医療法人社団静恒会 本多病院
(東京都 大田区)
石川 輝 院長
最終更新日:2025/05/15


患者のための「コミュニティホスピタル」へ
東京都大田区で約90年にわたり地域医療に貢献してきた「本多病院」。2024年11月から新体制となり、「コミュニティホスピタル」というコンセプトのもと、総合診療を軸とした地域密着型の医療・ケアの提供をめざしている。院長を務める石川輝先生は、さいたま市民医療センターの救急総合診療科で研鑽を積んだ家庭医療の専門家。東京科学大学大学院総合診療医学分野の臨床准教授を務め、へき地医療に従事した経験も持つ。「疾患や臓器ごとに診る医療が主流ですが、患者さんを『丸ごと診る』のが総合診療の魅力であり、やりがいです」と語る石川院長。予防から外来・入院・在宅まで、医療とケアをワンストップで提供する体制づくりを進めるとともに、地域に開かれた病院をめざして、地元町内会との交流や同院主催のイベント開催などにも積極的に取り組んでいる。「患者さんやご家族の伴奏者として人生を支えていく、そんな病院でありたいと思っています」と話す石川院長に、同院の特徴や診療の内容、今後の展望などを聞いた。(取材日2025年4月2日)
病院の成り立ちと地域の中での役割を教えてください。

当院は1935年に設立された歴史ある病院で、戦時中には救護所、結核流行時には療養所として地域に貢献してきました。現在では内科・総合診療・整形外科・リハビリテーション科の外来と入院および在宅医療に対応し、内科と整形外科の二次救急医療も行っています。私は大学卒業後、自治医科大学附属さいたま医療センター、さいたま市民医療センターを経て、兵庫県北部にある公立浜坂病院でへき地医療に従事。2024年11月に当院の院長に就任しました。医師になって10年目、30代の自分に院長が務まるのか不安もありましたが、「将来は小規模病院の運営に携わりたい」と考えていましたので、こんなチャンスは二度とないかもしれないと、思いきってお引き受けすることにしました。これまで培ってきた地域医療の経験を生かし、「コミュニティホスピタル」として地域包括ケアの中核的な存在となれるよう、スタッフとともに日々奮闘しています。
「コミュニティホスピタル」とはどのような病院なのでしょうか?

「総合診療を軸として、超急性期以外のすべての医療とケアをワンストップで提供する病院」と定義しており、従来の「治す」だけの医療ではなく、「治し、支える」医療の実践をめざしています。そのため当院では、外来・入院・在宅医療の3つを柱に診療を行っています。外来は内科・整形外科・リハビリテーション科があり、内科では消化器・循環器・呼吸器などの専門診療のほか、総合診療を行う外来も開設。特定の臓器や疾患に特化せず、さまざまな体や心の問題を総合的に診療していますので、何科にかかっていいのかわからないときや、ご高齢者など複数の病気を持っている方は、そちらにご相談ください。また、病床は急性期病床のほか、在宅や介護施設への復帰に向けた医療や支援を行う地域包括ケア病床も有しており、急性期病院で治療を終えた患者さんや、在宅療養中に体調が悪化した患者さんの受け入れも行っています。
在宅医療についてはいかがでしょうか?

2025年1月に在宅医療を専門とする部門を新たに設置し、訪問診療チームを立ち上げました。通院困難な患者さんの全身管理や緩和ケア、人工呼吸器管理など多様な医療ニーズに応え、患者さんやご家族がご自宅や介護施設で安心して暮らせるようサポートしています。東京の高齢化はまだまだ進んでおり、在宅医療のニーズもより高まっていくと想定されます。当院でもより質の高い訪問診療の拡充に努めていきたいと考えています。また、当院は東京都の二次救急医療機関として、内科と整形外科の救急医療にも取り組んでいます。二次救急とは、入院治療が必要な中等症の患者さんに対応する救急医療体制を指しますが、その内容は地域や医療機関によってさまざまです。当院では特に高齢者の救急搬送を積極的に受け入れ、急性期の入院治療から回復期、さらに在宅医療へとシームレスに支援できる体制を整えています。
そのほか、力を入れている分野はありますか?

地域連携です。「コミュニティ支援室」を新設し、私が室長を兼務しています。病病連携や病診連携を担う地域医療連携室の役割に加え、地域活動にも取り組むことで住民の皆さまと積極的につながり、健康増進に貢献することを使命としています。現在は地元町内会や子ども食堂のイベントに参加するなど、顔の見える関係づくりに努めているところで、この夏には当院主催のイベントも企画中です。当院と、関連施設の介護老人保健施設を開放して、出店やゲームなどを予定しています。私が趣味で撮りためた写真の展示も考えています。病院は体調が悪いときに行く場所ですが、元気なときにも足を運んでいただいて、特に子どもたちに「病院は怖いところじゃない」と思ってもらえたらうれしいですね。医療やケアの提供にとどまらず、病院を飛び出して地域に入り込み、人生の最期まで安心して暮らせる地域づくりにも貢献していきたいと思っています。
最後に、地域の皆さんにメッセージをお願いします。

当院は総合診療を軸に、あらゆる世代・症状に対応できる「コミュニティホスピタル」をめざしています。近い将来には小児科を開設して、赤ちゃんからご高齢の方まで地域の皆さまの健康を支える体制を整えていきたいと考えています。当院で対応が難しい場合には、大学病院などと連携し、専門的な検査や治療を受けていただき、治療後は再び当院で全身管理を行うことも可能です。私たちが何より大切にしているのは、「人を診る医療」です。病気や臓器だけでなく、患者さんの人生やご家族、さらには地域全体に目を向け、一人ひとりに寄り添う医療を実践したいと考えています。医療やケアの提供だけでなく、皆さまの人生に寄り添う伴走者として、地域の医療・福祉施設や行政、町内会の皆さまとも協力しながら、地域を元気にするお手伝いができればと願っています。どうぞお気軽にご相談ください。

石川 輝 院長
2015年聖マリアンナ医科大学卒業。さいたま市民医療センター救急総合診療科で家庭医療を研鑽。2018年兵庫県美方郡新温泉町の公立浜坂病院にてへき地医療に従事。2024年10月東京科学大学大学院総合診療医学分野臨床准教授、2024年11月本多病院院長に就任。「コミュニティホスピタル」を理念に掲げ病院運営に取り組むとともに、家庭医療を専門とする医師の育成にも注力。兵庫県新温泉町の観光大使も務めている。