全国の頼れる病院・総合病院・大学病院を検索
病院・総合病院・大学病院7,983件の情報を掲載(2024年4月25日現在)

  1. TOP
  2. 東京都
  3. 港区
  4. 虎ノ門駅
  5. 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院
  6. 狭心症や心臓弁膜症の治療に 傷痕の小さい低侵襲な心臓外科手術

狭心症や心臓弁膜症の治療に
傷痕の小さい低侵襲な心臓外科手術

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院

(東京都 港区)

最終更新日:2022/08/16

MainMain
  • 保険診療
  • 糖尿病
  • 心臓弁膜症
  • 心筋梗塞
  • 狭心症
  • 心房細動

心臓や血管の病気に対して手術治療を行う循環器外科では、生命の危険が高い心臓病や、大動脈疾患、末梢血管疾患など扱う疾患も幅広い。心臓の疾患に対する手術は、胸の真ん中を大きく開く胸骨正中切開による手術が一般的に行われているが、医療技術の発展により、患者の体への負担が少なく早期の社会復帰が期待できる低侵襲心臓手術(MICS)が増加してきている。そこで、常に時代の先をゆく先端の循環器外科治療を追求し続けている「虎の門病院」循環器センター外科部長の松山重文先生と循環器センター外科特任部長の田端実先生に、冠動脈バイパス手術や低侵襲心臓手術(MICS)などを中心に、それぞれの専門分野における先端の治療法について話を聞いた。(取材日2021年9月29日)

傷が小さく出血も少ない低侵襲治療の導入で、早期の退院および早期の社会復帰をめざす

Q冠動脈バイパス手術とはどんな治療ですか?

A

狭心症や心筋梗塞のメカニズムについて語る松山重文部長

【松山重文部長】冠動脈バイパス術は狭心症や心筋梗塞の患者さんに対する手術です。心臓は筋肉の塊でその筋肉に血液を供給するのが冠動脈という血管の役割ですが、加齢や糖尿病、喫煙などによって冠動脈の動脈硬化が進行し狭窄が起こると、心臓の筋肉に供給される血液が不足します。そのため、心臓に負荷がかかるときに胸が苦しくなるなどの症状がでます。これが狭心症です。さらに動脈硬化が進み、冠動脈が完全に詰まって、その先の筋肉が壊死した状態が心筋梗塞になります。このような冠動脈の血流が低下した患者さんに患者さん自身の血管を使用して迂回路(バイパス)を作り、冠動脈の血流を回復させる目的の治療が冠動脈バイパス術です。

Q冠動脈バイパス手術は誰でも受けられるのですか?

A

状況によっては循環器内科と連携し、常に最良の治療をめざす

【松山部長】日常生活を普通にできている患者さんであれば、手術は問題なく施行できます。一般的に、狭心症の治療の第一選択は内科的なカテーテル治療になりますが、カテーテル治療では困難な病変の場合や、病変数が多い場合、過去に血管内に入れたステントに再狭窄が起こった場合などに冠動脈バイパス術が適応になります。弁膜症や大動脈瘤の手術の際に、同時に冠動脈バイパス術を行うことも可能です。肝臓や腎臓などが悪くて手術リスクが高い場合には循環器内科と協力して、カテーテル治療と小切開の冠動脈バイパス術を組み合わせたハイブリッド治療を行うこともあります。

Qこの治療のメリットはどんなところにありますか?

A

【松山部長】冠動脈バイパス術で一番大切なのが、冠動脈の最も大切な枝である左前下行枝に胸骨の裏を走行している内胸動脈という血管を吻合して血流の回復を促すことです。そうすることで生存率の改善が期待できることが報告されています。内胸動脈は長期開存が期待され、カテーテル治療と比べ再発率が低いのが最も大きなメリットです。また、冠動脈の病変が複数ある場合でも一回の手術ですべてを治療することができることもメリットの一つです。当院では、人工心肺を使用しない心拍動下の冠動脈バイパス術を基本術式にしており、冠動脈の病変によっては胸骨を切らない小切開のバイパス手術も行っています。

Q低侵襲心臓手術(MICS)とは何ですか?

