公立学校共済組合 関東中央病院
(東京都 世田谷区)
竹下 克志 病院長
最終更新日:2026/06/25


地域の医療機関と連携し多様なニーズに対応
1953年に公立学校共済組合の職域病院としてスタートした「関東中央病院」。1957年からは組合員だけでなく地域住民全体の健康を守る立場となり、現在は383床を有する世田谷区の中核病院として良質な医療の提供に努めている。「心あたたかく、日々新たに」という基本理念のもと、時代や地域のニーズに合った医療を展開する同院は、東京都の二次救急医療機関として救急医療に注力し、高齢者救急にも積極的に取り組んでいる。世田谷区におけるがん診療の中核病院として診療を実施するほか、メンタルヘルス部門や各種専門に特化した外来診療が充実しているのも特徴だ。保険医療機関となって70周年を迎える今年、病院長に就任した竹下克志先生は、地域全体で有機的な医療連携体制を整え、地域の患者を支えていきたいと意気込みを語る。学生時代に同院で診療をしていたときと変わらない穏やかでゆったりした雰囲気を大切にしていきたいと話す竹下病院長に、同院の現在の取り組みや地域に対する思いを聞いた。(取材日2026年5月19日)
現在、力を入れて取り組んでいることを教えてください。

日本全国で高齢化が進む中、高齢者を意識した医療の重要性はますます高まっています。そのような中、当院では特に高齢者の救急医療に力を入れており、できるだけ断らず、お待たせすることなく、適切に対応することを目標に取り組んでいます。高齢者の救急では、骨折やけがといった外傷が増えているほか、内科系では循環器や呼吸器の疾患も多く見られます。高齢の方は、若い方に比べて複数の疾患を抱え、いくつかの診療科にまたがる対応が必要となるケースも少なくないため、安全性に配慮し処置を行うには医療者側にもある意味覚悟が求められます。当院では、まずスムーズな受け入れに努め、より専門的な治療が必要な場合には周辺地域の病院と連携しながら適切な医療につなげています。また、世田谷区も地域の高齢者医療に高い関心を寄せていることから、強固な協力体制のもと、将来的には災害医療も含めた区民サービスについて検討していきたいと考えています。
各分野の診療の強みや特徴をご紹介ください。

1つはメンタルヘルス部門で、学校職員のメンタルヘルスに関する相談や、教員の復職支援のためのリワークプログラムを行っています。循環器内科では、数年前から不整脈のカテーテルアブレーション治療を開始。脳神経外科では、血管内治療と開頭手術のハイブリッド手術ができる体制を整えています。また、高度肥満症に対する治療を行う肥満・減量の外来、腹部の手術後に組織の癒着が原因で発症する腸閉塞の治療をする外来、乳がん治療の後の乳房再建や、がん治療による毛髪の悩みなどに対応するアピアランスケアの外来も特徴的です。さらに、今後は骨粗しょう症や口腔衛生にも注力していきたいと考えています。特に骨粗しょう症は、骨折すると一気に寿命まで影響する病気で、整形外科疾患にとどまらずがん治療や婦人科系の疾患にも影響します。女性に多い疾患ですが、男性も女性の3分の1程度発症しているため、広く関心を持って進めていきたいです。
地域の医療機関との連携はどのように取り組んでいますか。

地域連携というのは、メールや電話のやりとりだけで円滑に進めるのは難しいため、なるべくさまざまな会合やミーティング、勉強会に参加することで、地域の先生方との顔の見える関係を築くようにしています。実際にお会いしてお話しすると、当院の弱点も見えてくるので、さまざまなご意見に耳を傾け、改善できる点は改善していきたいと思います。当院は総合病院であり、医師は専門性を追求した高度な医療を実践していますが、一方で、地域密着の病院として、総合診療のような全体的なケアを意識した診療で、専門性の高い医療へとつなげています。院内での各科の連携はもちろん、世田谷区およびその周辺地域の医療機関全体で有機的に地域の患者さんに対応できる流れを整え、今後も安定した病診連携を推進していければと思います。
将来の展望についてもお聞かせください。

一番の問題はハードウェアが限界に向かいつつあることです。このような世界情勢の中、全面的な改修工事は厳しいため、ハードウェアを完全に変えるというよりは、10年後、20年後を見据えて、次の時代に合わせた改修や補強を検討していきたいです。人材についても、今後、医師不足に続いて看護師不足も考えられるため、働く人の幸福を維持できる、やりがいを感じられるようなシステムを構築していきたいですね。現場の状況を把握し、ストレスが少なく、働きやすく、心身ともに余裕を持って医療活動ができるようにしていきたいです。また、医療従事者のバーンアウトが問題になっている今、DX化によって、働く時間の効率化も進めていければと思います。定型的な対応はAIなどデジタル技術を活用、医療従事者はなるべく診療行為に集中し、個々の患者さんが抱える悩みに寄り添うことで、より良い治療結果を得られるようにしていきたいです。
最後に、地域に向けてのメッセージをお願いします。

患者さんは何かに困っているから病院に来られるのですが、実は直接的な目的は、病気を治すことではなく、多くの場合、病気をした後もスムーズに人生を送りたいということにあります。昔は病気を治すために自分の人生を犠牲にすることも少なくありませんでしが、今は、いかに自分のやりたいことを続けながら病気を管理していくかが重要で、医師も単に病気を診るのではなく、その人の人生を一緒に考えながら支えていくことが求められています。私くらいの年齢になれば、これまでのさまざまな経験を通して、自然とそうした姿勢で患者さんに対応できるようになるのですが、中堅から若い医師にも、そうしたことを意識しながら患者さんに向き合ってほしいと考えています。当院は今年70周年を迎えます。これからも地域の皆さんの期待を裏切らないように診療を続けてまいります。できるだけお待たせせず、地域の医療機関との連携で、適切な治療を提供してまいります。

竹下 克志 病院長
1987年東京大学医学部卒業、整形外科入局。1999年米国シンシナティ大学リサーチフェロー、2003年米国ワシントン大学・コロラド大学リサーチフェロー、2012年東京大学医学部整形外科准教授、2014年自治医科大学整形外科教授。2026年より現職。専門は脊椎外科、脊柱側弯症、運動器疼痛。日本医学会連合理事、日本運動器科学会理事長。趣味はバードウォッチング、クラシック音楽・オペラ・バレエ鑑賞。





