吉岡 巌 理事長

急性期医療から回復期・療養期、がんの治療や緩和ケアまで幅広く対応する「大久保病院」。45年以上もの歴史の中で、住民の医療ニーズと時代の要請に応えて進化を繰り返してきた。現在は、一般・地域包括ケア・緩和ケア・療養など各病床を設ける“多機能病院”として、地域に密着した医療を提供している。2023年9月には急性期病棟の新築・移転を予定しており、本格的なICU、新しい手術室、感染症対応の個室も完成予定だ。創立者の1人である吉岡巌理事長に、同院の地域での役割や注力している診療、今後の展望などを聞いた。（取材日2022年7月21日）

1976年の創立時には、外科・産科を中心とした医療を提供してきた当院。地域の医療ニーズに合わせて変化を遂げてきました。現在は、急性期医療を中心に慢性期・回復期・緩和医療まで対応する多機能病院となりました。病床は、一般病床94・地域包括ケア病床48・緩和ケア病床18・療養病床39の全199床を有しています。人員・設備面の強化を含め、救急・急病にしっかりと対応していくこと、回復期・療養期の患者さんが安心してご自宅に戻れるよう治療・看護を行っていくことが、地域医療の継続を支える民間病院の使命だと考えています。高齢者医療の比重が大きくなる中、増え続ける「がん」に対しては、兵庫県立がんセンターとも連携。ターミナル期の痛みなどに対応する緩和ケア病棟の存在も一つの特色です。また、健康診断や人間ドックなどを行う健康管理分野、地域の方々へ向けた健康教室など、健康増進・疾病予防活動にも力を入れています。

2022年7月現在、5人の常勤医師が在籍しています。整形外科は「手の外科・外傷部門」「脊椎外科・腰痛部門」「スポーツ整形・関節外科」「人工関節部門」など、それぞれの専門性を冠した外来を設置。特に、整形外科領域は専門が細分化されていることから、患者さんにわかりやすい名称を用いています。年間の整形外科手術数も多く、最近では遠方からも、患者さんをご紹介いただくケースが増加しています。また当院は、当整形外科での勤務を経て近隣で開業した先生方に手術を執刀していただける「開放型病院」です。開業医の先生が自院の患者さんの手術を、当院が入院管理をそれぞれ行うことができます。そうすることで双方にメリットがあるだけでなく、かかりつけ医に執刀してもらえる安心感など、患者さんにも大きな利点があるものだと考えています。現在は整形外科ほか、泌尿器科の先生にも開放しています。

消化器内科では、上部・下部内視鏡に注力しています。鎮静剤を用い痛みに配慮した検査を提供しておりますが、特に大腸内視鏡検査に抵抗感がある方は多いもの。そこで、当院では内視鏡を挿入せず、CT撮影により大腸の3D画像を作成して診断する「大腸CT検査」をご用意しています。6mm以上の病変等があれば改めて内視鏡検査が必要になるものの、まずは気軽に受けられる検査として不安感が強い患者さんにご案内しています。また、山村誠院長は潰瘍性大腸炎・クローン病などIBD（炎症性腸疾患）が専門で、多くの症例を扱っています。このほか婦人科では特有の疾患だけでなく、頭痛や便秘、不眠などを訴える患者さんが多く、女性のための総合診療として各専門領域の外来を立ち上げて専門医療へとつなげる取り組みを行ってきました。そして、特に頭痛は男性からも要望が多いものですから、2022年1月より内科の枠で頭痛の外来をスタートさせています。

超高齢化により、整形外科領域や糖尿病、がんなどの疾患に対応する医療ニーズが高まっています。当院の糖尿病内科は、専門的な検査が可能です。自己血糖測定器を用い血糖変動を調査する神戸大学糖尿病・内分泌内科実施の研究にも参加するなど、患者さんがより良い治療にアクセスできるよう努めています。治療が及ばず腎臓に障害が出るケースもありますが、当院では腎臓内科・人工透析のフォローも可能です。また、麻酔科・ペインクリニックも診療し、日常生活や睡眠の質を取り戻すための医療を提供しています。神経ブロック注射・内服薬・漢方・リハビリテーションなどを適切に用いて、整形外科疾患のほか、帯状疱疹関連痛や糖尿病性神経障害痛、がんなどに関連する痛みの軽減に努めます。このほか特別養護老人ホームやサービスつき高齢者向け住宅など入所施設、ケアプランセンター、訪問看護・介護部門を有すトータルヘルスケア組織として取り組んでいます。

2021年9月に、頭部外傷と脳卒中を専門とする脳外科医師が救急科に入職しました。先ほども申し上げたとおり、救急・急病への対応は私たちの使命。コロナ禍で救急搬送数自体が落ち込んでいます。しかし、しっかりと受け入れ体制を整えて、地域の方々の暮らしに貢献していきたいと考えています。そのためには設備面の整備も重要です。そこで、救急医療の高度化・重装備化に対応するICU、感染症対応の個室などを設ける急性期病棟の新築も決定し、このほど2023年9月のオープンへ向けて着工しています。ぜひご期待ください。当院の理念は「急性期医療を軸に幅広い医療活動に励み、地域の人々に安心し満足して頂ける地域密着の病院をめざします」。人員・設備面の充実化により、これまで以上に急性期医療に力を入れていきます。地域にお住まいの多くの方々に利用していただき、喜んでいただけるような医療を提供し続けていきたいと考えています。