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急性期の脳卒中における
カテーテルを用いた脳血管内治療

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院

(東京都 港区)

最終更新日:2022/08/19

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  • 保険診療
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脳卒中には、脳の血管が詰まる脳梗塞と、脳内で出血する脳内出血や脳の表面で出血するくも膜下出血がある。これまで脳血管の詰まりは点滴によるt-PA静脈療法が、出血の原因である脳動脈瘤、脳動静脈奇形や硬膜動静脈瘻には開頭手術が行われていたが、医療技術の発展により、新しい治療法である脳血管内治療が普及。安全性重視の患者への負担が少ない治療として注目されている。一刻を争う急性期の脳卒中患者を24時間体制で受け入れている「虎の門病院」では、常にt-PA静脈療法に加え、脳血管内治療による血栓回収療法が行える体制を整えている。そこで、脳神経血管内治療科部長の鶴田和太郎先生に、脳血管内治療についての詳細を聞いた。(取材日2021年10月1日)

患者の負担が少ない先進の治療法。外科と連携して行うハイブリッド手術も取り入れ、合併症の抑制をめざす

Q急性期の脳梗塞の治療にはどのような方法がありますか?

A

治療法について語る鶴田和太郎部長

動脈硬化や心臓でできた血栓などが原因で動脈が詰まってしまう脳梗塞は、命の危険性や寝たきりになってしまう可能性があるため、発症してから1分1秒でも早い段階で適切な治療を行うことが何よりも重要になります。細い血管であれば、神経内科の領域である点滴で詰まった血栓を溶かす目的のt-PA静脈療法で再開通を図れますが、太い血管の場合は症状も重く、t-PA静脈療法だけでは再開通が難しいため、われわれのような脳神経の血管内治療の専門家による血栓回収療法が必要になります。血栓回収療法では足の付け根から150cmほどのカテーテルを挿入し閉塞部分にアプローチし詰まった血栓を取り除いていきます。

Q脳卒中には脳血管内治療と開頭手術のどちらが良いのでしょう?

A

患者さんはおそらく両方の治療が可能だとしたら、脳血管内治療を選ぶ人が多いでしょう。ただ、脳血管内治療ではかえって難しい治療になってしまう例もあるため、個々のケースにおいて、開頭手術が良いのか脳血管内治療が良いのかを見極めることが大切です。当院では、手術を行う脳神経外科と脳血管内治療を行う脳神経・血管内科が独立し、必要に応じて協力し合い治療を進めています。例えば脳動脈瘤の場合、こぶの形やできている場所によって開頭手術のほうがより適切であることもあるので、こちらで検査した患者さんを脳神経外科にお願いしたり、脳神経外科の患者さんをこちらでお引き受けしたりするなど相互に患者さんを受け入れています。

Q脳血管内治療の特徴を教えてください。

A

専門性の高いチーム医療を展開、他科の医師と手術を行うという

動脈瘤における血管内治療は、カテーテルを使ってプラチナ製のコイルという糸で血管の内部から動脈瘤を固めてしまうのがオーソドックスなやり方で、入り口が狭くて奥が広い場合には有用です。しかし、入り口が広いと中のコイルが出てきてしまうためクリッピング術という手術をするしか方法はありませんでした。それが、ステントを入れてコイルが出てこないようにする技術が確立されたことで、脳血管内治療で完結することができるようになりました。また、根治が難しかった大きい動脈瘤についても、血管に網の目の細かい特殊なステントを置いて血流の遮断を図る、血流改変ステント留置術で対応できるようになりました。

Q外科との連携による治療について詳しくお聞かせください。

A

医療の進歩により脳血管内治療で完結できる症例は増えましたが、一方で外科治療とのコラボレーションが有用な症例もあります。当院では非常に専門性が高いチーム医療を日常的に展開しており、ハイブリッド手術室では同じ手術内で開頭術と脳血管内治療の両方を行っています。前述の大きい動脈瘤においても血流改変ステント留置術ができない症例もあり、その場合は脳神経外科の医師がバイパスでつなぎ、われわれが血管の中からの治療を行うというように、外からも中からもアプローチすることができます。

Q外科とのハイブリッド手術のメリットは何ですか?

A

先進の治療法を導入し、さまざまな状況に対応していく

外科的に処置していたものの一部を脳血管内治療にすることで、侵襲度を下げ手術の時間を短くして、良い結果につなげることが期待できます。また、脳卒中以外でも、手術で腫瘍を取る場合、出血して血があふれて術野に血が広がってしまうと、どこまでが腫瘍かわかりづらく、正常な血管を傷つけて合併症を残す可能性があります。そこでわれわれが、手術を安全に行うために血流を止め、血が出ないよう前処置を行い、腫瘍だけがクリアに見えるようにすることで、合併症などの危険性を下げることを図りつつ、根治治療を行うことをめざしています。

患者さんへのメッセージ

鶴田 和太郎 脳神経血管内治療科部長

1998年筑波大学医学専門学群卒業後、同大学脳神経外科に入局。茨城県内の病院で脳神経外科一般臨床を学び、2014 年筑波大学脳神経外科脳卒中予防・治療学講座准教授に就任。2015年フランスのHopital FOCHにてシャント疾患に対する脳血管内治療を学び、2016年11月から現職。専門は、脳動脈瘤、頸動脈狭窄、急性期脳梗塞、硬膜動静脈瘻、脳動静脈奇形、脊髄血管奇形。

近年、急性期脳梗塞に対しカテーテルを用いた脳血管内治療を行う医療機関は増えてきましたが、この治療を行うには日本脳神経血管内治療学会の脳血管内治療専門医資格のほか、さまざまな条件を要するため、対応できる医師が少ないのが現状です。どの患者さんも等しく適切な治療を受けていただけるように、現在、国や行政を中心にt-PA静脈法を行う施設から血管内治療ができる施設への連携体制が整えられつつあります。当院では、脳神経・血管内科、脳神経内科、脳神経外科による脳卒中部門が24時間体制で、急性期の脳梗塞の患者さんに対するt-PAおよびカテーテルを用いた脳血管内治療が行えるようにしています。

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