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末期腎不全に対する腎移植
根本的な治療で良好な生命予後をめざす

医療法人社団明芳会 板橋中央総合病院

(東京都 板橋区)

最終更新日:2023/02/15

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  • 保険診療
  • 腎不全

腎臓病が緩やかに進行し腎臓が機能しなくなる慢性腎臓病。さらに悪化した末期腎不全の状態になると腎臓の機能を代わりに行うために、血液透析、腹膜透析、腎移植といった腎代替療法が必要になる。透析患者は年々増えているが、時間の制約や食事・水分制限のほか血管や尿路のトラブルなどの合併症など生活の質の低下が懸念される。一方腎移植は根本的な腎臓の機能の回復のほか、日常生活の質の向上によって良好な生命予後が期待できるという。そこで、腎移植の臨床・研究で豊富な実績を持つ「板橋中央総合病院」の臓器移植センター長の中島一朗先生に、同院での腎移植の歴史から現状までを聞いた。(取材日2022年11月24日)

腎不全の状態で必要となる腎代替療法の1つ「腎移植」。予後や生活の質の向上をめざす

Qこちらの病院の移植手術の歩みを教えてください。

A

これまでの腎移植の取り組みについて話す中島先生

当院での腎移植は2004年にスタートし、当時は私を含め東京女子医科大学病院の腎臓外科チームが派遣され、腎移植手術を行っていました。2009年からの10年間で101例の腎移植を実施(2004年11月~2019年12月実施)、2020年に私たちが当院に籍を移してからは2020年1月~12月で29例、2021年1月~12月で38例と、急速に症例数を伸ばしています。国内の腎移植実施施設の中でも数多くの手術を行っており、難易度が高く他院では対応が難しい患者さんの手術も積極的に受け入れています。

Q腎移植は何科で行われるのでしょうか?

A

カンファレンスの様子

腎移植は腎臓外科が担当するケースと泌尿器科が担当するケースがあります。尿路の再建など泌尿器領域の疾患との関係性が深いことから、全国的にはどちらかというと泌尿器科が主導で行っている施設のほうが多いかもしれません。当院では、腎臓外科と移植外科から成り立つ「臓器移植センター」が腎移植に対応しています。このような名称にしたのは、将来的には腎臓のみならず、肝臓、膵臓移植など広く腹部の臓器移植を行っていきたいと考えたからです。現在、移植手術は腎臓のみになりますが、私たちが東京女子医科大学時代に行った膵臓移植や肝臓移植の患者さんのフォローアップのための外来診療も行っています。

Q国内における透析と腎移植の現状を教えてください。

A

2020年1年間の日本透析学会のデータでは、国内の血液透析・腹膜透析を合わせた新規透析導入患者は約3万8000人、一方、日本移植学会などのデータでは、同年の腎移植患者は1570人で、極端に腎移植が少ないのがわかります。日本は透析大国で世界的に見ても腎移植については極めて下位になります。その大きな理由としてドナーの問題が挙げられます。海外は亡くなった人からの臓器提供が多いですが、日本では亡くなった人からの臓器提供は増えず生体腎移植に頼らざるを得ない状況です。医療費削減の観点からも腎移植は今後ますます増えると考えられており、ドナーの確保が大きな課題となっています。

Q透析をせずに腎移植をすることもできるのですか?

A

腎移植手術の様子

従来の腎移植は腎臓が悪くなり透析を行ってから移植に移行するというケースがほとんどでしたが、今は末期腎不全の状態のまま透析を経ず移植をする「先行的腎移植」が増えています。この治療のメリットは、良好な予後と、5年10年と透析を続けていると起こる血管の石灰化や尿路トラブルの回避が期待できることです。ただ、大学病院などは透析をしながら移植の順番待ちをしている患者さんが多数いるため、先行的腎移植の対応が難しいのが現状です。当院では、民間病院の機動性を生かして、先行的腎移植を希望する患者さんでこれ以上透析なしで過ごすのが難しいと判断した場合は、手術の枠を別途つくり対応しています。

Q移植と透析の違いについて知りたいです。

A

透析と腎移植における大きな違いは平均余命で、末期腎不全で腎移植をした人は透析をしている人よりも良好な生命予後が期待できるといわれています。ただ、腎移植もメリットばかりではなく、ドナーがいなければできないことや、免疫抑制剤を飲み続けることがデメリットとなっています。

Q免疫抑制剤を飲むことで起こるリスクはありますか?

A

免疫抑制剤は発がんリスクや一般の人よりも感染しやすい傾向を示す「易感染性」を上昇させる恐れがあります。中でも皮膚がん、腎臓がん、リンパ腫といったがんについては発がん率が一般の人より2.5倍高くなるというデータもあり、感染も起きやすくなります。しかし、移植患者さんは移植後ずっと外来で私たちの診察を受けることになります。フォローする医師は発がんリスクや易感染性を常に念頭に置き、何かあれば早期に介入し、患者さんにもワクチン接種など自己管理に努めていただきます。免疫抑制剤を飲まなくてよい日が来るのが理想的ですが、移植後、患者さんが元気に毎日を過ごせるようにずっと見守っていきますので安心してください。

患者さんへのメッセージ

中島 一朗 臓器移植センター長

1982年札幌医科大学卒業。専門は臓器移植、内視鏡外科、外科、透析医療。医学博士。日本外科学会外科専門医、日本透析医学会透析専門医。東京女子医科大学腎臓病総合医療センターで、長年にわたり移植医療に従事。東京女子医科大学との連携で板橋中央総合病院が臓器移植を始めた時から同院での移植手術に携わる。2020年より現職。

2020年に開設された臓器移植センターでは、移植外科による腎移植を中心とした移植医療と腎臓外科による透析患者さんの外科的合併症、特にシャントにまつわるアクセス関連手術を2本柱としています。在籍する7人の医師全員が移植外科と腎臓外科の両方に精通しており、腎臓外科の素養の上に腎移植および肝臓や膵臓といった腹部臓器の移植に広く取り組んだ経験があります。慢性腎不全と診断されるとすぐに透析を思い浮かべるかもしれませんが、移植という方法がありますので、気になることがあればぜひご相談ください。

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