悟朗病院長。日本腎臓学会腎臓専門医として外来診療を行う一方、病院長として人間ドックの立ち上げや地域包括ケア病棟の開設、専門性の高い医師の招聘など、診療の拡充に努めてきた。さらに、2022年からは訪問診療をスタート。予防医療から急性期、回復期・維持期、在宅までシームレスな医療の提供に力を注ぐ。「企業立病院ですが、どなたでも受診していただけます。大田区の健康診断や予防接種も受けつけていますので、症状のある方はもちろん、健康についてのご相談などでも気軽に来院していただきたいですね」と話す徳留病院長に、同院の特徴や力を入れている領域などについて聞いた。（取材日2024年7月26日）

当院は東急株式会社が運営する企業立病院ですが、どなたでもご自由に利用いただけます。地域の皆さんの医療と健康増進に貢献し、「選ばれる病院」となるよう、職員一同、日々努めております。当院は東急目黒線・東急大井町線の大岡山駅の上というアクセスの良い立地にあります。大規模緑化に取り組んでいる点も特徴の一つで、外壁を彩る緑のカーテンのほか、植栽されたプライベートガーデンのついた個室やバルコニーを設置しています。病院というだけで気分がふさぎがちですが、窓越しに見える緑のカーテンが患者さんの気持ちを癒やすとともにヒートアイランド現象の緩和と省エネルギー効果にもつながっています。診療面では内科・外科・整形外科・眼科・泌尿器科を主軸とした二次救急医療機関としての急性期機能とリハビリテーションや、在宅介護を支援するための一時的なお預かり「レスパイト入院」に対応した地域包括ケア病棟を備えていることも特徴ですね。

当院の腎臓内科の医師は私も含め常勤医全員が日本腎臓学会腎臓専門医で、いつ外来を受診されても専門的な診療が受けられる体制となっています。また、血液透析室では通院透析・入院透析の両方に対応しており、当院で通院透析中に病状の変化や合併症などで入院が必要になった患者さんはもちろん、他施設で透析治療中に入院加療が必要になった患者さんも受け入れています。さらに、大学病院から透析導入入院が終わった後の外来維持透析や、透析治療中のリハビリテーションのため当院に紹介されてくる患者さんもおられます。また、外来では慢性腎臓病（CKD）や腎炎、高血圧症の患者さんを診察しています。近年では、高血圧や高齢化を背景に進展する腎硬化症が原因で新たに透析導入となる患者さんが増加しており、薬物療法だけでなく、腎不全看護に詳しい看護師や管理栄養士との協働で食事管理や運動指導も組み合わせ、透析導入回避を目標に治療を進めています。

整形外科では骨折などの外傷や関節の痛み、骨粗しょう症など、整形外科疾患全般を幅広く診療しています。中でも変形性膝関節症の治療に注力し、薬物療法や装具療法、運動指導などを取り入れた保存的治療や、保存的治療で十分な結果につながらない場合には人工関節置換術といった手術も行っています。また、高齢者に多い圧迫骨折や大腿骨骨折などの治療にも積極的に対応しています。さらに2023年1月からは肘関節から腕、手、指までを専門とする「手外科」の医師による外来を開設し、手や手指のケガ、手指の骨折、指に発症する腱鞘炎であるばね指、ヘバーデン結節といった手の病気やトラブルに対して手術も含めた治療ができるようになりました。あまり行われていない領域ですので、大学病院から紹介されてくる患者さんもおられます。手の痛みやしびれでお困りの方は、どうぞご相談ください。

2019年から訪問診療をスタートしました。お一人で通院が困難な患者さんに対して、医師が月2回程度ご自宅へ定期的に訪問し診療しています。また、地域の在宅診療クリニックとの連携により24時間365日連絡が取れる体制を整え、緊急時の往診や入院の手配も行っています。当院には入院設備がありますから、「最期は自宅で」、「自宅での看取りは難しい」など、ご本人・ご家族のご希望に合わせて柔軟に対応できるところがメリットだと思います。また、特に高齢者の場合、入院や手術などで長期に安静にしていると、筋力の低下や関節の動きの悪化、心機能の低下などの障害が起こりやすくなります。当院では訪問リハビリテーションを行っており、専門のスタッフが低下した身体機能の維持・改善を図り、患者さんが自立した日常生活を過ごせるようサポートしています。今後も在宅医療の拡充に努め、高齢化が進む地域のニーズに対応していきたいと考えています。

上部消化管EMR（内視鏡的粘膜切除術）や内視鏡的大腸ポリープ切除術など、消化器の早期がんに対する内視鏡的治療や、白内障手術、睡眠時無呼吸症候群（SAS）の検査・診断を行っている点も当院の特徴かと思います。さらに、病気の早期発見や健康の維持増進のため人間ドックや健康診断にも力を入れています。大田区健康診断やがん検診・人間ドック等の予防医療から病気やけがの治療、検査・入院、通院が難しくなった方には訪問診療と、皆さんのライフサイクルに寄り添う医療をお届けしてまいります。当院は2023年7月に開院70周年を迎えました。これからも近隣の診療所の先生方や高次機能病院との緊密な協力体制を強化し、地域医療のハブとして、これまで以上に地域に根差した医療を提供するとともに、当院を訪れた皆さんから、受診して良かったと思われる病院になれるよう精進してまいります。東急病院の今後の取り組みに、どうぞご期待ください。