医療法人五星会 菊名記念病院
(神奈川県 横浜市港北区)
石崎 律子 院長
最終更新日:2024/10/03
救急医療や専門治療を支えるチーム力も特徴
東急東横線とJR横浜線が乗り入れる菊名駅から徒歩4分。通院にも便利な立地に1991年に開設された「菊名記念病院」は、急性期医療を中心に地域に必要な医療を広く提供してきた。循環器内科と心臓血管外科が連携する循環器部門、脳に関わる多様な病気を診る脳神経外科に強みを持ち、二次救急医療の提供も担っている。容体が不安定で集中治療が必要な患者向けの特定集中治療室やHCUを備え、脳卒中患者の集中治療を行うSCUも設置。石崎律子院長は「こうした専門治療をベースに、複数の診療科が協力して患者さんを総合的に診ていく院内連携が当院の特徴の一つです」と話す。循環器部門や消化器部門では内科と外科が一体的に診療し、より適切な治療がタイミングを逃さずに行えるよう尽力。女性向けの診療部門でも婦人科、乳腺外科、皮膚科など女性の悩みに広く対応しているという。医療DXに向けて院内の環境整備にも着手するなど、効率化で職員の負担を減らしながら患者の満足度向上にも取り組む石崎院長に、同院の特徴や診療体制などを聞いた。(取材日2024年8月1日)
この病院の特徴や地域での役割を教えてください。
1991年の開院以来、当院は主に急性期医療の分野で地域の医療ニーズに応えてきました。現在は病床218床のうち特定集中治療室10床、脳卒中専門のSCU11床、HCU5床で重症の患者さんへの集中治療を行い、二次救急医療を行う病院として救急の患者さんを24時間365日受け入れています。複数の病気が併存することが多い高齢の方にも対応できるよう、救急の受け入れは総合診療部門が担当しますが、急性心筋梗塞には循環器部門でカテーテル治療、脳卒中には脳神経外科で薬物による血栓溶解療法を24時間実施可能です。さらにMRIやCT、2方向からの撮影で明瞭に血管の状態がわかる血管造影装置などを設置。手術室や各種機器をそろえ、緊急の患者さんをなるべく待たせず治療に入れる体制をめざしています。また、患者さんの回復を支援する急性期リハビリテーションも充実させています。
診療面での強み、最近の動きなどはいかがでしょうか。
2014年から循環器内科と心臓血管外科による一体的な診療体制となった循環器部門では、「内科では治療が難しいから外科へ」という流れでなく、両科がタイムリーにディスカッションしながら患者さんを診ていくことが可能で、より適切な治療をタイミング良く実践できていると感じます。循環器内科では不整脈の原因部分をカテーテル経由で治療するカテーテルアブレーションを行っていますが、熱による焼灼のほか冷却する手法も可能になり、治療の選択肢が広がりました。心臓血管外科でも心臓を動かしたままで行う心拍動下冠状動脈バイパス移植術、腹部大動脈瘤をステントグラフトで血管内から治療するなど、患者さんの体への負担軽減をめざす手法を多く取り入れています。脳神経外科は多様な脳の病気を診ていますが、特に今後も増加が予測される脳卒中による緊急手術および入院の受け入れ拡充のため、SCUを6床から11床に増床したところです。
そうした医療体制を支える院内連携も良好に感じます。
そうですね。特別に秀でた医師を中心に治療するというより、当院はいろいろな診療科の医師が協力しながら治療するやり方が得意だと感じています。他科に協力を求めたり相談したりするときは書面での手続きが一般的かもしれませんが、当院では検査で気になる箇所に気づいたら、すぐに該当する診療科の医師に連絡するなど連携は非常にスムーズです。特に看護師をはじめ各分野のコ・メディカルスタッフが「次に必要なアクションは何か」を考えて自発的に動いてくれる点は、時間を無駄にせず連携して治療が進められる要因の一つでしょう。適切な治療が早く受けられるような体制づくりは患者さんにとってもメリットだと思います。今後は診療科や職種を越えた連携をさらに進め、例えば消化器内科と消化器外科で構成される消化器部門なら、内視鏡検査や内視鏡下での早期がん治療にもっと多く対応できるような体制にしたいと考えています。
女性や高齢者など患者の特性に応じた診療もされていますね。
女性の子宮、男性の前立腺など性別で異なる臓器に起因する病気、高齢になるほど多くなる病気などもあるため、患者さんの特性に合わせた診療は重要と考えています。ただ、女性の場合は子宮脱や失禁などの症状で泌尿器科を受診することに抵抗を感じたり、女性の悩みは女性に相談したいと希望される方も多いでしょう。そのため当院では医師もスタッフも女性を配置して、入り口や会計もほかの診療科とは別にした女性向けの診療部門を設けています。この部門では子宮がん検診や乳がん検診、痔や脱腸、月経や更年期の問題、巻き爪や美容の相談、カウンセリングまで、女性の悩みに幅広く応えられるのが特徴です。一人ひとりの患者さんのお話をじっくり丁寧に伺えるよう予約制となっています。このほか男女を問わず高齢の方の診療では、軽度認知障害(MCI)にも対応しており、髄液検査も始めています。
今後の展望や地域の方へのメッセージをお願いします。
今後の取り組みとしては、前述した院内連携の強化のほかに医療DXの環境整備を進めているところです。すでに看護部では入院説明の事前資料として動画を活用していますが、説明不足の解消や待ち時間の短縮などにつながり、患者さんも口頭と紙資料だけの説明よりわかりやすいと感じる方も多いようです。私は患者さんが医療者とフラットにコミュニケーションでき、治療内容を十分に理解して選択していただくことが重要と考えていますから、こうした情報提供の工夫は今後も検討していきます。また、職員が携帯する電話をスマートフォンに変更し、必要に応じてチャットも併用して院内連携の効率化を図る予定です。菊名駅のすぐ近くで多様な診療科を展開する当院は、地域の医療ニーズに幅広く応え、緊急の場合は24時間対応可能な「医療のコンビニエンスストア」。かかりつけの医院からのご紹介や救急のときなど、安心してご利用いだたければと思います。
石崎 律子 院長
1993年東京女子医科大学卒業後、同大学脳神経外科に入局。大学病院で診療に従事したほか、菊名記念病院や北海道釧路市の基幹病院などでも診療経験を積む。2002年菊名記念病院脳神経外科部長に就任。脳卒中など超急性期の医療に尽力する。2024年から現職。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医。趣味はサーフィンで、湘南や外房の海で早朝にサーフィンを楽しんだ後、病院へ向かうこともしばしば。