A

患者の負担が少ない心臓低侵襲手術について語る田端実特任部長

【田端実特任部長】標準的な心臓手術は胸の真ん中にある胸骨という胸の骨を切って行いますが、胸骨を切らずに行うのが低侵襲心臓手術(MICS)です。MICSを導入している施設の多くは胸の右側を大きく切り、肋骨と肋骨の間を金属の開胸器で大きく開いて手術を行いますが、当院では開胸器を使わず、3〜5cmの小さな切開で内視鏡を用い行います。従来の方法より回復が早く、出血量や輸血量、胸骨合併症リスク、術後の痛みなどが少ないメリットがあります 。 術後のリハビリテーションにも注力して早期退院・社会復帰をめざしており、約半分の患者さんが術後5日以内に退院しています。これは全国的にみてもかなり早い退院だと思います。

Q低侵襲心臓手術(MICS)はどの病気の治療で適応されますか?

A

【田端特任部長】大動脈弁、僧帽弁、三尖弁など心臓の弁が狭くなったり逆流したりする心臓弁膜症の治療をはじめ、心臓の腫瘍、心房細動や心房中隔欠損にも適用することができます。ただし、これらの病気であればどんな人でも低侵襲心臓手術(MICS)が行えるかというとそうでもなく、この治療の向き不向きは血管の状態や心臓の機能に関係してきます。例えば動脈硬化がひどい患者さんや心臓の機能がすごく弱っている人には向かないことがあるため、検査をしてそこを見極めて治療を選択するのが大切です。

Q低侵襲心臓手術(MICS)との出会いについて教えてください。

A

循環器センター内科医長の太田先生をはじめとする心エコーチーム

【田端特任部長】低侵襲心臓手術(MICS)との出会いはアメリカに留学している時で、MICSを受けた患者さんは退院が早い傾向にあり、これは日本でもニーズがあるはずと思ったことがきっかけでした。実は僕自身が腹腔鏡下の手術を受けたことがあり、低侵襲治療の恩恵を実感していたので、低侵襲の心臓手術で社会に貢献したいという思いもありました。現在では、通常の心臓手術でも術後の痛みや体の負担を最小限に抑えるように心がけています。MICS、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)、経カテーテル僧帽弁修復術という低侵襲の治療に幅広く対応できる心臓外科の医師として、知識と経験を生かした治療を提供しています。

患者さんへのメッセージ

松山 重文 循環器センター外科部長

2000年佐賀大学卒業。同大学胸部心臓血管外科に入局。関連病院で心臓血管外科の修練を行い、2008年より榊原記念病院でさらに研鑽を積む。2012年帝京大学医学部心臓血管外科、2017年新東京病院心臓血管科を経て、2019年より現職。専門は冠動脈バイパス手術、胸部大動脈手術、弁膜症手術、低侵襲心臓手術、末梢血手術、成人心臓血管手術全般。

田端 実 循環器センター外科特任部長

1999年東京大学医学部卒業。国内で一般外科と心臓外科の研修を積み2004年米国ハーバード大学の教育病院Brigham and Women’s Hospital心臓外科フェローに。2007年同大学公衆衛生大学院卒業後、コロンビア大学病院とベルギーOLVクリニックで内視鏡下手術を含む低侵襲心臓手術等の技術を学ぶ。2019年より現職。2021年12月より順天堂大学心臓血管外科主任教授に就任、兼務。

【松山部長】心臓の病気は急に悪くなることもあります。胸が痛む、坂道で息切れがひどいなどの症状がある人や検診で心電図の異常などがあった人は、ためらわずに循環器センターを受診してください。また当科では、大動脈解離や大動脈破裂などへの緊急手術にも24時間体制で対応しています。
【田端特任部長】弁膜症の手術はカテーテルも含めて僕がすべてに対応しています。複数の治療法をそろえることで、どれか1つの方法に固執することなく公平にバイアスなく適切な治療が選べると思いますので、開胸手術かカテーテル治療かで迷っている人はぜひご相談ください。個々の患者さんにとって適した治療を提供していきます。

access.png