医療法人社団晃進会 たま日吉台病院
(神奈川県 川崎市麻生区)
渡辺 みどり 病院長
最終更新日:2025/12/17


在宅復帰を重視した切れ目のない医療を提供
1988年に整形外科の病院として開院した「たま日吉台病院」。当時は小田急線沿線に住宅地ができあがっていく途中で病院も少なかったことから、同院は川崎市北部の地域医療を支える存在となることを期待されていた。そこから35年以上地域の声に応え続けてきた同院は現在、内科を中心に、整形外科、泌尿器科などの患者を受け入れ、急性期病棟と療養病棟、地域包括ケア病棟を持つケアミックス型の病院として、地域の基幹病院と診療所をつなぐ役割を担っている。また、訪問診療や予防医療にも注力し、外来を入り口に、入院、退院後のフォロー、在宅まで、一人の患者の一生涯を切れ目なくサポートすることをめざしている。2025年6月に病院長になった渡辺みどり先生は、地元育ちで、近隣にある聖マリアンナ医科大学の出身。専門の睡眠時無呼吸症候群では大学病院レベルの治療を提供している。地域への並々ならぬ思いを持つ渡辺病院長に、高齢者の多い町として知られる麻生区で取り組む地域密着の医療について聞いた。(取材日2025年9月11日)
こちらの病院の特徴を教えてください。

当院は、急性期病棟と療養病棟、地域包括ケア病棟のあるケアミックス型病院で、健診、外来、入院、訪問診療と、地域の高齢者の健康を切れ目なく支えられる体制が整っています。入院では内科をメインに、整形外科、泌尿器科の患者さんを受け入れています。外来では、内科、外科、皮膚科、泌尿器科、整形外科を受け入れているほか、放射線科の医師が在籍し、画像診断もできます。また、上部・下部の内視鏡検査や胃ろうの増設、睡眠時無呼吸症候群など各種専門に特化した外来も開設しています。私の専門である睡眠時無呼吸症候群は、大学病院と遜色のない治療を提供し、簡易検査から精密検査、治療までこまやかな対応が可能です。複数の治療法の中から適切な選択ができる体制です。私が担当しますので、女性も気軽に受診していただければと思います。健康診断については近隣の同グループと連携し、幅広い検査を実施しています。
訪問診療はどのように取り組んでいますか?

訪問診療では、ご自宅で療養する患者さんを中心に診療しています。施設などへの訪問も行っていますが、ほとんどが個人宅への訪問で、そこには少しこだわりを持っています。というのも、そもそも皆さん病気になる前は家で暮らしていたわけです。それが何らかの事情で医療機関に通うことができなくなり大変な思いをされているのです。誰でも気持ちとしては、住みなれた家で生活したいはずです。そこで、なんとか患者さんやご家族の希望を後押ししたいと考え、訪問看護師やケアマネジャーなどさまざまな職種と連携し、家で生活したい患者さんの気持ちをなるべく尊重するために在宅医療を進めるようになりました。在宅療養中に病態が悪化して治療や検査が必要な場合は、速やかに当院に入院していただき、できるだけ早く家に帰れるように対応しています。また、ご家族の負担を軽くするためのレスパイト入院も受けつけています。
地域連携の中ではどのような役割を担っていますか。

近隣には、聖マリアンナ医科大学病院をはじめ、新百合ヶ丘総合病院、麻生総合病院、横浜総合病院、昭和医科大学横浜市北部病院や同大学藤が丘病院といった基幹病院がたくさんあり、これらの病院で治療を終えた患者さんをなるべく早く受け入れられるように連携を図っています。特に、聖マリアンナ医科大学病院は、私の出身大学であり、つい先日まで外来診療を担当していたので緊密な関係性が築けています。また、この地域には診療所もたくさんあり、麻生区、宮前区、そして横浜市の開業の先生から患者さんをご紹介いただいています。訪問診療についても、機能強化型在宅療養支援病院として、24時間当院のベッドを利用していただけるように協力しています。その他に月に1回カンファレンスを開催し、患者さんの情報を共有しています。地域の先生方と顔を合わせる機会を積極的に作ることで、さらに基幹病院にも診療所にも頼られる病院になっていきたいですね。
患者さんを受け入れる際に大切にしていることはありますか?

新富士病院グループが掲げる「安心、信頼、平等」を、そのまま当院の理念としています。この言葉は患者さんに対してだけではなく、患者さんのご家族や職員にも共通することだと考えています。患者さんを診察することで地域医療のために役に立つことは大前提ですが、もう一歩進んで患者さんのご家族の思いに寄り添い、気になることがあれば、踏み込んでいくことも大切だと考えています。患者さんにもご家族にもそれぞれいろいろな思いがありますが、ご家族の同意がなければ退院が成り立たず、家に帰りたくても帰れないこともあります。患者さんが病院を出て生活をしていくためにはご家族と話し合っていくことになりますが、ご家族の背景や気持ちが見えていないと、次に進むのが難しくなることも。ご家族に思いを寄せることは非常に重要であり、最終的には患者さんの安心感につながると考えています。
今後の展望と地域へのメッセージをお願いします。

在宅医療については、どうしても高齢者中心に考えがちですが、若い方でも神経難病や生まれながらの病気で、ご自宅で療養されている方がいらっしゃいます。ですから今後は、高齢者はもちろんですが、若い方にも目を向けて拡充していきたいです。予防医学についても、健診の間口を大きくして多くの人の病気の早期発見に努めていきたいです。当院では現在、地域の人たちに病気のことを知ってもらうための市民向けの講座を始めています。地域の方が知識を得ることで、受診のきっかけになればと思っています。宮前区で育った私は、自分を育ててくれた地域に医療で貢献ができていることがとてもうれしく、恩返しのつもりで仕事をしています。地域の高齢者と地元の昔話ができるのも一つの強みと感じています。困ったときはとにかくなんでも相談してください。このくらいのことで病院に行ってもいいのかしらと思わずに来てください。お待ちしています。

渡辺 みどり 病院長
1987年聖マリアンナ医科大学卒業。同大学付属病院第二内科学医⾧、同病院総合診療内科医⾧を経て2005年たま日吉台病院入職。渋谷睡眠メディカルクリニック院⾧、たま日吉台病院訪問診療担当部⾧、2023年院⾧代理を歴任し、2025年より現職。医学博士。日本内科学会総合内科専門医。子どもの頃の医師との出会いをきっかけに医師を志した。職員が働きやすい、特に女性が継続して働ける職場をめざす。





