安全性と確実性を追求
脳腫瘍や脳動脈瘤などの脳神経外科手術
国家公務員共済組合連合会 虎の門病院
(東京都 港区)
最終更新日:2022/08/19
- 保険診療
- 脳腫瘍
- 脳動静脈奇形
- 脳動脈瘤
脳血管障害や脳腫瘍などの開頭手術を行う脳神経外科。重要な血管や神経が集まる脳の手術においては繊細で緻密な医師の手技が不可欠と考えられてきたが、それに加えてハード面の拡充も、安全性や確実性を重視した治療を行うためには重要な要素となっている。「虎の門病院」の脳神経外科では、2019年の新病院開院を機にハイブリッド手術室を設備。手術中にCTや血管内撮影をし、その画像をナビゲーションシステムに反映して顕微鏡手術を行うという手法をスタートした。常に時代の先をゆく医療の提供を追求し続ける、同院の脳神経外科部長である原貴行先生に、先進の脳神経外科の手術について聞いた。(取材日2021年9月29日)
目次
確実性・安全性を追求。術中画像撮影・ナビゲーションシステム、顕微鏡を備えたハイブリッド手術室での手術
- Q貴院での脳神経外科の治療の特徴を教えてください。
- A
当院では新病院になり、手術中にCT撮影や血管撮影ができるハイブリッド手術室を設備しました。こちらでは、リアルタイムで脳の状態の変化を捉えた画像を、ナビゲーションシステムに転送して行う顕微鏡手術を開始しています。この手法を取り入れることで、より安全性や確実性を重視した手術ができるようになったと感じています。術中画像診断を行うためのシステム、ナビゲーションシステム、手術顕微鏡の3つを備えたハイブリッド手術室は、当院のハード面の大きな強みであり、脳動脈瘤、脳動静脈奇形など脳血管障害や、脳腫瘍の中でも小脳や後頭部など仰臥位での手術が困難な例を対象に、積極的に活用しています。
- Q先進の機器を駆使した治療には医師の技術も必要なのでしょうか?
- A
この手術のメリットは、これまで医師の経験による勘への依存が大きかった部分を、実際にCTや血管撮影を通して術野に反映できるようになったこと。結果的に安全性を重視しながら施術のクオリティーの均一化が図れるようになりました。特別な技術は必要ないと考えていて、むしろ今まで一部のプロフェッショナルなドクターしかできなかった手術のハードルが下がり、より多くの人に質の高い手術を提供できるようになると捉えています。1人のドクターができる手術は限られています。ハード面を拡張し充実させることで、複数のドクターが同じクオリティーの手術を行い多くの患者さんに対応できるようになることは、とても望ましいことだと思います。
- Q患者に与えるメリットや入院期間などを教えてください。
- A
例えば手術中にCTを撮ることで腫瘍が残っているかどうかがわかれば、その場で摘出することも図れます。より完全な状態で手術を終えることが見込め、患者さんへの負担も少なくなるので、以前に増して「安心して任せてください」と自信を持ってお伝えできるようになりました。当院では疾患によって違いはありますが、緊急手術ではない定時手術は1ヵ月ほどお待ちいただくことになり、入院期間は10日から2週間程度になります。現在ハイブリッド手術室に備える3つのシステムのうち、1ヵ月の手術件数のほぼ全例で2つ以上を組み合わせて手術を行っており、3つすべてを使った手術も緊急手術を含め毎月対応しています。
- Q貴院の脳神経外科での現在の取り組みについて教えてください。
- A
当科ではキーホール手術という4cmほどの小さな傷で手術をすることに取り組んでいます。今までであれば20cmほどの大きさだった手術の傷を小さくすることは、退院が早まることが期待でき患者さんの満足度につながります。患者さんが術後半年や1年たって口にされがちなのは傷のことで、雨が降るとしくしく痛むなど傷の違和感や不快感がずっと続く人もいます。長く診療をしていると、頭の中は治っていても傷による不定愁訴で悩んでいる人も多く、長い目で見て、傷が小さいということはプラスのことが大きいと感じています。すべての症例を対象にすることは難しいですが、安全性と確実性の追求とともに傷の小さい手術をめざしています。
原 貴行 脳神経外科部長
1995年東京大学医学部卒業。専門は脳動脈瘤手術、血管バイパス術、もやもや病、頸動脈内膜剥離術といった脳血管障害、髄膜腫、聴神経腫瘍、頭蓋底腫瘍などの良性脳腫瘍。2010年より現職。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医。