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長い付き合いが続く慢性肺疾患
間質性肺炎や喘息の特性と治療法

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院

(東京都 港区)

最終更新日:2023/02/01

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  • 保険診療
  • 気管支炎
  • 喘息
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  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 間質性肺炎

肺に起こる病気にはさまざまな原因があり、治療にあたってはその見極めが肝心だ。慢性疾患では完治が難しく長い付き合いになる場合も多いが、原因を特定した上で適切な治療法を選択できれば、日常生活の負担を軽減することも望めるという。虎の門病院の呼吸器内科では、患者にかかる負担が少ない診断法で原因を探り、先進の治療を含めた豊富な選択肢からその人にあった治療法の選択に努めている。今回は、長期的なコントロールが必要になる肺疾患の中でも間質性肺炎と喘息にフォーカスして、玉岡明洋部長に話を聞いた。(取材日2022年7月27日)

進化が続く肺疾患の診断・治療。原因の見極めが状態改善を図ることへの鍵となる

Q肺疾患にはどのようなものがありますか。

A

増加傾向にある肺疾患について語る、玉岡明洋部長

気管支や肺に起こる病気はたくさんありますが、最近よく聞くのは高齢化に伴って増加しているCOPD(慢性閉塞性肺疾患)ではないでしょうか。慢性気管支炎や肺気腫などと呼ばれていた病気の総称で、タバコの煙などを長期的に吸い込み続けることで気管支は狭くなり、肺は破壊されます。このCOPDと同じく完治しにくいものとして、間質性肺炎や喘息も注意すべき疾患の一つですね。特に喘息は、アレルギーにより気道が発作的に狭くなって咳や呼吸困難が引き起こされる病気ですが、現代人の生活環境の変化などによって増加傾向にあるんですよ。ハウスダストや花粉など、何らかのアレルゲンを吸い込むことで発症しているケースが多いですね。

Q喘息の治療はどのように行われるのですか?

A

喘息は、気管支が主にアレルギーによって炎症を起こし、気道が狭くなって「ゼーゼー」という喘鳴や咳などがでる病気。治療法は、近年になって登場した吸入ステロイド薬と持続性の吸入気管支拡張薬が中心です。一方で、充分にこれらの吸入薬を使っても症状を抑えられない「重症喘息」に分類される患者さんも存在します。重症喘息に対しては、これも近年使えるようになった生物学的製剤を使用する方法があります。喘息の治療はめざましい進歩を遂げていますから、諦めずに相談していただきたいです。

Q間質性肺炎についても教えてください。

A

患者ごとに診療プランを提案するという

間質性肺炎は、肺の間質と呼ばれる部分に炎症が起こり、肺胞の壁が厚く硬くなることによって線維化が進む病気の総称です。線維化が進行すると、息切れや、咳などの症状が現れ、やがて呼吸が困難に。原因は膠原病のほか、鳥やカビなどのアレルギーによるものなどさまざまで、特定できないものも少なくありません。原因に沿った治療ができれば改善も見込めるので、他院で原因不明とされたケースに対してもしっかりと原因を追究し、可能な限り最善の治療につなげるようにしています。なお、間質性肺炎のうち、難治性で進行性のIPF(特発性肺線維症)は難病に指定されており、急性増悪を抑えつつ線維化を食い止めるための治療を行います。

Q診断のための検査について教えてください。

A

カンファレンスの様子

検査も日進月歩で進化しています。呼吸器の疾患の診断においては、まず胸部エックス線、CTによる画像診断や血液検査を行い、肺がんや間質性肺炎に対しては、病理診断を得るために気管支鏡下での肺組織からの生検を行います。間質性肺炎の場合は大きな組織を採取する必要があり、全身麻酔下での胸腔鏡による生検も行っていました。しかし患者さんの負担も大きいため、当院では新たに「クライオバイオプシー」という手技を導入しました。冷却したプローブを気管支鏡に通して対象に接触させて数秒で凍らせ、組織採取を行います。従来の気管支鏡下生検より大きな組織を採取することができ、より低リスクで詳細な病理診断を行えるようになりました。

Q肺疾患の治療におけるこちらならではの強みはありますか。

A

内科、外科両方からのアプローチで、総合的な治療をめざすという

間質性肺炎の原因を見極めるための診断、IPFの線維化を食い止めるための治療など、「手の打ちようがない」といわれているようなケースに新たな選択肢を提示できることです。間質性肺炎の原因が膠原病であれば腎臓内科・リウマチ科と即座に連携できるなど、総合病院ならではのチーム力も大きな強みですね。肺がんについても、呼吸器外科と緊密に連携し、速やかに手術につなげています。

患者さんへのメッセージ

玉岡 明洋 呼吸器センター内科部長

1995年東京医科歯科大学卒業。同大学医学部附属病院第2内科、取手協同病院(現・JAとりで総合医療センター)、北信総合病院などを経て、2003年からマギル大学ミーキンスクリスティー研究所で気管支喘息の研究に従事。2006年より東京医科歯科大学呼吸・睡眠制御学講座准教授。2022年4月より現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医。

間質性肺炎や喘息は慢性疾患であり、完治が難しいことが多いです。大切なのは、定期的に診察をして状態を確認し、原因に沿った治療でより良い日常生活が送れるよう症状をコントロールしていくことです。「どうしようもない」「この方法しかない」と言われた方も、例えば重症喘息に対する生物学的製剤による治療のように、状態の改善が期待できそうな治療に出会えていないだけかもしれません。肺疾患の分野は、めざましい進化を続けています。慢性疾患ならではのつらさに寄り添って最善の治療を検討してまいりますので、諦めずにぜひご相談ください。

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